2014年12月26日金曜日

2014年の謝罪会見を振り返り

今年も残りわずかとなり、一年を振り返る時期となりました。

今年も多くの企業不祥事などで謝罪会見が行われましたが、やはり記憶に残るのはベネッセコーポレーション(以下ベネッセ)とマクドナルドでしょうか。
どちらも、会見の直接の原因を作ったのは社外の人間や取引先でした。ベネッセは個人情報の管理をしていた関連会社に派遣されていた派遣社員が、換金目的で大量に個人情報を持ち出し、名簿業者に売り渡していました。
マクドナルドは、チキンナゲットの製造を委託している上海の企業の作業現場で横行していた不適切な行為(消費期限切れの鶏肉使用や床に落ちた肉を平気で原料に戻すなど)が発覚し、その様子がテレビの画面でも度々流されたものです。

いずれも会見ではTOP自らが謝罪したところまでは良かったのですが、自分達は被害者(でもある)とのニュアンスを残しながらの謝罪(特にマクドナルドは明確に被害者だと発言)だったために、顧客や消費者、マスメディアには反省していないと受け取られました。その結果、謝罪会見後も両社を責める空気は弱まらず、業績も低迷したままです。

どちらも大きな会社で、きちんとした広報部門を抱えています。それなりに経験も知識もスタッフのスキルもあったはずです。しかし、会見ではそれが活かされた様子はありません。TOPが広報の助言を無視あるいは事前に確認をせずに独断で発言した事によるものでしょう。
ベネッセの原田社長はマスコミ慣れしているが為に、自ら墓穴を掘った感もあります。マクドナルドのカサノバ社長は、アメリカ流に中国の会社との訴訟を前提とした「騙された、自分達が被害者」発言が口をついて出たのでしょう。
きちんと広報担当者と事前打ち合わせをしていれば、被害者・消費者に対しての基本スタンスを明確にし、言ってはならないことも確認できていたはずです。

謝罪会見においては、被害者・消費者に対して自社が加害者であるという立場を意識した上で臨まなければなりません。少しでも責任回避の発言・態度が顔を覗かせると、「ほらやっぱり、口では謝罪しているけど本心は違うじゃない」となってしまいます。何処に原因があろうと、消費者やユーザーにとっては最終提供者が加害者であることは間違いないのです。

一方でまったく逆のケースが年末に向けて話題となっています。
自動車部品メーカーのタカタが、エアバッグのリコールを巡ってアメリカや日本で非難されています。これは、自動車という最終商品の一部品の不具合を、誰が加害者として責任を持つかということの問題でもあります。部品メーカーが独断で最終商品であるクルマのリコールを決定して良いのかということです。リコールとなれば、クルマの所有者は自動車メーカー(ディーラー)へ持ち込み、エアバッグの交換をする事になります。当然メーカー(ディーラー)には予定外の負担が発生します。原因も特定されていない段階で、部品納入メーカーがそんなことをして許されるのかという関係性の問題でもあります。
そこで、トヨタがこの問題を自動車メーカー全体のこととして取り組むよう各社に呼びかけ、HONDAを始め「検査リコール」という形で消費者の不安を取り除こうと動き始めました。

あらゆる物がグローバルに流通し販売される時代となり、ブランドを守り発展させるためにはこれまでより視点の高い現場目線と経営判断が必要になったことを、改めて印象づけた年だったと言えます。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年11月30日日曜日

消費税増税の一番の失敗は税別表記を認めたこと

2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられて8か月が過ぎました。その間に円安の影響もあり消費者物価が上がる一方でGDPは下がり続けています。
生鮮食品を除いた物価指数が前の年の同じ月を2.9%上まわって、17か月連続の上昇となりました。消費税率の引き上げで、消費者物価指数は2%程度押し上げられると日銀は試算していますので、増税分を除いた上昇率は、0.9%程度と見られます。
一方、先日発表され市場に大きなショックを与えた7~9月期のGDP速報値は、年率換算で前期比マイナス1.6%でした。消費税増税の反動で大幅にマイナスになった4~6月に引き続いてのマイナスですから、未だに増税の傷から立ち直れていないことがわかります。アベノミクスで株価(日経平均)はほぼ2倍に上昇し、景気は回復基調にあるといわれている中でのGDPマイナスです。
GDPの約6割は個人消費といわれます。大手企業の業績が好調というなかでのマイナスですから、個人消費の落ち込みが大きく響いているのは明らかです。消費支出が下がれば、消費者を対象とする企業業績(売上)も下がり、その企業とビジネスをしている企業の業績も玉突きで悪くなります。当初、増税前の駆け込みの反動で4~6月期は落ち込むものの、7~9月期はプラスになると予想されていたのに、どうして個人消費は快復しないのでしょう?

高齢者人口は、消費税初導入時の2倍以上


 10月は有効求人倍率など雇用関連の指標が改善し、鉱工業生産指数もプラスを維持してはいます。しかし、消費支出は4%のマイナスでした。
私は経済評論家ではないので、マクロ経済を語る程の知見は持っていませんが、消費支出が伸びない一番の要因として、外税表記を認めたことだと考えています。そう考える背景には、人口構成があります。

今年発表された人口推計では、人口の25.1%が65歳以上です。日本人の4人に一人は高齢者で(基本)年金暮らしということです。
これまで消費税が導入・増税されたのは、1989年、1997年、そして今年ですが、1989年の高齢者人口は1,431万人(高齢化率11.6%)、97年が1,976万人(高齢化率15.7%)、そして現在は3,189万人(高齢化率25.1%)です。この人口構成の変化を見逃しています。
今年3月までは税込総額表示で、5%の消費税もあまり意識することなく買い物ができていました。表示価格の現金を財布から出して支払うだけで良かったのです。しかし外税表記を認めたことで、多くの店では店頭表示価格で買い物できなくなりました。
お年寄りにとってはこの外税での支払いがとてもやっかいです。外税表記では、店頭価格に8%を加えての支払いとなりますが、このときに2つの点で購入を躊躇わせることになります。

1点目は、店頭の価格が税込なのか税別なのかを確認しなければならないこと。外税だといちいち計算しなければなりませんが、お年寄りにはその計算自体が苦痛です。多くの場合はレジで初めて支払総額を知ることになります。
2点目は上乗せされる8%という金額が意外に大きいと意識すること。これは5%であっても同様だと思いますが、既述のように内税では意識せずにすみました。外税にしたことによって、上乗せされる消費税を意識することになったのです。高額商品であれば尚更その金額のインパクトは大きくなります。
この2点に加えて、表示方法の不統一が更に混乱させています。高齢者にとっては買い物そのものが苦痛になってしまったのではないでしょうか。

