2018年5月31日木曜日

今アメリカで起こっている変化に、日本の企業は気づいているのか?

今日の日経新聞電子版で、ネットフリックスは「三日天下」かという記事が配信されました。動画配信大手「ネットフリックス」の時価総額は約1536億ドル(約16.7兆円)となり、メディア大手ウォルト・ディズニー(約1490億ドル)を2日連続で上回り、「企業価値が最大の米メディア」となったというものです。
この「三日天下」という表現の背景にあるのは、ディズニーのオウンゴールによる株価下落による恩恵だというのです。ディズニー傘下の米テレビ局ABCが、人気ドラマ「ロザンヌ」の打ち切りを決めたことなどによる影響とあります。主演女優のロザンヌ・バー氏がTwitterに人種差別的な投稿をし、それを問題視したABC、ディズニーが業績好調の柱であった番組打ちきりを決めたというのです。 

この日経の記事だけでは詳細が分からなかったのですが、昨日のYahoo!ニュースで、LA在住の映画ジャーナリスト猿渡由紀氏による1本のツイートでキャリアを失ったスターの愚行と、トップ番組を容赦なく切ったテレビ局の英断」という記事が掲載されていて理解できました。この記事によると、
「Roseanne」は、今年、最も話題を呼んだ人気番組である。録画で見た人も入れると、視聴率はアメフトの中継をも抜き、全米で堂々のトップだ。ABCが久々にメジャーネットワークで首位を得られたのには、この番組のおかげが非常に大きい。そんなお宝番組を、ABCは、半日も経たないうちに、あっさりと切り捨てたのだ。 

番組打ち切りに対する評価が日経の記事と違うのは、従来のアメリカ的に直近四半期毎の売上・利益を追い求める株主やマーケットの視点ではなく、LGBTや#MeTooの広がりに見る世相・社会の空気の変化を捉えた、数字に表れる業績だけでない視聴者からの信頼やブランドなどの無形資産(Intangible)を守ろうとするreputation(評判)を軸にした視点によるものです。 短期的な業績への影響で株価が下落したことを「非」とするのか、それとも視聴者の信頼を裏切らなかったことを「是」とするのか。

今月世間を騒がせた日大アメフト部と重ねて見ると、日本一の栄冠を掴んだフェニックスの立役者である内田前監督やコーチを、問題が発覚した時点で解任していたら、ということになります。

これまでも、過去に起こった企業不祥事では、消費者や被害者を守るよりも先に自己や会社を守ろうとした構図は多くの場合同じです。あるいは義理・人情に厚いと思い違いした会社が、不祥事を起こしていながらその当事者を守ろうとするケースもありました(今回の日大も)。多くの日本企業(特に歴史があるオールドエコノミーに属する)で同様の事が起きた時には、今の日本大学の振る舞いに似たようなことになってしまうのは容易に想像できます。
内向きな視点でしか対応しなかったばかりに、世間の批判を浴びながらマーケットから退場せざるをえなくなった企業が、過去にはたくさんあります。

日本の企業・組織では、まだまだダイバーシティや平等についての理解が浸透していません。保守的で良くも悪くも人を大切にする日本の企業が、身近なしがらみや義理・人情を捨て社会的な視点を持つことができなければ、従来型の不祥事だけでなく、パワハラやセクハラ、人権に関わるような問題が起こった時に適切な対応はできないでしょう。