2017年8月24日木曜日

牛乳石鹸のネットCMへの反応から学ぶことは

最近、企業や自治体が制作しネットに上げるPR動画が物議を醸しています。
紙おむつムーニーのPR動画は、ワンオペ育児を賛美しているようだと働く女性から非難を浴びました。壇密さんを起用した宮城県のPR動画は、下ネタだと批判され近く配信を終了します。

そんな折、今週話題になったのは、牛乳石鹸のPR動画です。
子どもの誕生日にケーキやプレゼントを買って帰るように妻から託された、新井浩文さんが演じる夫は、仕事でミスをして上司に叱られた後輩を誘って飲んで帰ります。帰宅すると当然のごとく「飲んで帰った」ことを妻から責められ、言葉を遮るようにお風呂に入ります。
1日のことを振り返ったお風呂から上がり小さな声で一言謝ると、驚いたことにパパの帰りを待っていた子どもを呼んでテーブルに付きます。私はてっきり飲んで遅く帰り、子どもは寝ていたのかと思っていました。

牛乳石鹸としては、テーブルに付く前のお風呂のシーン(夫が過去や1日を振り返りながら思いを巡らす)が一番のポイントだったはずです。お風呂から上がってさっぱりしたら、嫌な気分も洗い流して明るい家族の時間を取り戻せる、というストーリーだったのでしょうか。
しかし、残念ながらそのようには伝わらなかったようです。

子どもの誕生日に飲んで帰る。その時点で女性の怒りを買ってしまい、その後のストーリーはどうでも良くなってしまっているようなコメントが多くあります。新井 浩文さんという俳優の起用も、彼が持つ個性(無表情で、冷たい目という役柄が多い)を演出に活用しようとしたのでしょうか。本来ならお風呂を境に見せる明るい表情が際立つはずだったのではと。しかし、残念ながら笑顔のアップは無いまま翌朝のゴミ捨てのシーンへと移ってしまいます。

ネットではブログやTwitterなど、いろいろなコメントや指摘があります。ムーニーや宮城県と違うのは、受けとめ方が様々だと言うことです。「何が言いたいのかわからない」や「怖い」というものまであります。フジテレビ「バイキング」のMC坂上忍さんは、「どこが悪いのかさっぱりわからない」とも言っています。YouTubeの公式チャンネルではコメントができませんが、こちらのチャンネル↓はコメントが付けられるようになっていて、「こんな風に見る人もいる」というのが見えてきます。 
新井浩文出演・「与えるもの」編/牛乳石鹸PR映像

想像力が重要


CMや動画が炎上するのは、それを見る人、受けとめる人になりきってチェックできなかった事が原因です。生活者側に立った想像力が足りないのです。
私が大学で教えている「マーケティング・デザイン」でも、学生に「想像力」を働かせなさいとしつこく言います。「創造力」を生かすも殺すも「想像力」次第だと。ペルソナを設定し、そのペルソナのターゲットになりきって受けとめ、想像力を働かせることで、商品やサービスの隠れた穴や欠点が明らかになります。想像力が働かなければ、ターゲットになるモニターに意見を求めれば良いのです。
牛乳石鹸の動画は2分半以上の長編。それだけに突っ込み処はたくさんあります。もっとストーリーをシンプルにしてメッセージが伝わりやすく制作していれば……
炎上する動画は、公開前に関係者以外の目でチェックしていなかったのでしょう。どうしても身内の目は甘くなります。制作者側ではない、受け手側の目線での想像力とチェックが重要なのです。


ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。