2014年2月27日木曜日

LINEモールオープンを控えウィメンズモール閉鎖、次は?

ウィメンズモールのサイトより
ベネッセコーポレーションが運営するウィメンズモールが、2月25日をもって閉鎖となりました。報道などによると、ウィメンズモールの会員数は約30万人。モールへの出店数は約200ということでした。楽天市場やamazon、昨年出店料を無料としたYahoo!ショッピングなどの総合ECサイトとは規模では比べものになりませんが、ベビー&マタニティ用品の専門モールとしては大手の一角ではありました。
女性向けサイトなので、私自身が覗いたことは無いのですが、少し考察してみようと思います。
ウィメンズモールに出店していたのは、ベビー用品などの大手メーカーが中心。たまごクラブやひよこクラブの広告主と重なる ところが多く、しかもそれぞれ自社でもショッピングサイトを持っているところも多かったようです。メーカーが直接出店すると、安易に値下げもできず、会員にとってウィメンズモールで購入するメリットは、モール上のみで使えるポイントや会員限定サービスくらいしか無かったのかもしれません。

ウィメンズモールの対象は20代~40代前半の妊娠中から小さなお子さんがいる女性にほぼ限られます。
成長が早い子どもの物は、購入しても使用期間が短いので、ものによってはレンタルで済ませる人も多く居ます。一方、小さな子を抱えて思うように出かけることもできないために、大きな物や重たい物の購入にはECサイトやネットスーパーなどの利用も増えています。ECサイトを利用するにあたっても、高額品や特定のブランド商品なら、価格comで最低価格を事前に調べたり、ヤフオクを利用したりと、財布の紐はなかなか緩みません。
たまごクラブやひよこクラブといった雑誌から誘導しても、あるいはウィメンズパークから誘導しても、商品購入にまで結びつけることは容易ではなかったはずです。しかも、モールの利用期間が子どもが小さな間だけと限られているため、常に新規の会員を獲得し続けなければならず大変です。

そんな状況の中で、LINEがこの春にモールを本格的にスタートすると昨年暮れに発表しました。
LINE社のニュースページより

インターネットの利用端末は、PCからモバイルへと急激に移行が進んでいます。 ECの主戦場も、PCからスマホへ移行することは確実です。
スマホの中でも無料通話アプリの利用者の囲い込みが熱を帯びてきました。今年になって、LINEと同様の無料通話アプリサービスの会社のM&Aが立て続けに発表されました。楽天がバイパーを、FacebookがワッツアップをM&Aで傘下に収めたのに続き、ソフトバンクがLINEに出資するという噂まで飛び出しました。スマホでは、ネットへの接続はブラウザではなくアプリからが主となります。そのため、画面上に置かれるアプリのアイコンが重要となります。小さな画面に設置できるアイコンの数は限られます。スマホ画面上での陣取り合戦が繰り広げられることになりますが、単独のECサイトが画面にアイコンを置いて貰うことは、非常に困難でしょう。
ECの市場はこれからも更に拡大すると言われていますが、ECの戦場がスマホに移行する過程でふるいにかけられ、閉鎖するモールやサイトは増えてくるに違いありません。LINEモールスタートも一つのきっかけになり、ウィメンズモールは閉鎖の決断ができたのかもしれません。

2014年2月15日土曜日

少子化対策と子育て支援策は似て非なるもの

ここ数年続けている子育て先進国の取材は、一昨年のニュージーランド、昨年のカナダBC州に続き、今年はノルウェーを取材しようということになりました。子育て支援制度の充実に加え合計特殊出生率や各種経済指標の客観的なデータも高水準。きっと日本の現状と比較して色々と参考になることも多いはずです。そこで、ノルウェー大使館にアポイントを取り、取材協力の御願いに行ってきました。対応いただいたのは、ノルウェーの女性参事官と日本人の広報官です。

これまでのスウェーデン、ニュージーランド、カナダBC州の取材状況などを伝え、今回の取材目的や趣旨、希望する取材先・対象と時期などを伝え、本国との調整を依頼しました。同時に、ノルウェーの子育て支援の状況などについて軽いヒアリングを行いました。


