2018年8月31日金曜日

誰が対応するかで記者会見の印象が変わることを明確に示した、具志堅副会長

前日(29日)の宮川選手の会見で明らかになった、塚原夫妻によるパワハラに関して、日本体操協会は会見を行い、緊急対策会議を開き第三者委員会を設置し調査すると発表しました。

この会見では、二木会長が冒頭に第三者委員会を設置する旨を報告してわずか40秒ほどで退場。以後は具志堅副会長と前日記者会見を行った山本専務理事が質疑に対応しました。
塚原千枝子強化本部長は宮川選手の主張を否定し、30日の朝には塚原副会長が(宮川選手のいっていることは)「全部うそ」と発言したりした後の会見です。当然記者の質問は塚原夫妻の発言やそれに対する協会の考え方などに集中します。前日の緊急会見で、山本専務理事は弁護士を同席させてしどろもどろな対応でしたが、今回は具志堅副会長が自分の言葉で、しかし協会の方針から逸脱することなく明快に答えていました。

塚原副会長が「全てうそだ」と発言したことについても、「第三者委員会の結論も出ていないにもかかわらず、残念な言葉です」「言うべきじゃない言葉だったんじゃないかと思います」とし、不適切な発言だったとしました。また、宮川選手の発言に対しては「18歳の少女が嘘をつくとは思わない」としながら、「これが本当でしょう、これが嘘でしょうとは私の中では言えないんですよ」と続けています。新聞やテレビのニュースでは前段のみが切り取られ強調されていましたが、具志堅副会長は一方に偏ることなく、「だから第三者委員会に委ねるしかない」と言葉を繋いでいました。宮川選手が正しいと思っているとも言っていません。
最初から最後まで、協会の当事者として他の選手やコーチ陣のことまで思いを巡らせながら、非常に誠実に自分の言葉で質問に答えていました。

速見氏も仮処分を取り下げ


この会見を受けてか、速見コーチも、地位保全の仮処分申し立てを取り下げました。速見氏のコメントには、29日の協会の記者会見で「処分はされても指導はできる」「無期限は永久ではない」ことが示されたことも理由にあげてありますが、実際には具志堅副会長の会見が大きく影響したのではないかと考えます。

今回は謝罪会見でもなく、第三者委員会を設置し調査することを伝えるための会見でしたが、30分あまりの質疑応答で協会のスタンスが一気に整理された感があります。
それだけに、前日の会見がなんとも中途半端感が際立ってしまいます。

これまでのレスリング協会・日大・ボクシング連盟の酷い会見をさんざん見たあとの今回の会見です。記者会見が事前準備だけでなく、誰が出席し誰が答えるか、スポークスパーソンがいかに重要であるかを改めて示してくれた会見でした。

それにしても、塚原夫妻は真っ向否定・反論する声明分を発表する一方、ボクシングの「奈良裁定」ならぬ「朝日生命裁定」みたいな話も出てきたりと、これまで同様にまだまだスッキリとはいきそうにありません。どんな結末になるのでしょうか。




2018年8月30日木曜日

準備不足で中途半端な日本体操協会記者会見の矛盾。


昨日29日、体操の宮川紗江選手(18)が、専属コーチである速見佑斗コーチに対する日本体操協会からの無期限登録抹消などの処分について、処分の見直しを訴える記者会見を開きました。過去には暴力行為を受けたことは確かにあったが、それは危険な行為に対する厳しさと愛情によるもので、パワハラは無かったとし、逆に体操協会からのパワハラを告発しました。

この会見を受け、 同日夜に日本体操協会が緊急記者会見を開きました。残念ながら、この会見を見ることができず、動画も見つけることができませんでしたが、会見の要旨はこの記事で見ることができます(動画も)
【速報】「宮川選手の聞き取り必要ない」 日本体操協会が反論

この会見で記者からの質問に次のように答えています。
「暴力に関して処分までの間に宮川選手には聞き取りをしていないということか?」
「聞き取り調査は、必要限度で実施しているということで、暴力認定については、宮川選手から聞き取りをする必要はないと思っています」。

