2016年12月5日月曜日

ニュージーランドのキー首相 「家族との時間大切にしたい」と辞意

今日のニュースにちょっと驚きました。

NZのキー首相が辞意 「家族との時間大切にしたい」



ニュージーランドに子育て事情を取材に出かけたのは2012年。クライストチャーチの大地震から1年ちょっと過ぎた頃でした。その時の印象は、誰もが家族や子どもを大切にしている国だということ。

13歳未満の子は、必ず大人が一緒でなければならない(留守番もダメ)。小学校の登下校も必ず大人が一緒。放課後の遊びやスポーツも必ず大人が付き添います。子どもがいると、そのスケジュールに合わせざるを得ません。
下校時刻になると、親たちが子どものお迎えに
そのため、午後4時頃になると仕事場から帰る車で、幹線道路は渋滞です。家族との時間を優先させることは特別なことではなく、国全体がそういう価値観で動いているのがよく分かりました。
家族との時間を大切にする,優先するという空気は、その後に取材に行ったバンクーバー(カナダ)でもオスロ(ノルウェー)でも共通していました。

そんなお国柄ですから、「家族との時間を大切にしたい」という理由で辞意を表明することには違和感を覚えることはありません。驚くのは、国・国民がそれを受け入れられるということです。
かつて、安倍首相は健康上の理由で首相の座を降りました。それは、健康に不安を抱えたままでは国政に影響を及ぼすという判断からですし、国民も「それなら仕方ない」という形で容認した感じでした。しかし今、安倍首相が「家族との時間を大切にしたい」という理由で首相の座を降りるとは口が裂けても言わないでしょうし、仮に口にした途端に与野党から一斉に批判されるでしょう。そもそも、安倍首相始め政治家のみなさんが家族について言及することは(特別な例を除いて)現在でもほとんどありません。

一億総活躍社会とは?


安倍首相が掲げる「一億総活躍社会」は、第二次世界大戦中の国家総動員法を思い出すような名前でそもそも好きになれません。少子高齢化に立ち向かうためといいながら、このままではジリ貧となるGDPを、女性も老人も働きに出てなんとか押し上げよう(税収確保)とハッパをかける政策のように思えます。

北欧の子育て先進国に共通するのは、国民一人あたりの生産性が高いことです。日本はOECD加盟34カ国中、だいたい21位~22位を行ったり来たりです(日本生産性本部発表「日本の生産性の動向」)。しかも、主要先進7カ国の中では最下位。ニュージーランドは日本よりも一つ低くなりますが、産業構造的に生産性が低い第一次産業中心の国でありながらほとんど日本と変わりません。現在人手不足が顕著なのは飲食業を始めとするサービス業や、農林水産業など労働生産性が低い業種です。そういう業種で働き手が増えても、労働生産性のアップにはなかなか繋がりません。

日本では本来生産性の高い業種においても、「和」や「同調」「空気」を重んじるがために、「顔を揃えるのが目的」のような会議に多くの時間を割いていますし、変化やチャレンジを好まず先送りを繰り返すばかりです。何も決まらず、何も変わらず会議に時間ばかりを費やす組織はそこらじゅうにあります。
現代のIT社会では、顔を会わさずともコミュニケーションも決済も可能なのにです。

また、「お客さまは神様」、あるいは「上司は絶対」意識が強すぎて、無理難題を突きつけ、それに応えるのが良い付き合い方だという主従関係からも抜け出せません。これではとても「家族が大事」とか「家族を第一に」などと言えるはずもなく、家族との時間を取るために早く帰るなどということは言い出せません。

都民・アスリートに続いて「家族ファースト」を


今、イクボス宣言をする企業や自治体が増えていますが、安倍首相・閣僚始め政治家の皆さんは「家族ファースト宣言」をして欲しいものです。「家族が大事」だから、「子や孫のためにも日本をよくしなければ」と具体的に政策も考えられるし想像できます。その延長が組織の働き方・意識を変えていくのではないでしょうか。宮崎議員(当時)が育休宣言をした際には賛否さまざまな意見が噴出しましたが、それは全体が変わらないままに一人スタンドプレーをしたからです。