個人商店やスーパーでも店によっては税込表記の所もあります。福岡のスーパー「ルミエール」はその価格の安さだけでなく、全品税込価格表示で大変な賑わいです。週末、私も両親の買い物に荷物持ちとして同行することが多いのですが、お客様の大半は高齢者に見えます。価格も安く、店頭表示価格で買い物ができる安心感からでしょうか。
一方、若者は近くのコンビニで買い物をすませ、若い家族連れは、こども達も楽しめる大きなショッピングモールなどに出かけているのでしょう。

今回の増税に際しては、産業界や流通業界からの要望を受け入れ、政府は税別表示を認めてしまいました。消費者(買い手)の利便性よりも企業(売り手)の理論、都合を優先させたのです。しかも、表示方法を統一しませんでした。大きく落ち込み、なかなか回復しない消費支出のトレンドを作ってしまったのは、増税だけではなく外税表記を認めてしまったことにあると思えてなりません。

次期増税に向けては、これまた低所得者・消費者のためという都合の良い業界の要望を受けて、軽減税率の導入などを検討しているようです。このまま税別表記を続けたままだと、さらに複雑になって混乱するだけです。そんなことを検討する前に、税込総額表示に戻す方が消費の回復は早いと思いますがいかがでしょうか?

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年11月24日月曜日

大分県立美術館OPAMの取組に注目


来年4月24日に開館する大分県立美術館 OPAM。2006年に開館した青森県立美術館以来、9年ぶりに新設される美術館です。設計は、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を2014年に受賞した坂茂氏。館長は西武美術館・セゾン美術館が一番元気だった頃に学芸員として数々の展覧会を手がけ、2011年には第7回西洋美術振興財団賞「学術賞」を受賞した武蔵野美術大学教授 新見隆氏。建築の面からも、美術館のあり方、コンセプトからも開館前から注目を集めている新しい美術館です。このOPAMの開館に向け、当社ブライト・ウェイは、大分県外広報のお手伝いをさせていただいています。今回はOPAMの来年の開館に向けての取組について、触れてみたいと思います。

OPAMは10月末に建物が完成・引き渡され、11月23日からオープニングイベント「誕生祭」が開催されています。開館は来年なのですが、その前に県民に向けて建物を開放してのイベントです。美術館の建物は、作品の展示と収納をする入れ物ですから本来は脇役なのかもしれません。しかし、ミシュランのレストランガイドでも、料理(星の数)だけではなく、お店の内装からテーブルウェア、それを提供するサービス(フォークとスプーンの数)を評価して掲載しているように、美術館もその収蔵作品や展示作品だけで評価される時代ではなくなっています。
OPAMは、収蔵・展示館という単なる箱とは位置づけず、建物自らもソフトとして機能しようとしているような、これまでにない柔軟性を兼ね備えた美術館です。
コンセプトに、
「五感で楽しむことができる」
「自分の家のリビングと思える」
「県民と共に成長する」
美術館を掲げています。

新見館長も、美術館は作品を収蔵する場ではなく見せる場だとし、所有にこだわらず世界中から多くの良い作品をここで紹介したいと明快に話します。

高まる好奇心を満足させ、かわす誕生祭


人には誰にも好奇心があり、話題になった物や新しい物に興味を持ちます。新しい商業施設やランドマークとなる施設がオープンする時には、大挙して人が押し寄せます。多く人の来場目的は「見るだけ」です。かつて福岡ドームやシーホークホテル&リゾートがオープンしたときには、それはものすごい人でした。シーホークはホテルでしたが、宿泊やレストラン、宴会場を利用するわけではなく、その話題性から好奇心旺盛な「単に見に来た人」で館内はごったがえしました(ドームに来たついでに見学も)。

その時とは違うとは思いますが、OPAMも開館すれば多くの人が美術品ではなく「建物を見に来る」人で溢れることは容易に想像がつきます。それを想定してか、「五感で楽しむ出会いのミュージアム」のお披露目は2段階としました。まず11月23~30日、新しい美術館ができたことを祝う誕生祭。プリツカー賞を受賞したことで俄然注目されることになった坂茂氏設計の美術館そのものを誕生祭でお披露目です。誕生祭ではまだ収蔵作品を展示せず、OPAMのコンセプトを伝えるために依頼された3人の作家と、こども達の作品だけが展示されました。
他でやるようなことはしたくないという新見館長の意向なのか、どこででも実施するテープカットは行われず、これから結婚式という新郎新婦が最初に入館するというパフォーマンスからスタート。iichico総合文化センターと繋がるペデストリアンデッキを渡っての入館です。道路を挟んで寿町と高砂町というおめでたい町名にちなんだ演出でした。
さらに、県民の美術館の誕生を共に祝うという県民参加のイベントが目白押しです。美術館の前の道路を歩行者天国とし、美術館の中だけでなくそこでもイベントを実施。建物の一つの目玉である折り戸式の外壁をオープンにし、美術館から歩行者天国までもが一体化したような開放感のある空間を来場者に印象づけました。
県民はこれから30日まで続く誕生祭を通じて、OPAMの建物の魅力に触れ、それは十分に伝わることでしょう。
そして、来年4月の開館イベントは世界から集まる美術品の企画展。いよいよ美術館の本領を発揮するソフトを前面に出すことで本来の魅力をアピールします。建物を見るよりも作品、企画イベントを見るために美術館を訪れるお客様が中心になるはずです。いわゆる建物見学の冷やかしの来館者は減るので、美術愛好者には落ち着いて鑑賞できるので嬉しいでしょう。

2段階でお披露目することにより、新しい県立美術館に対しての理解をすすめると共に、開館までの半年の間に修正や(場合によっては来館者による汚れや破損の)修復、サイン計画や導線の見直しなども可能となります。商業施設も公共施設も、一度開業して通常営業に移ると簡単には休館したり営業をストップすることはできません。
形ある物に巨額な投資をするビジネスやサービスは、形ができたときがゴールではなくスタートです。そのことを良く理解したオープニング(まだ第一弾ではありますが)だと感心しました。来年4月にはJR大分駅ビル「JRおおいたシティ」を含めた駅周辺の再開発オープンも控えます。来年の春は、大分から目が離せません。