まだ本取材ではないのですが、様々な話をした中で2つの事が印象に残りました。

パパクォータ制度への抵抗は強かった

今回ノルウェーでの子育て状況取材の主題の1つが「パパクォータ制度」。1993年にノルウェーで初めて導入され、ヨーロッパ各国などに広がっています。日本でも2010年の育休法改正により導入された「パパ・ママ育休プラス」は、このパパクォータ制度を手本にしたと言われています。
パパクォータ制度の話を取りかかりに、ノルウェーの子育て支援の話に入っていったのですが、いきなり「その前提は違う」というところから始まりました。子育て支援が主体ではなく、家族のあり方が大事なのですと。カナダBC州の子供家庭省での取材時にも同じことを言われました。言い方を変えると、「木を見て森を見ず」とならないようにということでしょう。日本では法律や各種制度が、子育ては母親の役割というところからスタートしています。 子育てに父親が関わる前提では考えられていないとも言えます。
ノルウェーの子育て・家族に関する政策を担当する大臣は「子ども・平等・社会大臣(Minister of Children,Equality and Social Inclusion)」です。政策の決定や実行状況についても、オンブット制度(国が任命する監視員)で国民の厳しい目が光っています。

北欧の国々は冬も長く貧しかったため、夫婦で働くのが当たり前でした。そのため、ノルウェーでも政治にも経済活動にも女性の進出が早くから進んでいました。それでも、本格的になったのは1970年代に男女平等、地位獲得の運動をした結果だと言います。今では上場企業の取締役には、一定比率以上女性を登用しなければならないとか、政権交代すると閣僚に何人女性が入閣するかなど、国民が厳しい目で見ていると言います。思えば日本でもウーマンリブ運動が盛んでしたが、高度成長期の男世界の壁を打ち崩すことはできず今に至ります。ノルウェーでも一時合計特殊出生率が下がり、 それを何とかしなければと導入されたのがパパクォータ制でしたが、決定に際しては相当な抵抗もあったそうです。それでも導入にこぎ着けられたのは、男女平等が前提という国民意識の高さが背景にあり、押し切ることができたということでした。

国家戦略としての出生率維持

日本では、子育て支援だけでなく北欧の手厚い社会保障制度について注目します。しかし、そのために高い所得税や消費税を受け入れていることにはあまり目を向けません。当然、物価も高くなります。わずか500万人という人口では、いくら高率の課税をしても税収には限りがあります。北欧の国の中でもノルウェーは、1970年代に石油が出たことによって裕福な国となりました。国民一人あたりのGDPも高水準です。一方で、限りある資源に頼っていても先が無いのは明かです。
それだけに、余裕があるうちに出生率を快復させ、労働者人口の減少に歯止めをかけ、優秀な人材を育てて次の産業を育成しなければなりません。
国家戦略として、「米百俵の精神」で子育てに力をいれていると感じました。

まだ、大使館での情報交換だけですが、大変興味深い内容で、現地取材が楽しみです。


戻って取材準備のためにノルウェーの事を調べ始めて驚きました。ヨーロッパで最も物価が高い国の一つだということです。デフレが続いた日本から欧米に行くとどこも物価が高く感じるのに、その中でも最も高いとなると、取材経費はどのくらいにのでしょう?ちょっと不安になりました。

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2014年2月13日木曜日

佐村河内守氏の事件に見る企業の潜在リスク

「現代のベートーベン」「全聾の作曲家」とメディアで賞賛されていた佐村河内守氏に、実はその作品が自らの作品ではなく、しかも耳も聞こえていたという告発がなされました。佐村河内氏のゴーストライターである新垣隆氏(桐朋学園非常勤講師)が会見を開いて明らかにしたのです。

この事件の詳細は、これからもワイドショーや週刊誌を始めとした様々なメディアで取り上げられ、真相が解明されるのでしょう。
今回の「事件」を企業活動に置き換えてみると、大きく2つの点で反面教師とすることができます。

 

秘密を共有するときには契約書を交わす

佐村河内氏は、新垣氏とはこれまで契約書などは交わさず、お互いの信頼関係だけをよりどころとしてこの関係を続けてきたのでしょうか?
佐村河内氏を業務委託の発注者、新垣氏をその受諾者と置き換えてみたらその危うさは容易に想像が付きます。「2人だけの秘密」というのは、いずれどちらかの裏切りによって終止符を打たれることが普通です。 だからこそ、企業間の約束事では「契約書」を交わします。契約に反した場合のペナルティを明確にした文書を取り交わすことによって、お互いを牽制しあい情報を厳密にコントロールしようとします。

