2014年9月27日土曜日

保育園で0歳児の預かりが無いノルウェー

BLDが「こども・平等・社会省」
ノルウェーの「こども・平等・社会省(BLD)」で、子育て支援策について説明をいただきました。
ノルウェーの社会では、育児休暇を取るのは当然とされています。育休中も給与が保障され、保育園に入れないということもありません(ただし、小学校から大学まで公立学校は無料なのに、保育園は有料です)。そのようなノルウェーで特に興味深かったことが2つありました。それは、

1,パパクォータ制(育休を母親と父親で分け合う制度)は、母親が育児休暇を取得しなければ、父親にも権利が発生しない事。
2,保育園の0歳児預かりは基本的に無い(公立の保育園では預からない)事。保育園に関する様々なデータは、1歳から5歳のものだけです。

この2つのことは、「世界一子育てに優しい国」と言われるノルウェーなのに、「あれ、おかしいんじゃないの?」と思ってしまいます。

しかし、その理由を聞くと納得せざるをえません。

まず、1の父親の育休取得については、子育ては(父子家庭など特殊な状況を除いては)父親と母親が一緒にすることが前提。母親だけ、父親だけでは子育てはできないという考えのもとで決められたようです。
2の、保育園での0歳児預かりが無いことについても、親には1年以上の育児休暇を取得する権利が有り、育休取得中も給与の100%(49週以下取得時)~80%(59週取得時)支給されるため、収入のために保育園に預ける必要が無いということです。平たく言えば、こどもを育てることが親の仕事なので、0歳児の間はきちんと子育てをしなさい。その間も、今まで通り収入を保障しますよ、ということなのです。0歳児の間は親の元で育てることがこどもにとっても一番なので、保育園では1歳になるまではこどもを預かりません。

バスにはベビーカー専用スペースも
家族との生活を確保し楽しむために働くのだから、家族との時間が第一です。育休取得後の職場復帰も確約されていれば子育てに専念できますから、育休を短期にして無理に保育園にこどもを預ける必用もなければ意味もありません。

翻って、そもそも日本では出産を機に退職する女性が多いので、育児休暇の取得者数も保育園への入所希望も0歳児では母数が限られます。それでも0歳児の待機児童が話題になります。母親はもっと子どもといっしょに過ごしていたくても、早く復帰しないと職場を追われるからです。自分の居場所が無くなる不安から、早い職場復帰を望むのです。しかし一方で、0歳児保育には、こども1人あたりの保育士の数も他の年齢よりも多く必用(1・2歳児の倍、3歳児~の約7倍)で非効率です。逆に言えば、0歳児の保育預かりをしなければ、他の年齢のこどもをもっと多く預かれます。

しっかりと1年間の育休を取得し、社会復帰させる仕組みは、実は様々な視点からも効率的な社会と言えます。

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2014年9月26日金曜日

家族が大事という共通認識と、その実行-ノルウェーに見るFamily Firstな働き方

子育て先進国の筆頭と言われるノルウェーに、取材に来ています。
ひととおりの日程を消化し、明日には帰国の途に着きますが、今回の取材で一番心に残ったことを帰国前に認めておきます。

Family First は社会・職場の共通認識


ノルウェーの一般的な労働時間は、1日7.5時間。その間には30分以上の昼休みを取ることが義務づけられているために、実拘束時間は8時間となります。通常なら、9時スタート17時終業。仮に昼休みを1時間取れば、更に30分伸びることになります。
日本ならば、朝は全員揃ったところで朝礼から始まり、17時の終業後も残業で、20時21時は当たり前という会社も珍しくないでしょう。しかも、当然のように会議は17時以降も。しかし、ノルウェーの一般的な企業で拘束されるのは8時間の就業時間だけ。早く帰りたい人はその分早く来て仕事を始めれば早く帰れるのです。みんなで朝礼なんかはありません。昼休みの30分でさえも長いくらいという人もいます。17時以降の会議なんかはもってのほかです。会議は家族との時間を奪うことになるからです。ノルウェーの人にとっては、仕事よりも家族が大切なのです。だから、家族のために仕事の仕方や仕組みをどんどん変えていきます。
取材初日のこども・平等省での取材は9:30からでしたが、私たちのインタビューのために押さえられていた会議室ではまだ前のミーティングが続いていました。会議室の外に表示されている予約時間は8:00~9:30でした。

