2015年10月22日木曜日

フォルクスワーゲン ジャパンは日本マクドナルドやシンドラーエレベーターと同じ過ちを犯さなければ良いのですが…

フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社(以下VWジャパン)から封書が届きました。
封筒の還付先は東京のフォルクスワーゲンカスタマーセンターですが、ゆうメールの差出人(発送代行)は佐川急便の南福岡営業所。福岡市内のディーラーから、顧客名簿に登録されているオーナー全てに送られたのでしょう。私も古いですがGOLFオーナーです。

封筒の中には三つ折りされた1枚の手紙。「フォルクスワーゲンに関する報道について」と書かれた手紙の送り主は、先のメール(フォルクスワーゲン(VW)には「リスクの神様」は現れなかったのか-参照)と同じくフォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役 スヴェン シュタイン氏。文面もメールと同じです。

VWジャパンのホームページではこの手紙の文面は「フォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役 スヴェン シュタインより」というページに掲載され、「Volkswagenに関する報道について」というページが別にあります。
Volkswagenに関する報道について」では、9月26日時点でのディーゼルエンジン不正の概略が記されています。ここでは「当該ディーゼルエンジン搭載モデルの日本への正規輸入車両はありませんが、お客様皆様へ多大なご心配とご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ございません」と謝罪の言葉から始まっています。そして、「現在のところ、未だ問題の影響を受ける車両の車種、及び製造年を特定しお知らせすることができないことをご理解ください」とし、「皆さまが当社に寄せてくださっていた信頼を全面的に取り戻すとともに、これ以上のいかなる損害を防ぐため、フォルクスワーゲンは力の限りを尽します」と締めくくられています。

ホームページの「Volkswagenに関する報道について」は、日本の広報(あるいは総務部門)で文章を作成したように思われます。ところが、その後に掲載されたVWジャパン 代表取締役 スヴェン シュタイン氏の名前でのメッセージは突然トーンが変わります。本国からの指示なのか、スヴェンソン氏の指示なのかはわかりませんが、日本の消費者・オーナーの心情に寄り添うことなく、本国流の釈明をしています。

思い起こせばシンドラーエレベーターが事故を起こした時、そして昨年からの日本マクドナルドで問題が続いたとき、いずれも外国人社長が会見をして心象を悪くしました。 本国の感覚では「謝罪」してしまうと、後々訴訟や賠償問題になったときに「非を認めた」と不利になるから、謝罪はするなと指示されるのでしょう。

今回の手紙の「今回のディーゼルエンジンは、日本市場に正規輸入されておりません。なお、ガソリンエンジン車は対象ではありませんので、ご安心ください」のくだりに違和感を感じずにはいられません。VW車のオーナーや消費者が感じているのは「品質や企業姿勢を評価し、信頼していたのに、それは嘘だったのか!」という裏切りに対する怒りや失意の感情です。「永年政府(委員会)やVW車オーナー・ファンを騙していた」という事実に対して、他にも隠していることがあるんじゃないか?という不信感です。ディーゼルじゃないから「安心」ではなく、ガソリン車でも不正をしているのではないかという不信感であり不安なのです。

果たして、フォルクスワーゲンオーナーは、このお手紙を読んで納得しているのでしょうか?
近々、新たなコメントが発表されると伝わってきますが、さて今度はどうでしょうか。

10月23日追記

フォルクスワーゲンから皆様へ / これからもずっと安⼼してお乗りいただくために
新たなメッセージがメールと同時にホームページに掲載されました。

11月2日追記

東京モーターショーで開かれた記者会見では乗用車部門TOPのHerbert Diess氏が、逃げること無く最後まで真摯に記者の質問に答えたと、日経テクノロジーONLINEが報じています。

逃げも隠れもしないVW部門トップ

この姿勢で臨めば、信頼回復は可能かもしれません。

11月3日追記

また新たな不正疑惑がアメリカEPAによって指摘されました。

VW傘下のポルシェやアウディにも不正ソフト、米当局が指摘

これからどのような展開になっていくのか?先が読めなくなってきました。


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2015年10月17日土曜日

傾いたマンションの建て替えの同意を得るのは極めて困難-ではこんな案はどうでしょう?