※誕生祭ではマスコミ向け内覧会の案内~当日対応と、式典の取材対応のサポートをさせていただきました。これからも来年の開館に向けて、他の美術館とは違う取組を発信していく予定です。お楽しみに。

大分県立美術館OPAM http://www.opam.jp/
コレクション        http://www.opam.jp/page/collection.html
誕生祭フライヤー(PDF) http://www.opam.jp/files/TopicDetail_8284_file.pdf
開館記念展覧会(PDF) http://opam.jp/files/SpcDocumentDetail_3155_file.pdf

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。 

2014年11月19日水曜日

生番組中での差別発言を、長嶋一茂さんが注意

11月14日の朝の番組「モーニングバード」で、出演者の不適切な差別発言を長嶋一茂さんがその場で指摘し、訂正を促したことでネットで賞賛されています。
事の顛末はこちらのニュース記事で

長嶋一茂、韓国について「みんな同じ顔」と評したコメンテーターを叱る「今、謝んなさい」

この様子を見ていた視聴者やニュースで知った人は、ネットで長嶋一茂さんに対して多くのコメントを寄せています。

長嶋一茂さんが経済学者・飯田泰之さんの差別発言を一喝しネットで賞賛の嵐

私はその放送を見ていませんでした。上記ニュースでは、生放送中にその場の雰囲気に流されることなく「今謝りなさい」と言ったということです。「朝まで生テレビ」などの、あるテーマについて議論をするような番組ならばこのようなシーンはよく見ます。しかし、朝のバラエティ色の強い報道番組です。コメンテーターもそれぞれの分野では専門家ですので、なかなか注意できるものではありません。しかし、その発言が社会常識的に不適切だと感じ、その場で注意できる。普段から考え方・意識を高く持っていたからこその発言であり指摘だったと言えます。

組織内で不適切発言を同じように指摘できるか?


ところで、企業や組織の中でも同僚や上司の不適切な発言もあるのではないでしょうか。上下関係や仲間内の同調圧力により否定できない・指摘できない空気が支配する組織では、そのような発言を指摘したり注意することは困難です。特に緊張感が漂う会議の場などでは、経営トップが発する不適切発言には誰も何も言えないものです。そういう組織では、不適切な発言であってもいつの間にか何の違和感も罪悪感も抱かなくなってしまいます。しかし、一歩外の世界-常識的で正常な感覚を持つ人の社会-に出るとそれは差別発言であったりセクハラであったり、パワハラであったりするのです。
政治家の不適切な発言が指摘され問題になることがありますが、これも同様に「小さな身内の世界の常識・空気」に染まって正常な感覚が無くなってしまった結果です。

周囲にイエスマンや同調する人だけを置き、自分だけが居心地の良い組織になっていませんか?今回の長嶋一茂さんのように、間髪を入れずに誤りを指摘し・正すよう促す人と仕事をしましょう。それは時として苦痛だったり鬱陶しかったりしますが、組織や経営を健全に保つためには必用な「刺激」でもあるのです。


また一方で、家庭内の日常生活でも注意しなければなりません。こども達は両親の行動や発言はよく見て覚えているものです。何気ない会話の中でも、差別発言や排他的な発言を聴いていると、自分もそのような行動や発言をしても良いのだと思ってしまうかもしれません。いじめをする子になってしまうかもしれませんよ。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年11月3日月曜日

子育て先進国と日本との違いを整理してみると

OECD加盟国の出生率予測
2012年 ニュージーランド、2013年 カナダ ブリティッシュ・コロンビア州、そして今年2014年はノルウェーへと、3年連続で子育て先進国を取材してきました。いずれもOECDに加盟する先進国で、合計特殊出生率は日本よりも高く、ノルウェーとニュージーランドは2に迫っています。世界母親指標2012(セーブザチルドレン調べ)の評価では、1位ノルウェー、2位アイスランド、3位スウェーデン、4位ニュージーランドとなっています。

カナダの出生率は1.7に届きませんが、第三次ベビーブームを迎えて子供の数が増えています。昨年カナダ取材を終えて、「根本的に前提を変えるべき時に来た日本の子育て支援」としてこのブログで一度整理しました。
今年、さらにノルウェー取材を実施し、社会的・歴史的な背景と共に日本と比較しながら、子育て先進国の特徴を整理してみました。

この表の女性の就業率はOECDのデータですが、15歳~64歳の数値です。25歳~を取るとノルウェーは82%程度の就業率となりますが、日本はそれでも70%に届きません。正規雇用だけでなく、非正規・パートタイムまで含めた就業率です。
もちろん、女性の就業率が高いから良いというわけでもありません。それぞれの国の歴史や背景が有り、税制も違います。正規雇用と非正規・パートタイムの比率も違っています。
暮らしやすさについては、所得と物価を分けて語ることはできません。ニュージーランドを訪れた時は円高が進んでいましたので、総じて日本よりも物価は安く感じました。対してカナダはだいたい日本の1,5倍、円安が一気に進んだ今年のノルウェー取材ではだいたい3倍ほどでした。

このような背景があるという前提の元でも、参考にすべき・見習うべきと思う点をいくつか列挙してみます。

 

人は皆平等であるという前提


日本でも法の下での平等を謳い、自分達では平等意識があると思っています。しかし、北欧やカナダでいう平等とは根本的に違います。外国人と言うだけで色眼鏡で見たり、肌の色や髪の色がが違うからといじめにあう子どももいます。彼の国と比べると、日本が「平等」に対して高い意識を持つ国とは恥ずかしくてとても言えません。先住民や移民、難民と区別しないばかりか、先住民に敬意を払います。間違っても「アイヌはいない」なんて言うことはありえません。

男女平等はもちろん、国籍や民族、肌の色、育った環境……そのようなことで差別するとがあってはなりません。移民や難民を多く受け入れ、幼い頃より平等に関する教育を受けて人を色眼鏡で見るようなことはありません。1人の人間として向き合います。ノルウェーで子育てを所管する省庁はMinistry of Children, Equality and Social Inclusion=こども・平等・社会省 です。省の名前に「平等」が入っているくらいです。取材をノルウェー大使館へ打診した際に、事前資料として送られてきた物には、 Equality 2014 - the Norwegian Government’s gender equality action plan もあり、いかに「平等」について力を注いでいるかがうかがえます。