私の仕事でも、クライアント様からの相談時点から(契約前であっても)守秘義務を負っているとの認識で臨みますが、上場企業やナーバスな業種のクライアント様ですと、相談のテーブルに付く前にNDA(Non-disclosure agreement 秘密保持契約書)にサインを求められることもあります。
今回の秘密が明らかになった事で、佐村河内氏は社会的に責めを負うだけでなく、レコード会社や出版社、その他いろいろなところからの損害賠償を含め、刑事や民事でも訴えられる可能性が高いでしょう。経済的なダメージは相当なものになるはずです。
これを避けるには、2人が死ぬまで秘密を守り通す以外に方法は無かったわけですから、何かしらの守る手立てを考えてしかるべきです。
それとも契約書を交わしていて、週刊文春に記事が出る事を知って新垣氏が自分の身を守るためにあえて記者会見をひらいたのでしょうか?

仕事はガラス張りにする、死角を作らない

2つめは、周りから見えないことによるリスクです。佐村河内氏を企業の発注担当者、新垣氏を受注業者と置き換えると見えてきます。担当者しか把握していないとか、周りからチェックできないなどを良い事に時として発覚する、バックマージンの要求や架空発注などです。誰にも実態がわからないものや、相場が曖昧なものなどでは請求額が妥当な額であるかを判断できる人が、社内にいないケースも多くあります。昨年の食材偽装では、ひょっとしたら偽装だけではなく購入価格にも問題があった可能性は否定できません。話題になったドラマ「半沢直樹」でも、迂回融資の追求と攻防がストーリーのクライマックスでした。


日本の企業経営者は、従業員を家族同様に扱い、お互いに信頼し支え合ってきました。しかし、それは古き良き時代の会社の姿となってしまったのかも知れません。

今、考えなければならないのは、不正が起きない組織や制度、仕組みを備えることです。欧米の企業や日本でも官公庁では定期的な担当替えをするのは、癒着や不正を未然に防ぐためでもあり、欧米でバケーションなど交代で長期休暇を取らせることも同様の効果があると言います。

契約や発注に関して、見落としていることはありませんか?
うかうかしていると、明日、足下をすくわれるかも知れませんよ。

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2014年2月3日月曜日

精米器に残った玄米を集めて販売した福岡九州クボタ

少し古い話で申し訳ないのですが、やはりスルーするわけにいかず今頃取り上げさせていただきます。それは福岡九州クボタが、コイン精米器に残った玄米を回収して販売していたというものです。
アクリフーズの冷凍食品農薬混入事件が進行中、福岡のローカルなニュースでしたので、あまり大きく報道されませんでした。概要を知っていただくためにまず、朝日新聞DIGITALの記事をそのまま転載させていただきます。
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2014年1月18日03時09分

精米機に残ったコメ販売 福岡九州クボタ「ブレンド米」

農機具販売会社で米の販売もしている「福岡九州クボタ」(福岡市南区)が、営業所に設置したコイン精米機で不純物を取り除く際に残る玄米を精米し直して、「ブレンド米」として売っていたことがわかった。虫がわいていた玄米も あったというが、多くはすでに飲食店などで消費された。同社は朝日新聞の取材に「偽装と言われても仕方がない」と認め「深く反省している」とした。
 同社によると、コイン精米機は、福岡県内などの営業所に併設。農家などが主に自家用のために玄米を入れ、不純物やぬかなどを取り除き、白米に精米する。精米機には、不純物などとともに、玄米が一部残ってしまうという。
 同社は、残った玄米を、従業員が集めて食べたり、転売したりしないように、2012年11月から、11カ所あった精米機から、少なくとも月に2回、回収し始めた。だが翌月から、こうした玄米を、自社の精米所に持ち込んで改めて精米し、「ブレンド米」と称して売り出した。その後、精米機から回収した玄米だけでは足りなくなり、ブランド米を混ぜて売るようになった。
 同社によると、昨年10月までに、福岡市内の飲食店14店と、主に訪問販売した37人に、1キロあたり350円前後で、計3908キロ(約120万円)を売った。全重量のうち約4割が精米機から集めた玄米だったが、売る際には説明していなかった。
 外部から指摘を受け、社内調査したところ「玄米に虫がわいていた」「ゴミと一緒に玄米を回収した」との証言が従業員から寄せられた。販売した飲食店などには謝罪したうえで返金した。購入した飲食店は取材に対し、「そうした米だとは知らずに客に提供した。今後は気をつけてほしい」と話した。
 同社は九州農政局に自主申告。農政局は昨年12月、産地が特定できないものを販売したなどとして、JAS法や米トレーサビリティー法(産地情報の伝達)に基づいて指導し、改善報告を求めた。同社は「(玄米が)もったいないという気持ちで始めた」と説明している。
 同社は農機具メーカー「クボタ」(大阪市)の関連会社。クボタは「調査の結果、同様の事案は他のグループ会社ではない」としたうえで、「コイン精米機に残った米を販売することは不適切。管理態勢を徹底し、再発防止に努める」とのコメントを出した。(中野浩至記者)
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これだけ食の安全について行政からも注意喚起され、マスメディアでも連日取り上げているのに、まだこんなことをやっていたのかと驚くばかりです。