2013年にもあった 暴力指導問題


昨日の会見を伝えるデイリースポーツの記事
体操協会が主張 速見コーチの暴力内容を公表 直近は今年5月、宮川は異なる説明
では、
関係者への聞き取り調査で判明したとされる暴力行為は以下の通り。
 【2013年9月】NTC(ナショナルトレーニングセンター)で国際ジュニア合宿の時、顔をたたく行為
 【2015年2月】海外合宿での大声で怒鳴りつける行為
 【2016年1月】海外試合で顔をたたき、顔がはれた。練習中に怒鳴る行為。他コーチからの引き留め。
 【2016年3月】国際大会中、Tシャツをつかみ、引きずり降ろす行為。
 【2016年5月】前所属先で頭をたたく、怒鳴る行為。日常的に実施。
 【2016年1月】海外合宿中、1時間以上立たせる行為。
 【2017年1月】前所属先で再び暴力があり、無期限の出入り禁止処分。
 【2017年8月】NTCで髪の毛を引っ張り、出口まで引っ張り出した行為。
 【2017年9月】NTCで髪の毛を引っ張り倒す、押し倒すほどの行為。
 【2018年4月】NTCで指導中、大声で怒鳴る行為。
 【2018年5月】東京体育館のサブ会場で、怒鳴る行為。
とあります。
日本体操協会の暴力・パワハラは、2013年にも問題となり、JOCと協会が8月22日に会見を行っています(冒頭の動画-KyodoNews )。この時は選手がJOCに暴力的指導を受けたと告発、大阪府警が捜査に乗り出し、12月にコーチが書類送検されています。
今回の聞き取り調査で示された暴力行為で、最初に出てきた2013年9月は、この会見を開いた直後です。体操協会としてもナーバスになっていた時期でしょうし、速見コーチもそんな状況はよく分かっているはずです。叩いたとしても軽いビンタ程度だったのではないでしょうか。どの程度から暴力行為と見なすかは難しい(合意の上での猪木議員のビンタは他者から見れば暴力か?)ですが、一番の問題は宮川選手への聞き取りをしていない事です。当初のリリースではパワハラとしていたのを暴力行為と訂正したのも、宮川選手の介入を避けるためだったのでしょう。
2013年の会見では、双方の聞き取り調査をしていますが、今回は一方のみです。

なぜ準備不足のまま会見を開いたか?


もう一つの疑問は、明らかに準備不足のまま会見を開いたことです。通常なら、宮川選手の会見を受けて、「○日◎時に、□□で会見をひらきます」とマスコミに連絡して準備をすればよかったものを、拙速すぎます。協会内の「ドン」の怒りを買い、「すぐに会見して否定しなさい」と指示されたような会見です。

力を持つ側の一方的な主張に対して、もう一方の当事者が事実を暴露するという形では、宮川選手の会見は、日大アメフト部の時と重なります。また、密室で丸め込もうとする行為は日本ボクシング連盟(日大も)と同じです。
今年に入って立て続けに明るみに出るスポーツ界での問題。いずれも誰かが嘘をつき、事実を隠そうとしていたことが最後には明るみに出ています。このように拙速な会見を開く時に共通するのは、自分に非があると現場は認識している場合が多く、それを認めさせない「ドン」が悪あがきをし、最後には「ドン」がその地位を失って幕を下ろします。

今回の日本体操協会でも同じ事が起こりそうな予感がします。




2018年8月29日水曜日

自動運転と併行して、信号機のAI制御の導入を


自動車メーカーやIT企業による自動運転車の開発競争が佳境に入ってきました。evシフトも加速し、環境に優しい車、安全な車の普及も進むのでしょう。
とはいえ、evが普及するには充電設備の設置が同時に進まないとならないのですが、こちらはそう簡単ではありません。内燃機関の自動車は、燃料を補給するのにさほど時間はかかりませんが、evの場合は充電に短くても数十分の時間がかかります。1台の給電器で単位時間に給電できる車の数は、内燃機関の自動車の数分の1~十数分の1になってしまいます。それだけ多くの給電設備を備える必要がありますが、これがそう簡単ではありません。 日本では燃料でも走るPHEVが暫くは主流になるのではないでしょうか。