同じ日に、データ改ざんで大きなニュースが2つも飛び込んできました。

1つは東洋ゴム工業の防振ゴムのデータ改ざん。東洋ゴム工業はこれまで2度のデータ改ざんが発覚し、今度で3度目。大きな問題となってニュースに流れ始めた所に、今度はデータの改ざんがもとでマンションが傾いているというニュース。
三井不動産レジデンシャルが横浜で販売したマンションの1棟が少し傾いていて、調べてみると基礎工事に不備があったことがわかりました。原因は、くい打ちを担当した旭化成建材で、「担当者がデータの測定に失敗し、手元にある別のデータを転用した可能性が高い」としています。傾いた建物の補強や改修、調査にかかる費用については旭化成建材が全額を負担する方針を示しています。17日までの報道によると、4棟のマンションの計473本の杭のうち虚偽データは70本にのぼるようです。また、施工時のセメント使用量の偽装も発覚しています。
旭化成は子会社の旭化成建材がくい打ちしたマンションについて、記録が残る過去の地盤データをすべて調査する方針を明らかにしました。対象はデータを保管している過去約10年分で、3千棟ほどになるといいます。
旭化成は鬼怒川の堤防決壊の際に、洪水の激流に耐えた「白い家」としてヘーベルハウスが話題になり株を上げたのもつかの間、今度はストップ安まで株を下げてしまいました。

三井不動産レジデンシャルは、調査と同時に住民に説明会を開き、今後の対応を提案していますが、まず簡単にはまとまらないでしょう。毎日新聞の記事では、「国土交通省によると、複数の棟がある団地型のマンションで全棟を建て替える場合は、区分所有法に基づき、『全棟の区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成』と、『各棟の区分所有者および議決権の3分の2以上の賛成』が必要とされる」とあります。一時退去をして建て替えるには、このとりまとめは困難を極めます。意見が対立して住民間でトラブルになることも少なくありません。そうなると、まとまるものもまとまらなくなります。

住民(所有者)の視点で問題点を整理すると


今回の問題は、2つの視点で切り分ける必要があります。

1,建築物の安全性と法的な問題。
 ①既に傾いてはいますが、今後どの程度傾く可能性があるのか、危険があるのか?
   大型の地震が発生したときに耐えられるのか。
 ②建築基準法やその他建築関連法規に関する違反があり、建物を取り壊す必要があるのかどうか。

2,区分所有者の資産価値と住民の住戸(環境)への愛着

まず、建物の安全性について直ちに問題があるのであれば、これは有無を言わせず行政指導により退去命令。売買契約の取り消しと諸費用の払い戻しに加えて、慰謝料の支払いでまとめざるをえないでしょう。
しかし、多少の傾きはあるものの当面の安全性に問題は無く、将来的にも住み続けられるということになれば、区分所有者の意向をとりまとめるのは困難になります。

その時の住民の気持ちは、さまざまなことで揺れ動きます。
①資産としてのマンションの価値へのこだわり
②生活環境として、マンション・環境への愛着
③子どもの学校や通園・通勤など、生活への縛り
 保育園など、転居先で希望通りに入園できるかどうかなどの問題も有ります

①に拘るだけの人には別なマンションとの等価交換か、相応の価格での買い取りで片が付くでしょう。しかし、②・③の人はそうはいきません。
さらに細かく事情を想定すると、
a,不安だから一度転居して、建て替えたら戻りたい
b,不安だけど、この場所が気に入って購入したのだから、できればこのまま住み続けたい
c,不安よりも不満。特に終の棲家と思って購入した高齢者などは、引っ越したくない。
 何もなければ平和な日々だったのに、住民を巻き込むトラブルを起こして腹が立つ!
d,職場や学校・園などが優先。これが原因で転校や転園は考えられない

他にも事情はあるでしょうが、とにかくまとまらないでしょう。

一つの案として


では、こんな案はどうでしょうか。

①全ての区分所有者に返金(手続き・引っ越し費用などの諸費用も)
②期限を切って(5年程度?次の大規模修繕前が目安)居住を認める
 住んでいる間の家賃は、初年度無料、その後毎年周辺相場の1/5,1/3、1/2、3/4、と上がり、それ以後は10割(区分所有者のみが対象)。 転居する際の費用は三井不動産レジデンシャルが負担。
③期限が来たら例外なく退去。その後建て替え、再分譲
 再分譲時の価格メリットはないけれど、優先的に購入はできる。