2007年に相次いだ食品偽装の中には、「もったいないから」と包装し直したり賞味期限の日付を新たに打ち直したり、あるいは一度下げた料理を再利用したりということが発覚して会社そのものの信用を無くしてしまった例が多くありました。それを目の当たりにした企業の多くは我が身を振り返り、身を正したはずです。

「もったいない」だけでなく、「安全」に対しての意識の欠如にも驚くばかりです。コイン精米器は、誰が何を器械に入れたかもわかりません。かつて、自動販売機に置かれた青酸コーラ事件以来、未開封であっても自販機に残された飲料などを口にする人はほとんどいなくなりました。消費者でさえもそれだけ慎重な時代に、企業として組織的に実行していたというのです。
アクリフーズの農薬混入の例を見るまでもなく、誰がどのような行動を起こすのかわかりません。精米器に毒性のあるものを投入することだってあり得ます。誰が持ってきたかもわからない玄米ですから、当然品種も品質もわからないしバラバラででしょう。そんなものを集めて商品として販売していたのです。

しかも、この朝日新聞の記事によると、虫がわいていたような米まで混ぜていたというのは、既にこの一連の流れ(残った玄米の回収→精製→精米→ブレンド→販売)が、ルーチンの業務の中に位置づけられていたことに他なりません。「足りなくなり、ブランド米を混ぜて売るようになった」ということは、販売目標も設定していたのでしょう。

客観的に見れば、悪い事だと直ぐに気がつくはずです。しかし、この記事からすると、もともとそれぞれの営業所で従業員が持って帰ったり転売したりしていた事が始まりのようです。福岡九州クボタは、農機具の販売会社であり、食品を取り扱う会社ではありません。食品を扱う会社であれば起こりえなかった不祥事ではないでしょうか。
ここに至る流れはきっとこんな感じだったと推測します(以下、あくまでも私の勝手な想像です)。

営業所で誰かが勝手に残った玄米を持ち帰るようになった

おかしい、不公平だと誰かが言い出して、それでは不公平がないように営業所で処分方法を考えよう。
(じゃんけん?くじ引き?順番?)

営業所ごとで違う対応に、再び不公平感

それでは全体で集めて、不公平がないように会社として活用方法を考えよう

精米して販売し、その売り上げでみんなで忘年会でもしようか

こうして考え出されたのが不公平感のない「余った米の有効活用法」としての販売。それが思いもかけず好調に売れて、売り上げも利益も出たので販売目標を設定。しかし、会社として販売した時点で売り上げも立てることになります。これまでは「裏金」だったものが帳簿に記載されてしまうのです。ブランド米を仕入れれば原価も発生します。余った玄米の売り上げを忘年会の原資に、みんなで福利厚生的に使おうということもできなくなります。
結果、集められた玄米を販売するという「新たな事業」が生まれてしまったのです。

目先の改善策が知らぬ間に法を犯す

誰かだけが得するのは良くないからと考え出した「改善案」が、会社にとっては「やってはならないこと」に手を出させてしまったことになります。従業員の不公平感を無くすための取組として始まったが故に、食品の販売を始めるという「事業」視点が欠落しているのです。

最初から新規事業として食品の販売を考えていれば、収支だけでなく様々な事業リスクも検証するので、このような「事業」を始めることはなかったはずです。

業務の見直しで、相対的に改善しようと「前よりも良く」を繰り返しているうちに、本来の目的や目標から離れて行ってしまうことがよくあります。誰かが俯瞰的・客観的に見ていないとこのような失敗は起こりがちです。そして、当事者はこの過ちに気づかないことが多いのです。

社外取締役やコンサルタントの活用は、この過ちを犯さないためにも有効です。

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