朝7時の宿泊ホテル前のオフィスビル
早く帰りたい人はその分早く出社します。15時に会社を出たい人は7時から仕事をスタートします。その結果、現在のオスロでは朝の通勤ラッシュ(といっても日本の比ではありません)は8時前、帰宅ラッシュは16時前後です。たまたまホテルの前がオフィスビルでしたが、朝の5:30には最初の明かりが灯り、7時にはほぼ全フロアの電気が点いて仕事をする人が居ました。office worker なら17時に家に居るのは当たり前とのことです。16時前後、保育園や小学校の周囲は、お迎えのパパやママの車でいっぱいになります。

要職にあっても、育休でも有休でも取るべき

トップが不在でも組織に停滞は有り得ない


漁業省のアームンド副大臣にも、ご自身の子育てについて話しを聞くことができました。
「家族との時間を取るために14時にオフィスを出る(それだけ早く登庁する)ことなどは良くあります。育休を取るのは当たり前。仮に4年間の任期でその期間家族との時間を犠牲にし、こどもの成長に関わる事ができないなんていうことになったら、そんな不幸なことはありません。組織では誰かが代わりを務められますが、家族では代わりはききません。組織というものは、誰かが欠けてもきちんと機能するように作られています。そもそも、職員や大臣が育休を取ったとして、その間に組織運営が停滞したりトラブルが発生するようだったら、それは不完全な組織です。
今では、スマホやe-mailなどでどこにいても連絡は取れるし、サテライトで仕事もできます。早く帰宅しても、問題が起こるようなことはほとんどありません」。
と話しながら、スマホで週末に撮ったお子さんの写真を嬉しそうに見せていただきました。

日本では、自治体の首長がたった3日の育休を取るだけでも大騒ぎします。
頭の硬いお役人や、行政に厳しい目を向ける国民にとっても、傾聴に値する話しではないでしょうか。 

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2014年9月22日月曜日

ITオンチと言ってはいられない、ソーシャルメディアの力を実感できる映画 CHEF

ANAビデオプログラム「SKY CHANNEL」より
子育て先進国、ノルウェー取材へ向かう機内で、思いもかけず面白い映画に出会いました。題名は「CHEF」。「アイアンマン」を手がけたジョン・ファヴロー監督・主演の映画です。
レストランの雇われシェフのカール・キャスパーが、保守的なオーナーの指示に逆らえずに出した料理を評論家(有名ブロガー)にネット(Twitter)上で酷評されるところから物語はスタートします。
カールはTwitterなんて触ったこともないので、そんなことは知りません。しかし周囲はみんな知っています。そこで、10歳の小学生の息子にアカウントを作成してもらい、初めてその状況を知ることになります。
アカウントを作って初めてのTweetが評論家への挑戦状。カールはダイレクトメールを送ったつもりが、2万人を超える評論家のフォロワーもそのTweetを目にすることになります。ネット上で話題(いわゆる炎上)となり、成り行きで評論家と対決する事になってしまいます。しかし、再び保守的なオーナーの邪魔で料理を作らせて貰えず、直接対決は不成立。そのために評論家が再び酷評するTwitterにカールが怒って店に乱入。店内で繰り広げられるリアルな口論を、まわりの客が写真に撮ったり動画に記録したりします。その様子はYouTubeにアップされ、誰もが知るところとなってカールは店を去るのです。