今回、ニュージーランド首相の辞意報道で、育児にだけ理解を示すのではなく、家族を大事にする国になればという願いがこみ上げてきました。日本にも「こども家族省」のような独立した省庁の設立が必要な時期です。



  



2016年12月2日金曜日

「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」のシンポジウム

興味深いデータや海外の事例など、ぎゅっと凝縮した(しすぎた)中身の濃い2時間でした。
例によって、最後の質疑の時間。
最初に手を上げたのは電通の方。子ども向けの広告とそうでない広告の線引きについてはどのように規定し、線引きをするのかについての質問。
そして次に私が手を上げます。
mikuで取材をした子育て先進国の北欧やカナダの幼児教育では、「平等」についての教育が徹底していて、人種や肌の色などが違っていても同じ人間として平等であるということを教え込みます。(かつてANAのキャンペーンで国際的なイメージ=白人として批判を浴びた例を挙げながら)おもちゃを始め子ども向けの広告には赤ちゃんや子どものモデルに外国人を起用する例が多いが、今回のガイドラインではその辺りはどのように規定しているのでしょうか?と質問しました。
3人目は児童労働の撤廃と予防に取り組む国際協力NGOのACE(エース)の方が、ステークホルダーの当事者としての子どもをどのように捉え、位置づけるのかという根本的な問いかけをして時間が満了となりました。
今日、質問できたのは私を含めて僅か3人。

プレスセミナーや新商品発表では、質疑の時間には手を上げるということを自分に課しているので、参加した場合にはほぼ挙手をし、ほとんど指名されます(特に雑誌が多い発表会では手を上げる人が少ないので)。質問をする際には媒体名を名乗りますから私が何者かはすぐにわかります。
毎回終了後にはセミナー参加者からも名刺交換を求められます。今回もセーブザチルドレンの方だけでなく、他社の方も先方から私の元へやって来て名刺交換を求められました。

いつもmikuさんにはお世話になっています
というのは、取材やあるいは編集長の常子が講演やアドバイス・原稿提供などで過去に関わりがある人達。
そして「私、mikuのファンなんです」という人が名刺交換を求めてきます。みなさん、本当にmikuが好き、憧れてますオーラを漂わせて。それが、だいたい大手出版社の育児関連メディアの人だったりするのです。今、出版業界は厳しい時代です。市販雑誌はどんどん部数を落とし、同時に広告収入も右肩下がりです。編集部の想いと営業(広告・書店)の思いはだんだんと乖離していくのでしょう。そして、営業からの要求に屈して、作りたい本からだんだんと離れていっていしまうというのが、今の大手出版社の実態なのかもしれません。そういう中で、mikuはほぼ12年スタンスを変えず、より理想とする育児情報誌を目指して整理しながら生き続けている(しかも部数は伸び続けている)のです。同業の目から見ると、孤高のメディアに見えているのかもしれません。実態は青息吐息なのですが。
今回も、終了後には国民生活センター理事長や元消費者庁長官などと意見・情報交換もできた、実りあるシンポジウムでした。

紙媒体ですから広告収入は今後も厳しいものがありますが、mikuを支持する読者がこれからも増えるよう、 精進して参ります。

子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドラインこちらからダウンロードできます。




2016年12月1日木曜日

「新生児の理想の姿勢」に関するプレスセミナー(アップリカ様主催)に出席して

今日は、アップリカさんの「新生児の理想の姿勢」に関するプレスセミナーに出席してきました。
アップリカさんからの案内は「新商品発表」ではなく「新生児の理想の姿勢に関するプレスセミナー」でした。もちろん、アップリカさん的には新商品チャイルドシート「フラディア グロウ ISOFIX」の発表がメインではあるのでしょうが、少なくとも案内は「プレスセミナー」であり、テーマも「新生児の理想の姿勢」と明示された案内でした。



