2014年1月13日月曜日

企業クライシスとクロスロード

「クロスロードゲーム」をご存じでしょうか?
阪神淡路大震災の際、実際に起こった目の前の事象に行政担当者が難しい判断を迫られたことをきっかけに研究が進み、主に行政の災害危機管理のシミュレーションゲームとして広まっています。
「クロスロード」には、「交差点、重大な分かれ道、人生の岐路、出会う場所」などの意味があります。企業でも、難しい判断を短時間で下さなければならない場面(クロスロード)は多くあります。それが不祥事や事件・事故となると、判断の先送りや誤りは企業生命を脅かすことにもなりかねません。特に近年多いのが、このような企業クライシスに際しての公表の是非とタイミングを巡るクロスロードです。
8年前(2007年)、立て続けに世間を賑わせた食品の偽装や賞味期限改ざんは、内部告発やマスコミの取材報道により発覚するものが中心でした。しかし昨年マスコミを賑わしたホテルやレストランの不適切表示・偽装は、記者会見やリリース、ホームページなどで自ら公表するところばかりでした。この背景には、ソーシャルメディアの存在が有るのかもしれません。バイトテロなどという言葉も流行りました。アルバイトによるtwitterなどへの不適切行為の投稿で炎上し、閉店や倒産にまでいたるケースが有ったり、丸亀製麺ではざるにカビが生えていた事をお客様が写真付きでNetに書き込み、それが拡散したりと言うことも起こっています。
かつては「人の口に戸は立てられない」と言ったものですが、今は「Netの書き込みの手は止められない」といったところでしょうか。何かの不祥事や問題が第三者によって公表される前に、自己防衛的に慌てて発表していますといわんばかりの、記者会見も支離滅裂なものばかりでした。重要なクロスロードにおける検討過程と判断・決断がきっと場当たり的なものだったからでしょう。

災害時、行政の現場でのクロスロードでは事象に対して客観的に思考することが比較的容易です。それは、判断の先にあるのは現場や被害者への影響と結果であり、自分自身に跳ね返ってくることではないからです。どうしたら被害を少なくできるか、現場の混乱を最小限に抑えられるかを冷静に考えられます。
ところが、企業の不祥事や事故・事件では、下した決定が自分や身近な人にも跳ね返ってきます。その結果、次の問題や混乱が社内に引き起こされます。最初から意図的・故意に起こした不祥事はもちろんのこと、そうではない事故であっても責任を追及されることを避けるために、あるいは想定される社内の混乱やパワハラが怖くて見て見ぬふりをしたり先送りをしたりします。
しかし、そのような先送りは発覚した時にダメージを大きくするだけです。問題の発生・存在を認知したら、正しく向き合わなければなりません。その時がクロスロードなのです。逃げずに正しい判断と決断が迫られます。判断を誤ると、お客様に被害が及び、会社にも大きなダメージとなって跳ね返ってきます。先延ばしをすればするほど対応の選択肢は少なくなるばかりか、公になったときの社会的な批判は大きくなるばかりです。最悪の場合は経営の責任を問われるどころか、会社が倒産したりということにもなります。

企業のクロスロードのケーススタディとしては、ジョンソン・エンド・ジョンソンのタイレノール事件やグリコ森永事件、参天製薬の目薬脅迫事件などが有名です。しかしこれらは第三者からの脅迫でした。(個人的な怨恨などがあるにせよ)問題の発生は中からではなく外部からもたらされています。このように事件の発生が明確に認知されることは極めて希です。しかも、原因は社内にはなく第三者による犯罪ですから、災害発生時と同様に(比較的)客観的に思考し判断できるケースです。問題が自社内で発生したケースだと、こうはいかないはずです。
一連のホテル・レストランメニューの不適切表示や、現在進行中のアクリフーズの農薬混入事件(当初は事件ではなく事故としてスタート)などのようなケースで、適切な判断・決定が下せますか?

クロスロードゲームで自社の様々なケースを想定し、日頃からシミュレーションしておかれることをおすすめします。

クライアント様の社内研修や学生の授業でも好評です。
ファシリテーターが必要なときにはお声かけください。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。