自動運転の実用化目標を2020年に置いた各企業の取り組みは報道でも伝わってきます。しかし、個人的には渋滞の解消やスムーズなトラフィック環境のために、信号機のAI化を進めて欲しいものです。今の信号システムは、基本は決められた間隔でその交差点の信号が同期して変わる仕組みです。
この単純な仕組みにセンサーとAIを導入して交差点の信号の間隔を最適化することで,都心の渋滞の解消は進むはずです。交通量の少ない郊外だと、センサーが車を関知しAIが判断して信号を変える様にすれば、交差する道路に車がいないのにじっと信号が変わるのを待つような無駄な停車もしなくてよくなります。
最も単純で効果的な例は、工事のために信号を設置して片側交互通行にしているところなどです。田舎道での工事現場だと、全く対向車がこないのに2分くらい信号が変わるのをただ待つだけということがよくあります。基本は両側赤信号にしておいて、車が停まったらそちらを青にして通すくらいのことは簡単です。それなりの交通量でも、どちらかの車の量が多いのが普通ですので、上下の通行時間を非対称にすることでよりスムーズになります。

信号のIT化により物流の効率化と燃費の向上、排気ガスの減少などによる経済効果、温室ガス削減効果など誰か計算できないでしょうか?自動運転車の普及が進めば、信号機は自動車とも通信をするターミナル的存在になるのかもしれません。信号機のハイテク化は歩行者の安全にも繋がるのではないでしょうか。
国土交通省や警察庁主導で、信号機のIT化を是非とも進めて欲しいものです。それとも、既に検討されているのでしょうか?


2018年8月16日木曜日

小さな子どもとその家族の事を考えれば、サマータイムの導入は絶対にありえない


サーカスのMr.サマータイム、40年前ほど前大ヒットしました。この曲を聴くと、何だか気持ちがウキウキしたものです。そのMr.サマータイムが再び2018年版として公開されました。やっぱり良いですねえ。

ところがここにきて暗い気持ちになるサマータイムの話題が持ち上がっています。2020年の東京オリンピックに向けて導入が検討されているサマータイムの事です。
サマータイム導入の目的は、暑い時間帯の競技を避けることだといいます。暑い時間帯の競技を避けるのであれば、競技時間を変えれば良いだけの話です。オリンピック期間中は公共交通機関に特別ダイヤを組むよう要請することで対応可能でしょう。西鉄だって、大晦日には太宰府天満宮への初詣に対応して、夜通し電車を運行しているのですから。
また、通勤時間のピークと選手・観客の移動時間とが重なって混乱するからというのであれば、企業に対して業務開始時刻をずらす要請をする、あるいは夏休みをオリンピック期間中にするなどの方法も考えられます。少なくとも、影響は首都圏・東京圏に限定されます。

戦後復興期の前回であれば、明るい未来のために日本国民が一丸となってオリンピック成功に協力するという気運はあったでしょう。しかし多様な価値観と生活スタイルに細分化された2020年の日本において、オリンピックのために全国民の生活時間をずらすということはとうてい容認できない人たちも出てくるでしょう。

 乳幼児の体内時間は簡単には対応できない


今、働き方改革や子育て支援を盛んに口にする政府与党ですが、サマータイムの導入によって最も影響を受けるのは、小さな子どもと子育てをしながら働いている家庭だということに思いが至っていません。

乳幼児の生活リズムは、サマータイムになったからといって変わる訳ではありません。寝る時間や起きる時間、食事の時間など急に変えられるはずがありません。朝いきなり起こされても暫くは寝ぼけたままで着替えも支度もできず、ぐずる姿が容易に想像できます。生活リズムの変化に対応できず、ストレスや体調を崩す子もたくさん出そうです(私は医者ではないので断定はできませんが)。
子どもの生活リズムを作るのは、親にとっては大変な苦労を共にします。折角作った生活リズムを崩されるのですから、子育て中の家族にとっては大変な迷惑です。当然、保育の現場も大混乱することでしょう。

親子で作る生活リズム(miku41号)

こんな事を続けていて、子どもを安心して産み、育てられる日本が実現するとは思えません。 社会全体で子育てをする国とはほど遠い、目先の事しか考えない現政府の姿勢がここでも見えてしまいます。

保育園問題と同様に、子育て家族はサマータイムに無関心であってはなりません。サーカスのMr.サマータイム、今改めてその歌詞を見直すと随分意味深ですね。
(Mr.)サマータイム、気まぐれから何もかも無くした私……
誰が何もかも無くすのでしょうか?

日本全体でウキウキする2020年の夏が迎えられますように。