対して地続きの国境が無い日本では、大陸の民族との争いも少なく、天皇制のもと身分や階級が固定化しました。士農工商を始めとする身分制度や男尊女卑の考え方、あるいは「神国日本」という特別な民族意識など、様々な場面で身分や階級を意識しながら生活してきました。加えて、村や(戦国~江戸時代の)国・藩単位での集団責任体制(五人組や村八分)に始まるグループや組織での連帯責任の意識が染みついているのでしょうか、グループの構成員に迷惑をかけない・かけてはいけないという文化。それだけに自分が所属するグループへの帰属意識が強く、他者をも格付けし仲間以外を排除し差別しようとします。そのような排他的な文化がいじめが無くならない原因の一つなのかもしれません。
政治や組織内での派閥やグループだけでなく、都会のママ友間でも格付けして、階級差別的な関係性ができあがっていると言うくらいですから。 母親同士がいじめをしていたら、子どももまねしてしまいます。

Poverty rates for children and the total population, 2010 (OECD)
日本の子供の貧困率はOECD平均を上まわっています。ニュージーランド・カナダも同様に平均を上まわっていますが、ノルウェーは極めて低い貧困率になっています。北欧の国々は総じて貧困率も低くなっています。

今回のノルウェー取材で印象的だったのは、子どもを社会全体で受け止めようとしているところ。日本人の母親を集めた座談会でも「妊婦やベビーカーを押した母親が地下鉄などに乗ってくると、お年寄りまで立って席を譲ろうとしてくれるので恐縮してしまう」と言っていました。
社会保障(保険)の予算は、給与所得者は所得の7.8%、個人事業主は11%を支出(徴収)しています。年金所得者も4.7%負担しています。個人個人が明確に意識して全体を支えています。雇用主(企業)の負担は地域によってその税率は違い、利益の0~40%です。国家予算総額の35.4%(2012年)と基金の運用益などを加えて全体の社会福祉予算となります。

社会福祉政策で子どもに関わる投資は 産休制度保育園政策職場での柔軟性子どもの医療費の4つになります。

今でこそ女性の社会進出においては世界TOPレベルではありますが、1970年代の女性の就業率は50%にすぎなかったといいます。そして現在、子どもを持つ母親の82%はなんらかの職に就いています。子どもを持つ女性でも働きやすい制度を整備することが重要と考えて取り組んだ結果といいます。


育児休暇取得は当然であり、

育休後は元の職場・ポジションが保証されている


取材をした3つの国で共通していたのは、16時を過ぎると帰宅のラッシュが始まること。定時の終業時刻は17時が一般的なのですが、早く仕事を始めて早く帰るのが普通です。残業するよりも早出、会議は早朝で夕方のプライベートな時間をお互いに大切にしていました。
カナダやノルウェーでは、妊娠・出産・育児がキャリアの障がいにはなりません。出産・育児に関わる事は権利であり社会全体で支えサポートする対象であるという認識。育休後は、元の部署・元のポジション・元の給与で復職することが保証されているから、安心して1年間の育児休暇を取得できます。1年間は育児休暇ということが社会的に共通認識なので、組織運営も社会の仕組みも全てその前提で組み立てられています。

ノルウェーでは、出産前3週間も含め育休期間49週を選ぶと期間中は給与の100%が支給され、59週を選択すると80%が支給されます。そのうえ産後の育休期間は父親と分けて取らなければなりません(クオータ制)。2014年は父親が10週以上取らなければならないのです(2003年は4週だったのが、2012年に12週、2013年は14週、政権交代などで毎年改訂)。1993年は2~3%しかなかった男性の育休取得率が、現在では約90%の取得率になっています。
今回インタビューさせていただいた漁業省のアームンド副大臣は、「要職にあっても、育休でも有休でも取るべきであり、トップが不在でも組織に停滞は有り得ない」と明確におっしゃいました。
 
一方で、政府は育児をサポートするのであって、育児そのものを代替するサービスを提供しているわけではありません。カナダはこどもを預かる保育サービスも充実していますが、保育園での1歳児の保育料は月額10万円以上です。ニュージーランド・ノルウェーは保育園ではなく就学前幼児教育の場という位置づけで、ノルウェーでは一律にbarnehager (英語ではKindergarten)です。1年間は育児休暇が取れるので、0歳児を預かる公立の保育園はありません。社会全体が出産後1年間は育児休暇を取得する前提で動いていると言えます。
因みに、barnehager (Kindergarten)での昼食を用意するのは親の役目で、基本的に弁当を持参です。

日本型の子育て支援は? 

 

取材した子育て先進国では、どの国も子育てに関する政策を担当し、予算措置をする省庁は集約されていました。ニュージーランドは「教育」と言う視点から、カナダは「家庭」のあり方を働く母親の視点から、ノルウェーは「子ども」を真ん中に置いて母親と父親の役割と負担をを平等に考え、それぞれの国の政策や仕組みが整備されているようです。
日本では就学前教育という位置づけで文部科学相が管轄する幼稚園があり、(主に母)親の就業などで保育に欠ける子どもを預かる場として厚生労働省が管轄する保育園があります。来年スタートする子ども子育て新システムについても、認定こども園の助成額を巡って移行取り下げを申し出る園が出ていると言います。そもそも、文部科学相・厚生労働省にまたがったままの制度設計に無理があるとも言えます。

消費税増税で財源確保も必用でしょうが、日本の未来の有るべき姿(働き方・子どもの居場所)を真剣に議論し、その実現には省庁再編をも排除せずに今一度検討して欲しいと切に願います。
ノルウェーでさえも、20年前は父親の育休取得率は今の日本とほとんど変わらなかったのです。

※追記
2017年、フランス取材後に再整理をしましたので合わせてお読みいただければ幸いです。
子育て先進国と日本との違いを整理してみると 2017

ノルウェーの子育て
ニュージーランドの子育て
カナダBC州の子育て


ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。



2014年9月27日土曜日

保育園で0歳児の預かりが無いノルウェー

BLDが「こども・平等・社会省」
ノルウェーの「こども・平等・社会省(BLD)」で、子育て支援策について説明をいただきました。
ノルウェーの社会では、育児休暇を取るのは当然とされています。育休中も給与が保障され、保育園に入れないということもありません(ただし、小学校から大学まで公立学校は無料なのに、保育園は有料です)。そのようなノルウェーで特に興味深かったことが2つありました。それは、

1,パパクォータ制(育休を母親と父親で分け合う制度)は、母親が育児休暇を取得しなければ、父親にも権利が発生しない事。
2,保育園の0歳児預かりは基本的に無い(公立の保育園では預からない)事。保育園に関する様々なデータは、1歳から5歳のものだけです。