ここは映画の評論をする場ではないので、ストーリーについてはこのくらいにして本題に。

この映画では、ソーシャルメディアのリスクとメリットが様々な形で取り上げられています。Twitterでの炎上だけでなく、一度アップされた書き込みやYouTubeの動画は削除することはほぼ不可能で、限りなく拡散され残るというソーシャルメディアのリスクがわかりやすく表現されています。ソーシャルメディアの暗黒面で職を失ったカールですが、息子が日々アップするTweetにより人気を取り戻し復活することができます。重要なのは「狙わないこと」だと教えてくれます。
ステマ(レビューやブログで、関係者が一般人を装って持ち上げるステルスマーケティング)はすぐに見破られますし、その代償は計り知れません。誹謗や中傷、法令違反を含まない自然体でナチュラルな発言が好感を持たれ、支持されるという良いモデルを示しています。

もう一つ見逃してはならないのが、カールの息子が小学生であるにもかかわらず自転車を操るかのごとくにスマホを活用していること。デジタルネイティブのこども達にとっては、ソーシャルメディアは私たちの世代にとってのテレビやラジオ・新聞よりも空気のような存在になっています。日本ではまだ馴染みのないVINEまで登場します。

この映画を見ると、ソーシャルメディアのリスクだけでなく活用法も良く理解できるでしょう。残念ながら、現時点では日本での公開は未定のようですが、ITやソーシャルメディアが苦手だという経営者や広報担当者にはオススメの映画です。

2014年9月3日水曜日

オムツ替えOK!子育て支援に乗り出すタクシー業界

9月から、いろいろと新しい事がスタートしています。
その中で一つ、小さいながらも注目すべきニュースに出会いました。苫小牧民報社の記事で、「車内でおむつ替えOK えにわっこ応援タクシー発車」という北海道恵庭市の取組です。記事によりますと、
子育て家庭にタクシーを気軽に利用してもらおうと、車内でのおむつ替えなどに快く応じる。自治体とタクシー事業者が協力する道内初のケースと言い、原田裕市長は「子育て世代を応援したい」と強調している。
中略
応援の内容は▽乳幼児連れの外出サポート▽塾などへの送迎(小学生以上)▽車内でのおむつ替え▽車内で絵本や折り紙などの貸し出し▽運転中の優しい声掛け―などソフト事業で、運賃は通常通りで特別な費用は掛からない。
とのことです。
恥ずかしながら、恵庭市が何処にあるのか全く知らなかったので、早速調べました。札幌と苫小牧の中間。新千歳空港と札幌の間に位置する市でした。福岡で言えば春日市のような位置づけなのでしょう。

自治体とタクシー業界が手を組む子育て支援


道内初という表記が気になったので、このような行政とタクシー業界との取組が他には無いかと調べたら、山形県村山市で、「村山市ファミリーサポートタクシー利用助成事業」というのを見つけました。
市が指定するタクシー事業者がファミリーサポートタクシーを運行し、条件を満たした利用者にはその利用料の一部を助成するというものです。
介護・福祉のタクシー利用への助成は多くの自治体で既に実施していますが、子育てのサポートはなかなか見つけられませんでした。しかし、このような取組は増えているのかもしれません。

一方、タクシー業界では、子育てや介護を支援する取組が広がっています。
全国組織では、一般社団法人子育てタクシー協会に加盟したタクシー会社が運行する「子育てタクシー」。続いて第一タクシーグループの「ママサポートタクシー」
東京では京王自動車が「はぴママサポートタクシー」を運行していますし、福岡市では大稲自動車が「プレママタクシー」「こどもタクシー」を運行しています。
他にも、ローカルなタクシー事業者が独自のサービスを展開しています。

最近は、各自治体で子育て支援策をさまざまに導入し、いろいろと新しい取組がなされています。その結果として、若い家族が移り住んで人口減少に歯止めがかかったという例も出てきました。
恵庭市や村山市のように、行政が(タクシー業界など)民間の取組を支援し、行政サービスの一部に取り込んでしまうのも一つの方法だと思われます。


しかし、自治体にしてもタクシー業界にしても、このような取組が広く認知されていない(あるいはあえてしていない)のも実情のようです。

私はビジネスで利用するタクシーも、このような取組をしている会社のタクシーを指名・利用しようと思ってしまいました。こういう取組もreputasion向上に繋がるはずです。