2018年6月6日水曜日

TOKIO山口達也と日大アメフト部員の記者会見、明暗を分けたのは

問題となった日大と関学のアメリカンフットボールの試合から1か月。悪質タックルの問題は日本大学の経営のあり方を問う問題にまで発展して、終わりが見えなくなってきました。
一方で、試合中にタックルをした日大DFと被害者の関学QBの学生との間には和解も成立し、被害者の父親からは加害学生へのエールも送られて、当時者間ではひとまずの区切りが着いた感じでしょうか。

日大の悪質タックル事件は、加害学生が記者会見を開いた事で大きく動きました。誠実に理路整然、具体的に語った会見は、加害学生への印象を大きく変えて、非難の矛先はその指示をしたとされる監督・コーチへと向います。それに対して、日大アメフト部、学長、理事の会見・対応はお粗末なもので、大学関係者への追求は全く収束する気配がありません。今更日大サイドの記者会見を語っても何も参考にならない(悪い例としては参考になりますが)ので、その会見のわずか1か月ほど前に開いた山口達也さんの会見と較べながら、失敗しない謝罪会見のポイントを振り返ってみたいと思います。

会見を開くまでの条件は良く似ていたのに


山口達也さんのケース(以下A)と日大アメフト部員のケース(以下B)は、実は事件発生(本人認知)から記者会見を開くまでの時間経緯は良く似ています。

1,準備期間はどちらも十分にあった 

Aでは、本人に加害者の自覚がなく、(被害届けを出されて)事件を知ったのは3月末頃、事務所へ報告したのが4月16日、NHKが報道して世間が知るところになったのが4月25日でした。そして翌日の26日に急遽記者会見を開いています。
事務所が事件を知り、記者会見を開くまで準備期間は実質10日間あったことになります。
一方Bのケースは、5月10日に関学から日大アメフト部へ申し入れ書が届いたことで、翌11日両親と共に謝罪に出向こうとしたところから動きが始まります。 記者会見は22日なので、こちらの準備期間は11日ということになります。
通常、企業不祥事などで記者会見を開く場合は、即日あるいは翌日ですから、準備期間は数時間~1日程度です。それと比較すればAもBも準備期間は10日前後と十分にありました。

2,身内がサポートし、弁護士も

事件に対応するに当たり、両者同じような体制を組んでいます。
Aはジャニーズ事務所が全てを仕切り、事務所が元検事の敏腕顧問弁護士を付けました。
Bは父親(と家族)が学生をサポートし、父親が自ら弁護士事務所に相談に行き、2人の弁護士と共に謝罪会見に臨んでいます。
どちらのケースも、本人だけでは対応せず、身内のサポートと第三者となる弁護士を付けて会見に向けた準備をしています。

明暗を分けたのは危機感と想像力の差


確かに、AとBでは伝えるべき内容・主旨に違いはありましたが、記者会見という一つのイベントとして見ると時間も十分に有り、身内のサポートも敏腕弁護士も付けて条件は同じようなものです。しかしAはダメダメな会見になり、Bは加害者でありながら被害者でもあるという同情までも誘うような結果になりました。この差はどこから来たのでしょうか。

謝罪会見に臨む際には最低でも
1,事実・経緯・原因などの確認→ポジションペーパーの作成
2,Q&Aの作成
3,ネガティブリストの作成・確認
4,会見場の選定と事前確認(会場セッティング、進行、会見者)
など詳細に詰めて準備しておかなければなりません。

しかし、Aでは上記についてほとんど準備されている様子はありませんでした。ジャニーズ事務所が会見を仕切る、敏腕弁護士が付いているという奢りがあったのでしょうか。

一方、Bの会見は驚くことに日本記者クラブで行っています。ここで会見するということは、日本記者クラブが主催ということです。進行に関する主導権は会見者にはありません。それだけに事前に十分な確認と打ち合わせが行われたはずですし、会見側の準備はあらゆる事を想定しなければなりません。

Bでは「記者会見の主旨と開くに至った経緯」を整理し、ペーパーが会見場で配られています。聞き取りから作成したポジションペーパーをベースにしたのでしょう。このペーパーに沿った形で代理人弁護士から経緯の説明があり、本人はより具体的に、自分の言葉で詳細説明を行っています。代理人弁護士と本人との役割分担もはっきりしていました。質疑応答に際しても、答えて良いことと悪いこと、口にしてはいけないことがはっきりと認識されているようでした。事前に十分確認されていた様子が分かります。

Aのチームは、事務所スタッフは芸能記者との普段のやりとりの延長で考え、弁護士は法廷での攻防に気持ちが行っていたのでしょうか。自分の得意な土俵の事だけを考えたような、あまりにも安易な記者会見でした。
Bのチームはごく普通の一般人(しかもまだ学生)がマスメディアの前に顔と名前を晒して、日本中の人に見られるその先のことまで十分過ぎるほど想像し、必死で守ろうとしていました。その必死さは感情に流されることではなく、理性的に必要な協力者を探し、やるべき事を整理し、十分な準備をすることであり、ギリギリまでその精度を高めることだということを理解していました。

奇しくも、記者会見の終盤では双方の弁護士がAではもらい泣き、Bでは声を詰まらせるという形で感情が表に出る場面がありました。見る者が受けた印象は全く違ったでしょう。会見を終えた瞬間、それぞれの弁護士は何を思っていたのでしょうか。

ところで、前回の鉄腕DASH! グリルやっかいで1時間はきつかったですね。DASHファンとしては物足りなさで胸が苦しくなりました。早く復活して欲しいものです。

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