この2つのことは、「世界一子育てに優しい国」と言われるノルウェーなのに、「あれ、おかしいんじゃないの?」と思ってしまいます。

しかし、その理由を聞くと納得せざるをえません。

まず、1の父親の育休取得については、子育ては(父子家庭など特殊な状況を除いては)父親と母親が一緒にすることが前提。母親だけ、父親だけでは子育てはできないという考えのもとで決められたようです。
2の、保育園での0歳児預かりが無いことについても、親には1年以上の育児休暇を取得する権利が有り、育休取得中も給与の100%(49週以下取得時)~80%(59週取得時)支給されるため、収入のために保育園に預ける必要が無いということです。平たく言えば、こどもを育てることが親の仕事なので、0歳児の間はきちんと子育てをしなさい。その間も、今まで通り収入を保障しますよ、ということなのです。0歳児の間は親の元で育てることがこどもにとっても一番なので、保育園では1歳になるまではこどもを預かりません。

バスにはベビーカー専用スペースも
家族との生活を確保し楽しむために働くのだから、家族との時間が第一です。育休取得後の職場復帰も確約されていれば子育てに専念できますから、育休を短期にして無理に保育園にこどもを預ける必用もなければ意味もありません。

翻って、そもそも日本では出産を機に退職する女性が多いので、育児休暇の取得者数も保育園への入所希望も0歳児では母数が限られます。それでも0歳児の待機児童が話題になります。母親はもっと子どもといっしょに過ごしていたくても、早く復帰しないと職場を追われるからです。自分の居場所が無くなる不安から、早い職場復帰を望むのです。しかし一方で、0歳児保育には、こども1人あたりの保育士の数も他の年齢よりも多く必用(1・2歳児の倍、3歳児~の約7倍)で非効率です。逆に言えば、0歳児の保育預かりをしなければ、他の年齢のこどもをもっと多く預かれます。

しっかりと1年間の育休を取得し、社会復帰させる仕組みは、実は様々な視点からも効率的な社会と言えます。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年9月26日金曜日

家族が大事という共通認識と、その実行-ノルウェーに見るFamily Firstな働き方

子育て先進国の筆頭と言われるノルウェーに、取材に来ています。
ひととおりの日程を消化し、明日には帰国の途に着きますが、今回の取材で一番心に残ったことを帰国前に認めておきます。

Family First は社会・職場の共通認識


ノルウェーの一般的な労働時間は、1日7.5時間。その間には30分以上の昼休みを取ることが義務づけられているために、実拘束時間は8時間となります。通常なら、9時スタート17時終業。仮に昼休みを1時間取れば、更に30分伸びることになります。
日本ならば、朝は全員揃ったところで朝礼から始まり、17時の終業後も残業で、20時21時は当たり前という会社も珍しくないでしょう。しかも、当然のように会議は17時以降も。しかし、ノルウェーの一般的な企業で拘束されるのは8時間の就業時間だけ。早く帰りたい人はその分早く来て仕事を始めれば早く帰れるのです。みんなで朝礼なんかはありません。昼休みの30分でさえも長いくらいという人もいます。17時以降の会議なんかはもってのほかです。会議は家族との時間を奪うことになるからです。ノルウェーの人にとっては、仕事よりも家族が大切なのです。だから、家族のために仕事の仕方や仕組みをどんどん変えていきます。
取材初日のこども・平等省での取材は9:30からでしたが、私たちのインタビューのために押さえられていた会議室ではまだ前のミーティングが続いていました。会議室の外に表示されている予約時間は8:00~9:30でした。

朝7時の宿泊ホテル前のオフィスビル
早く帰りたい人はその分早く出社します。15時に会社を出たい人は7時から仕事をスタートします。その結果、現在のオスロでは朝の通勤ラッシュ(といっても日本の比ではありません)は8時前、帰宅ラッシュは16時前後です。たまたまホテルの前がオフィスビルでしたが、朝の5:30には最初の明かりが灯り、7時にはほぼ全フロアの電気が点いて仕事をする人が居ました。office worker なら17時に家に居るのは当たり前とのことです。16時前後、保育園や小学校の周囲は、お迎えのパパやママの車でいっぱいになります。

要職にあっても、育休でも有休でも取るべき

トップが不在でも組織に停滞は有り得ない


漁業省のアームンド副大臣にも、ご自身の子育てについて話しを聞くことができました。
「家族との時間を取るために14時にオフィスを出る(それだけ早く登庁する)ことなどは良くあります。育休を取るのは当たり前。仮に4年間の任期でその期間家族との時間を犠牲にし、こどもの成長に関わる事ができないなんていうことになったら、そんな不幸なことはありません。組織では誰かが代わりを務められますが、家族では代わりはききません。組織というものは、誰かが欠けてもきちんと機能するように作られています。そもそも、職員や大臣が育休を取ったとして、その間に組織運営が停滞したりトラブルが発生するようだったら、それは不完全な組織です。
今では、スマホやe-mailなどでどこにいても連絡は取れるし、サテライトで仕事もできます。早く帰宅しても、問題が起こるようなことはほとんどありません」。
と話しながら、スマホで週末に撮ったお子さんの写真を嬉しそうに見せていただきました。

日本では、自治体の首長がたった3日の育休を取るだけでも大騒ぎします。
頭の硬いお役人や、行政に厳しい目を向ける国民にとっても、傾聴に値する話しではないでしょうか。 

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年9月22日月曜日

ITオンチと言ってはいられない、ソーシャルメディアの力を実感できる映画 CHEF

ANAビデオプログラム「SKY CHANNEL」より
子育て先進国、ノルウェー取材へ向かう機内で、思いもかけず面白い映画に出会いました。題名は「CHEF」。「アイアンマン」を手がけたジョン・ファヴロー監督・主演の映画です。
レストランの雇われシェフのカール・キャスパーが、保守的なオーナーの指示に逆らえずに出した料理を評論家(有名ブロガー)にネット(Twitter)上で酷評されるところから物語はスタートします。
カールはTwitterなんて触ったこともないので、そんなことは知りません。しかし周囲はみんな知っています。そこで、10歳の小学生の息子にアカウントを作成してもらい、初めてその状況を知ることになります。
アカウントを作って初めてのTweetが評論家への挑戦状。カールはダイレクトメールを送ったつもりが、2万人を超える評論家のフォロワーもそのTweetを目にすることになります。ネット上で話題(いわゆる炎上)となり、成り行きで評論家と対決する事になってしまいます。しかし、再び保守的なオーナーの邪魔で料理を作らせて貰えず、直接対決は不成立。そのために評論家が再び酷評するTwitterにカールが怒って店に乱入。店内で繰り広げられるリアルな口論を、まわりの客が写真に撮ったり動画に記録したりします。その様子はYouTubeにアップされ、誰もが知るところとなってカールは店を去るのです。

