2014年2月13日木曜日

佐村河内守氏の事件に見る企業の潜在リスク

「現代のベートーベン」「全聾の作曲家」とメディアで賞賛されていた佐村河内守氏に、実はその作品が自らの作品ではなく、しかも耳も聞こえていたという告発がなされました。佐村河内氏のゴーストライターである新垣隆氏(桐朋学園非常勤講師)が会見を開いて明らかにしたのです。

この事件の詳細は、これからもワイドショーや週刊誌を始めとした様々なメディアで取り上げられ、真相が解明されるのでしょう。
今回の「事件」を企業活動に置き換えてみると、大きく2つの点で反面教師とすることができます。

 

秘密を共有するときには契約書を交わす

佐村河内氏は、新垣氏とはこれまで契約書などは交わさず、お互いの信頼関係だけをよりどころとしてこの関係を続けてきたのでしょうか?
佐村河内氏を業務委託の発注者、新垣氏をその受諾者と置き換えてみたらその危うさは容易に想像が付きます。「2人だけの秘密」というのは、いずれどちらかの裏切りによって終止符を打たれることが普通です。 だからこそ、企業間の約束事では「契約書」を交わします。契約に反した場合のペナルティを明確にした文書を取り交わすことによって、お互いを牽制しあい情報を厳密にコントロールしようとします。

私の仕事でも、クライアント様からの相談時点から(契約前であっても)守秘義務を負っているとの認識で臨みますが、上場企業やナーバスな業種のクライアント様ですと、相談のテーブルに付く前にNDA(Non-disclosure agreement 秘密保持契約書)にサインを求められることもあります。
今回の秘密が明らかになった事で、佐村河内氏は社会的に責めを負うだけでなく、レコード会社や出版社、その他いろいろなところからの損害賠償を含め、刑事や民事でも訴えられる可能性が高いでしょう。経済的なダメージは相当なものになるはずです。
これを避けるには、2人が死ぬまで秘密を守り通す以外に方法は無かったわけですから、何かしらの守る手立てを考えてしかるべきです。
それとも契約書を交わしていて、週刊文春に記事が出る事を知って新垣氏が自分の身を守るためにあえて記者会見をひらいたのでしょうか?

仕事はガラス張りにする、死角を作らない

2つめは、周りから見えないことによるリスクです。佐村河内氏を企業の発注担当者、新垣氏を受注業者と置き換えると見えてきます。担当者しか把握していないとか、周りからチェックできないなどを良い事に時として発覚する、バックマージンの要求や架空発注などです。誰にも実態がわからないものや、相場が曖昧なものなどでは請求額が妥当な額であるかを判断できる人が、社内にいないケースも多くあります。昨年の食材偽装では、ひょっとしたら偽装だけではなく購入価格にも問題があった可能性は否定できません。話題になったドラマ「半沢直樹」でも、迂回融資の追求と攻防がストーリーのクライマックスでした。


日本の企業経営者は、従業員を家族同様に扱い、お互いに信頼し支え合ってきました。しかし、それは古き良き時代の会社の姿となってしまったのかも知れません。

今、考えなければならないのは、不正が起きない組織や制度、仕組みを備えることです。欧米の企業や日本でも官公庁では定期的な担当替えをするのは、癒着や不正を未然に防ぐためでもあり、欧米でバケーションなど交代で長期休暇を取らせることも同様の効果があると言います。

契約や発注に関して、見落としていることはありませんか?
うかうかしていると、明日、足下をすくわれるかも知れませんよ。

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