ということですので、私も事前にプレゼンを想定していくつかの質問を用意して行きました。商品の特徴や改善点ではなく、メーカーとしての思想や想いがどこにあり、どのようにそれを新商品に展開しようとしているのかを聞くために。チャイルドシートの新製品発売に際して、その商品開発の背景にある「想い」やマーケティング的な戦略を含めてのプレゼンテーションの場だった訳ですが、主催者が考えている以上にいろいろなものが見えた場でした。

一通りのプレゼンが終わって質疑の時間になり、最初に手を上げたのは私。
「新生児にとって、スリングは(新生児の姿勢としては)どういう環境なのでしょうか?」と。
それに対しては、同志社大学小西先生は「想定外の質問ですね」と開口一番。
フラットに寝せる事が赤ちゃんにとっては理想と考える先生としては、肌が接触する安心感のメリットもあり、功罪相半ばというスタンス。
続けて、今回コンピュータによるシミュレーションで共同研究に参加した産業技術総合研究所の遠藤氏に対して、赤ちゃんの体温や発汗に対する熱放出や体温・湿度の変化をシミュレーション可能かを質問。素材や材質、形態の変更による変化をシミュレーションすることはできるのか?したのか?と。
対して、今回は衝突時に赤ちゃんへかかる衝撃を、角度やスピードなど様々に変化させてシミュレーションをしたが、衝突に対するデータのみで、想定(提示された設定)以上のデータはシミュレーションできていないということでした。

私の後は、自動車関連メディアの記者が2名(いずれもマーケットデータ中心の質問)とたまごクラブの記者(新商品の形態に関して)が質問して質疑終了。出席記者の印象としては、自動車の安全装置としてのチャイルドシートの性能を確かめようとする記者の熱量が大きくて、育児関連記者の存在は、たまごクラブの記者のサイズの確認の質問だけだったのが印象的でした。

(新商品発表ではなく新生児の理想の姿勢)セミナー修了後、すぐに小西先生の所へ行き名刺を渡すと、「mikuさんの事は良く存じ上げてます」と。mikuの編集方針についてもよく理解されているようでした。 そのうえで、言葉を選びながら、先の質問の続きをさらにお答えいただきました。
その後、改めて産業技術総合研究所の遠藤氏やアップリカのマーケティングご担当などに個別に質問。
アップリカさんも、もちろんmikuのことはよくご理解いただいていますし、今回の事務局だった共同PRさんも永いお付き合い。ある意味、あうんの呼吸のようなものがあります。
全体の質疑応答の時間に手を上げて聞くこと(mikuとしてあえて問題提起や他のメディアや記者に対しても注意喚起をしたいもの)、と(他社メディアのいるなかでは答えづらいようなことは)個別に質問すべきこと。そのあたりのバランスも大事です。

前にも書きましたが、いくら取材してもmikuでは商品情報は誌面に記事として掲載ることはありません。それは編集方針であり、各メーカーさんにもだんだんと浸透してきているようです。小西先生もご理解いただいているようでした。だからといって、商品情報やトレンドに感心がないわけではなく、こうして最新情報は常に冷静に情報収集しているのです。個別商品を取り上げることはなくても,商品カテゴリーに関しては選び方や使用方法に関して記事として取り扱います。
タイアップ広告のお話しをいただいた際にもすぐに対応が可能ですし、商品カテゴリーのトレンドなども掴んでおかないと商品特徴を明確にできません。また、広告として掲載させていただく際の広告審査もスムーズに進みます。

新商品発表だけではなく、プレスセミナーに多く声をかけていただけるのは、mikuをそのように位置づけていただけているからでしょうか。

明日はセーブ・ザ・チルドレン様のプレスセミナーです。