ここは映画の評論をする場ではないので、ストーリーについてはこのくらいにして本題に。

この映画では、ソーシャルメディアのリスクとメリットが様々な形で取り上げられています。Twitterでの炎上だけでなく、一度アップされた書き込みやYouTubeの動画は削除することはほぼ不可能で、限りなく拡散され残るというソーシャルメディアのリスクがわかりやすく表現されています。ソーシャルメディアの暗黒面で職を失ったカールですが、息子が日々アップするTweetにより人気を取り戻し復活することができます。重要なのは「狙わないこと」だと教えてくれます。
ステマ(レビューやブログで、関係者が一般人を装って持ち上げるステルスマーケティング)はすぐに見破られますし、その代償は計り知れません。誹謗や中傷、法令違反を含まない自然体でナチュラルな発言が好感を持たれ、支持されるという良いモデルを示しています。

もう一つ見逃してはならないのが、カールの息子が小学生であるにもかかわらず自転車を操るかのごとくにスマホを活用していること。デジタルネイティブのこども達にとっては、ソーシャルメディアは私たちの世代にとってのテレビやラジオ・新聞よりも空気のような存在になっています。日本ではまだ馴染みのないVINEまで登場します。

この映画を見ると、ソーシャルメディアのリスクだけでなく活用法も良く理解できるでしょう。残念ながら、現時点では日本での公開は未定のようですが、ITやソーシャルメディアが苦手だという経営者や広報担当者にはオススメの映画です。

2014年9月3日水曜日

オムツ替えOK!子育て支援に乗り出すタクシー業界

9月から、いろいろと新しい事がスタートしています。
その中で一つ、小さいながらも注目すべきニュースに出会いました。苫小牧民報社の記事で、「車内でおむつ替えOK えにわっこ応援タクシー発車」という北海道恵庭市の取組です。記事によりますと、
子育て家庭にタクシーを気軽に利用してもらおうと、車内でのおむつ替えなどに快く応じる。自治体とタクシー事業者が協力する道内初のケースと言い、原田裕市長は「子育て世代を応援したい」と強調している。
中略
応援の内容は▽乳幼児連れの外出サポート▽塾などへの送迎(小学生以上)▽車内でのおむつ替え▽車内で絵本や折り紙などの貸し出し▽運転中の優しい声掛け―などソフト事業で、運賃は通常通りで特別な費用は掛からない。
とのことです。
恥ずかしながら、恵庭市が何処にあるのか全く知らなかったので、早速調べました。札幌と苫小牧の中間。新千歳空港と札幌の間に位置する市でした。福岡で言えば春日市のような位置づけなのでしょう。

自治体とタクシー業界が手を組む子育て支援


道内初という表記が気になったので、このような行政とタクシー業界との取組が他には無いかと調べたら、山形県村山市で、「村山市ファミリーサポートタクシー利用助成事業」というのを見つけました。
市が指定するタクシー事業者がファミリーサポートタクシーを運行し、条件を満たした利用者にはその利用料の一部を助成するというものです。
介護・福祉のタクシー利用への助成は多くの自治体で既に実施していますが、子育てのサポートはなかなか見つけられませんでした。しかし、このような取組は増えているのかもしれません。

一方、タクシー業界では、子育てや介護を支援する取組が広がっています。
全国組織では、一般社団法人子育てタクシー協会に加盟したタクシー会社が運行する「子育てタクシー」。続いて第一タクシーグループの「ママサポートタクシー」
東京では京王自動車が「はぴママサポートタクシー」を運行していますし、福岡市では大稲自動車が「プレママタクシー」「こどもタクシー」を運行しています。
他にも、ローカルなタクシー事業者が独自のサービスを展開しています。

最近は、各自治体で子育て支援策をさまざまに導入し、いろいろと新しい取組がなされています。その結果として、若い家族が移り住んで人口減少に歯止めがかかったという例も出てきました。
恵庭市や村山市のように、行政が(タクシー業界など)民間の取組を支援し、行政サービスの一部に取り込んでしまうのも一つの方法だと思われます。


しかし、自治体にしてもタクシー業界にしても、このような取組が広く認知されていない(あるいはあえてしていない)のも実情のようです。

私はビジネスで利用するタクシーも、このような取組をしている会社のタクシーを指名・利用しようと思ってしまいました。こういう取組もreputasion向上に繋がるはずです。


2014年8月30日土曜日

たかの友梨社長の言動に見る、創業社長・ワンマン社長が起こしやすい過ち

-(新聞社の記事はいずれ削除されるので、ハフィントンポストの朝日新聞記事にリンク)

8月28日、大手エステティックサロン「たかの友梨ビューティクリニック」の従業員の女性が、残業代の未払いなどを労働基準監督署に通報したことで、社長から従業員の前で詰問されたとして、厚生労働省に公益通報者保護の申し立てを行い、労働組合が不当労働行為の救済申し立てと会見を行いました。

毎日新聞によると、
エステサロン大手「たかの友梨ビューティクリニック」を経営している「不二ビューティ」(本社・東京都渋谷区)が給料から違法な天引きをしているなどと労 働基準監督署に内部通報したところ、長時間の詰問など精神的な圧迫を受けたとして、仙台市内の店に勤務していた宮城県の女性社員が28日、厚生労働省に公益通報者保護の申告をした。加入する「エステ・ユニオン」も宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。
 とあります。朝日新聞では少し違います。
「たかの友梨ビューティクリニック」を経営する「不二ビューティ」(東京)の従業員が加入するブラック企業対策ユニオンは28日、同社の高野友梨社長(66)から、組合活動をしていることを理由にパワーハラスメントを受けたとして、宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。
組合活動に対するパワハラに対しての申し立てのみを取り上げています。

今回の報道では、注目すべきポイントが2つあります。

1,内部告発と、公益通報者保護法

まず、女性従業員が厚生労働省に公益通報者保護の申し立てを行ったという点。
公益通報者保護の申し立てをするということは、内部告発が行われたと言うことです。内部告発を行った女性従業員に対して、会社が不当な扱いをしたことは公益通報者保護法違反にあたります。毎日新聞やNHKを始めとする多くのメディアはではこのことを報じています。
不二ビューティ(少なくとも高野社長)は、公益通報者保護法の存在を知らなかったか理解していなかったと思われます。
※何故だか朝日新聞の記事では公益通報者保護の記述は見当たりません(2014年8月29日05時00分配信記事)。