区分所有者全員に現金が振り込まれ、住み続けたい人にも時間的な余裕ができることで解決策を見つけられるのではないでしょうか。保育園や幼稚園児、小学生や中学生も卒園、卒業まで環境を変えずに済みます。
デベロッパーの三井不動産レジデンシャルも、解体開始日も確定できるし、現居住者の事を考えずに新しいマンションとして設計し直しができ、付加価値を付けて損失を少しでも取り戻すことができるでしょう。

建築の専門家でもないですし、住民のみなさんの思いはもっと複雑かもしれませんが、一つのアイデアとして考えてみました。

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2015年10月9日金曜日

「VWがスズキに関するネガティブステマ依頼」という記事に違和感

昨日、【衝撃】フォルクスワーゲンはスズキのネガティブな「逆ステマ」を超高額で依頼している。フリーライターが怒りの告発 という記事が netgeek に掲載されました。この記事を読んで、いささかの違和感を感じています。

まず、お断りしておかなければならないのは、記事に名前が挙がっている国沢さんを擁護するわけでも、伏木さんを批判するわけでもなく、客観的な視点でこの記事に違和感を感じると言うことです。確かに一つ前のフォルクスワーゲン(VW)には「リスクの神様」は現れなかったのかでも国沢さんの名前を挙げていますし、個人的にも親しくさせていただいています。しかし、個人的な思いはここでは一旦横に置きます。

さて、この記事の違和感ですが、「フォルクスワーゲンがスズキのネガティブリポートを高額報酬で募集していた」という部分。再三このブログでも書いているように、知られたくない話に限って広まるものです。ライターさんに事前にNDAを結んで話をする(この記事で言う募集)ようなことはなかなか考えられません(新車発表前の情報公開時などは誓約書やNDAは結びます)が、このような話は同業者や業界ではすぐに噂となって広まっても不思議ではありません(NDAを結んでいるのであれば、第三者に話しをした段階で契約違反)。
伏木氏のTwitterでは、「VWとスズキの提携解消話がこじれ訴訟になった頃、VWに縁の深い旧知からスズキに関するネガリポートを定期的に行う"仕事”のオファーを受けた」とあり、VWから直接ではないものの、間接的にVWからの依頼である様に書かれています。
訴訟になった頃というのはずいぶん前(2011年~)で、今年の8月末で一旦区切りが付いています。今後は株の買い取り価格とスズキに対する損害賠償が言い渡されるかどうかが焦点なので、むしろネガティブキャンペーンで株価が下がるとVWにとっては不都合な話です。このタイミングでこのような話(Tweet)は不自然に映ります。ディーゼルエンジン不正の件もあり、この行為自体が今のVWにとってマイナスにしかならないはずですし、スズキのネガティブな記事がなにかのメリットになるとは考えられません。

政治の世界でのネガティブキャンペーンや落選運動はあること。しかし、自動車をはじめとする民生品・一般消費財で 比較広告はあってもこのような(逆)ステルスマーケティングは、今や炎上のもとです。隠していてもいずれ表に出て炎上するくらいのことは容易に想像がつきます。昭和の時代とは違います。マーケティング担当者はよく知っているはずです。それほどVWの経営者やマーケティング担当の感覚が鈍っているとは思えませんが、ディーゼルエンジン不正の件もあり全く否定もできないのが悩ましい所です。ドイツ本国の経営幹部からジャパンにこのようなネガティブステマ依頼の指示が来たことに嫌気がさして、庄司茂氏が7月末に「本人の意向により」突然退任という流れになったのかと深読みしてしまいそうです。

今後、VWはそのような高額報酬で逆ステマを依頼したのか?伏木氏の言う「VWに縁の深い旧知」は誰なのか?に興味が移っていくのでしょうか?それとも、私と同様に違和感を感じ、他のメディアではスルーされて終わりでしょうか。netgeekがどのくらいの覚悟を持ったメディアかはわかりませんが、個人名をあげて批判めいた記事を書くのならば、きちんと関係者に対して取材をするべきでしょうが、どうやらそうでもなさそうです。この記事を書いたGil Penderという記者も存在が不明です。少なくとも、ネットで調べた限りでGil Penderで拾えたのはパリ在住のこの人だけでした。これだけリアルタイムに日本語で記事を書くのですから、日本在住の方と思われますが、Googleでの日本語検索では、netgeek以外でこの名前を見つけることはできませんでした。