2,労働組合の存在と申し立て

厚生労働省に公益通報者保護の申し立てを行ったのは、内部告発をした本人です。一方、労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てたのは本人ではなく、労働組合です。労働組合も、メディアによって「エステ・ユニオン」であったり「ブラック企業対策ユニオン」であったりと2つの名前が出ていますがいずれにしても労働組合が申し立てを行ったことは間違いありません。
社内に労働組合が組織されていなくても、業界で組織する労働組合など労働者の加入先は存在します。経営者は、不当労働行為に対する駆け込み先・相談先は社外にもあるということを知っておくべきです。

オーナー経営者の陥りがちな罠

オーナー経営者は、会社は自分の物であり、従業員も自分の言いなりになるものだという意識の方が少なくありません。今回報じられている、高野社長が展開した持論はまさにそんな意識を背景にしたものと言えます。

今回の内部告発は、いわば正当派の告発ですが、最近は従業員によるSNSでの告発や不適切な投稿も形を変えた内部告発と言えます。会社や従業員を私物化したり不当な行為をしていると、すぐに告発される時代になったと言うことを肝に銘じて、自分の会社を振り返ってみましょう。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年8月16日土曜日

木曽路の牛肉偽装、補償は現金にするも差額分だけ

しゃぶしゃぶ店などを全国展開する木曽路は14日、北新地店(大阪市)など3店で、松阪牛などの銘柄牛を使用するメニューについて、ブランド牛ではない安価な和牛を使った料理を提供していたと発表しました。提供数は3店合計で2012年4月以降、7171食にのぼり、料理長らが材料費を削るために偽装を続けていたことが、社内調査で確認されたといいます。

メニュー表示と異なった食材を使用していたことに関するお詫びとお知らせ

今回の木曽路の発表も、昨年一連のホテルレストランの不適切・偽装表示やこれまでの食品不祥事に何も学んでいないと言えます。

朝日新聞によると、
 北新地店に7月、大阪市消費者センターなどの立ち入り調査があり、偽装の疑いが浮上。これを受けて、全118店舗を対象に、12年4月以降の仕入れ数量と販売数量などを調べたところ、3店舗で偽装が確認された。
とあります。まず、今年7月の立ち入り検査の時点で最悪のケースを想定しなければなりません。社内調査と併行して発表のタイミングや内容・補償などについても検討を始めたでしょう。少なくとも半月以上の日数が経過しています。その間、十分な議論と準備をして14日の発表を迎えたはずです。しかし、松原社長の謝罪会見は翌15日となり、14日に発表した補償内容を修正しました。
14日の発表時には、当該メニューを食べたお客様に対しては、予約記録やレシートなどで確認できれば差額分を食事券などで補償するという内容でした。しかし15日、社長が出席する謝罪会見で、一転して現金で補償すると発表しました。お客様からすれば、「差額だけ補償?」という声も聞こえてきそうです。
しかも、謝罪会見の席で社長は(こんな場で言うのもなんですがと前置きをした上で)「木曽路の肉は上等なので、味にそう差は無い」 という発言まで飛び出しました。

7月の立ち入り検査のきっかけについては何も発表されていませんが、内部告発であることは間違いないでしょう。偽装をしたのは料理長だとしていますが、毎月の商品別売上と仕入れ原価を店舗毎で管理しているのであれば、すくなくとも店長は気がつくはずです。むしろ、店長が自店の利益を水増しするために指示していた可能性すら否定できません。さらには、それを本部が見て見ぬふりをしていたかもしれません。そうでなければ、内部告発に至ることは希です。

最初の発表では社長が同席せず、後日社長が改めて会見をしたといえば、そう、昨年の阪急阪神ホテルズの会見と全く同じです。

阪急阪神ホテルズ 出崎社長遅すぎる会見 偽装を否定し誤表示と強調

しかも、阪急阪神ホテルズの出先社長と同様、松原社長は言わなくてもいい「言い訳」を口にし、会社ぐるみの関与を否定しました。株価も同様に大きく下げました。阪急阪神ホテルズと同じ轍を踏んだとしたら次は社長の辞任会見になるのでしょうか。

東証・名証1部上場企業でありながら、木曽路もコンプライアンス・広報についての認識が甘いうえに、お客様に再び嫌な思いをさせていることに気がついていません。
1人前7000円の松阪牛を注文するお客様が、1500円の差額をわざわざ請求するでしょうか?接待で会社の経費で処理していたら?全額返金であれば別ですが、大人数で食事して、返金額が大きな金額になるような人でなければなかなか請求しないでしょう。そして多くは請求をせず、裏切られた思いだけを記憶に留めて離れていくのでしょう。
サイゼリアでは、単価は安かったとはいえレシートが無くても自己申告で返金に応じました。
こんなところからも、お客様への姿勢の差が見事に見えてしまいます。

松阪牛 松阪牛みや川さんのホームページより拝借いたしました

木曽路の返金額を計算してみると、
差額1,500円×7,000食=10,500,000
約1000万円余分に貰っていたのでその分だけ返金しますと。 
しかし、全額返金しても、7000円×7000食で4900万円。しかも、これは全員が返金請求した場合。予約記録やレシートがなければ返金されないので、実際には半分も請求があるとは思えません。全額返金でも、2000万円にも届かないでしょう。
売上高 457億2,100万円(平成26年3月期)の企業にあって、この額をケチった!という印象が残ってしまいました。
7000円の料理を注文するお客様は、木曽路にとっても上顧客だったはずです。全額返金だけでなく、なお「プラスの何か」を考えて、改めて木曽路ファンにするくらいのことを考えるべきです。

クライシスに際しての対応次第で、会社の評判を地に落とすこともあれば、ジャパネットたかたの時のように信頼に繋げるきっかけとなることもあります。しかし残念ながら、最近の記者発表・クライシス対応ではますます会社の評判を落とすことばかりなのが残念です。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年8月14日木曜日

スマホ対応が必用なのはECサイトだけでない

7月29日、ニールセンから”スマホからのオークション/フリマサービス利用者数は約2,000万人に成長”というニュースリリースが配信されました。

- スマホからのオークション/フリマ利用者数は1年間で2倍に成長し、約2,000万人に
- PC、スマホ共に、Yahoo! オークションが一番人気
- オークション/フリマサービスはPCでは35歳以上男性、スマホでは34歳以下女性が牽引