VWほどの大企業であっても一度問題を起こすと、ある事も無い事も様々に注目され、報道されてしまいます。普段から不正や虚偽、ごまかしを排除し、正しく誠実な経営が一番大切であることを改めて感じ、自社を振り返る経営者は多い事でしょう。

いずれにしても、古いゴルフではありますがVW車の一オーナーとしても、早い信用回復を望むところです。これからフォルクスワーゲンから発っせられるメッセージに注目したいと思います。

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2015年10月4日日曜日

フォルクスワーゲン(VW)には「リスクの神様」は現れなかったのか

ドイツの自動車メーカーフォルクスワーゲン(VW)の、ディーゼルエンジン車の排ガス性能不正(エンジンを制御するソフトウェアによって、排ガスに含まれるNOx値を不正に操作した)が世界中に衝撃と混乱をもたらせています。この不正の詳細は、一般新聞・専門誌・ビジネス誌、テレビでも詳しく取り上げられ、新しい事実やVWの動きも連日報道されています。VWの対応については、私が信頼し敬愛する自動車評論家の国沢さん清水さんが日々更新されていますので、そちらをフォローしていただければと思います。

話しは変わりますが、VWの不正報道が始まるタイミングと前後して放送が終了した、フジテレビの「リスクの神様」はご覧になりましたか?総合商社「サンライズ物産」とその関係会社に次々と起こる危機(クライシス) に際し、危機対策室が対応して解決するというドラマでした。スタート当初は、一般企業でも起こりそうな(あるいは過去に実際に起こった似たような)危機をテーマにしていたので、自社と重ねながら見ていた経営者や管理職の方も多かったのではないでしょうか。ところが、終盤になると隠されていた会社の不正を暴く権力闘争の話しへと変わっていき、少し現実離れしたフィクションとして最終回を迎えたと思ったのでした。
ところが、VWのディーゼルエンジン排ガス不正のニュースが、背景が明らかになるにつれてこの「リスクの神様」のストーリーと重なってきたではありませんか。商社と自動車メーカー、エネルギー事業での損失隠しとエンジンの性能不正隠蔽と、業界や隠そうとした中身の違いはあるものの、似たような展開。背景にTOPの権力争いが見え隠れするところまで重なっています。

ドラマでは、危機対策室・リスクの神様の活躍で会社の最悪の事態は避けることができました。

しかし、VWの不正については、2013年には欧州委員会は認知していたと報道されています。またトヨタや競合メーカーも、数値の異常さから不正があるのではと疑問を投げかけていたといいます。当然VW社内では不正が発覚したときのことも想定できていたでしょうし、隠し通せるとは思っていなかったでしょう。本来なら遅くとも2013年に何かしらのメッセージが発表されても良かったはずです。それなのに2年間、隠す事以外に何も行動を起こしていなかったように見えます。独裁的なTOPが君臨して正常な判断ができなくなった企業の典型的な行動です。 

アメリカで不正が公になり、世界的に問題になってからのVWから(日本の)ユーザーに対してのコミュニケーションについては疑問が残ります。 

私は長男が生まれた1990年にパサートヴァリアントを購入して以来のVWユーザーです。今回の一連の報道を受けて、まず9月25日に「Volkswagenに関する報道について」とのメールが届きました。メールの送信者の名前は「フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社」となっていました。メールの内容は、VWを愛するオーナーにとってはとても情けない、がっかりするものでした。そしてこのときにはホームページには何も掲載されていませんでした。 

さらに10月2日、改めて 「[重要] VW Japan 代表からお客様へ」というメールが届きました。その文面と同じ内容がVWジャパンのホームページにも掲載されています(写真)。この文面を見て、更にガッカリしていまいました。冒頭、「VWジャパンが輸入して販売した車は今回の不正には該当しないから安心して欲しい」という内容。これは違うでしょう。そもそも、今回の問題はそのまま乗り続けていて事故に繋がるとか人命に関わることではないのです。安心するというのは何に対してなのでしょうか?これまで企業ポリシーやVWブランドに対して信頼を置いていたからこそ、なおさら感じる違和感です。
 今回のメールの差出人署名は「フォルクスワーゲングループジャパン株式会社 代表取締役 スヴェン シュタイン」。きっと、本国で作成した(あるいはドイツ人のスヴェン シュタイン氏の)ドイツ語の謝罪文を何も考えずに日本で翻訳しただけでしょう。 

フォルクスワーゲンには、「リスクの神様」はいなかったようで、とても残念す。

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