という内容です(以上、図と共にリリースより引用)。

このリリースは、オークションやフリーマーケットの利用に関してのみ切り出した数字としていますが、この傾向-アクセスの端末がPCからスマホへ-はECサイトだけでなく、インターネットへのアクセス全体に言えることです。

当社でも、育児のポータルサイト【こそだて】を運用していますが、直近1か月のアクセスの約8割はモバイル(約4%のタブレット含む)からです。【こそだて】の利用者は30代前半を中心とする子育て中の女性(9割以上)。ニールセンのリリースでも指摘していますが、スマートフォン利用者のうち女性若年層が大きなウェイトを占めるのであれば、子育て中の女性の生活スタイルを想像するとこの結果(アクセスの8割がスマホ)は想像に難くありません。働いている女性でも、職場を離れれば一番身近なネットに繋がるデバイスはスマートフォンでしょうから、プライベートなネット端末は間違いなくスマホです。
【こそだて】ほどではないにしても、当社がコンサルや運用管理をさせていただいているクライアント様のサイトでも、ECサイトに限らずスマホの比率はどんどん上昇しています。ここで個別のデータを開示することはできませんが、メインのターゲットが女性のサイトでは、年齢層を問わずスマホの比率が5割を超えています。PCがモバイルを超えているのは限られたB2Bサイトなどごく少数です。

また、モバイルアクセスの過半数がiOS(iPhone・iPad)であることも多いです。iPhone、iPad では標準ブラウザでFLASH動画が再生されません。ホームページのTopページやメニューにFLASHを使っているサイトはいまでも多く見かけますが、期待通りに表示されていない事も多いのです。サイト制作会社から「カッコイイですよ」と薦められて、高いお金を払ってFLASH動画を導入した会社もあるのではないでしょうか。今ではそれがあだになっている可能性もあるのです。
このような環境変化が進んでいるにも関わらず、スマホ対応どころか10年前に作ったままのようなホームページのところも多く見かけます。今時のビジネスでは事前の情報収集にネットは欠かせません。それなのに、会社の名前で検索しても出てこない、出てきても内容がわからないでは話になりません。
サイトを見ている人の環境変化についていけないと、知らない間に取り残されることになるのです。

※当社のサイトについては、紺屋の白袴と笑ってお許しください。クライアント様や【こそだて】の対応に追われて後回しになっています。近いうちにリニュアル予定です。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年8月10日日曜日

ベネッセ原田社長が犯した、石原環境相と同じ過ち

7月22日:お客様情報流出に便乗した不審な電話や勧誘へのご注意のお願い

ベネッセは、上記の注意喚起の案内をホームページに掲載しました。詐欺(まがい)の電話がかかってきたと、ベネッセや国民生活センターに問い合わせが来ているとのことです。しかし、個人情報が流出した個別の家庭への連絡は行っていないようです(少なくとも、情報流出に関するお詫びの封書が届いた我が家には、その後何も来ていません)。
我が家に届いたお詫びの封書
このような詐欺(あるいは詐欺まがい)の電話がかかってくるのは、個人情報を漏洩したことがそもそもの原因ではありますが、原田社長(あるいはベネッセが)もう一つ大きな過ちを犯したからだと私は考えます。それは、7月17日に表明したお詫び対応です。

情報が流出した顧客へのお詫び対応として200億円の原資を準備し、「誠実に対応する」と発表しましたが、200億円という数字を示すべきではなかったと考えます。確かに、200億円を2000万人で分ければ1000円ですし、全額が分配される訳ではありません。一人あたりにすれば過去の例と同じく500円程度に落ち着くのでしょう。しかし、普通の人にとっては200億円という金額は実感を伴わないとてつもなく大きな額で、何か自分にもしてくれるのだろうと淡い期待を持つ人もいるでしょう。そんな人をターゲットとして詐欺師は新たなシナリオを作り上げ、早速流出リストを手に入れ、行動に出たのです。どんなトークで電話を掛けてきているのかはわかりませんが、電話の中で「ベネッセ」「個人情報を漏洩」「200億円の原資をもとに」とか言っているのは想像がつきます。200億円という具体的な数字を出したことによって、犯罪者に新たな材料を提供してしまったのです。
そしてもう一つ、世間に「お金で解決しようとしている」というイメージを与えてしまったことです。石原環境相の「金目」発言と同じです。

日本人は、お礼やお詫びなどの姿勢・気持ちを現す時には、心と形式を大切にします。 金額や物に置き換えるのは最後の最後です。その順番を逆にしたことで、印象は相当に悪くなったのではないでしょうか。残念でなりません。

2014年7月16日水曜日

地方議会だけじゃない、組織に住む魔物と会議を支配する空気

ここのところ、地方議会でのセクハラ野次や議員の不適切な政務調査/活動費の処理、それに続く記者会見などがマスコミを賑わせています。誰の目にも、「こんなのは氷山の一角」と映っているでしょう。エディーマーフィー主演の映画「ホワイトハウス狂想曲」でも、その一角が描かれていました。

私の身近にも、政治家を志す者、政治家になった者が多くいます。政治家と言っても、行政の長を目指す者と議員を目指す人とでは随分違うのかもしれません。首長は極端な事を言えば独裁者にもなれます。全ての責任を負う覚悟の元で、理想を掲げそこに向かってあらゆる組織や議会、有権者を説得し、同じ方向に向かうパワーが求められます。
一方、議員は議会という組織の構成員です。議会は多数決で物事が決する世界ですから、政党や会派といったグループの結束力や多数派工作が重要になります。選挙は無所属で戦い支援者のおかげで無事に当選しても、 議会の中では一人だけで孤立してしまうと数の力に屈するほかありません。そして、無所属で当選した議員も、多くはやがて政党や会派に属し、組織の一員となってしまいます。

組織には魔物が住んでいる


「無所属だった新人の頃は」、とか会社でも「若かった頃は」元気でバイタリティがあったのにという言葉をよく聞きます。組織の中で自己主張したりぶつかったりしていうるちに抑えつけられ、角が丸くなるということはよくあること。ある政治家も言っていました。
「組織には魔物が住んでいる」と。
組織の一員としての役割や振る舞い、発言を求められ期待されるようになると、それに応えよう、あるいは組織の中での地位と役割を守ろうという意識が働き始めます。それが自分の本来の考えとは違っていて自分の中での整合性がとれなくなった時にどちらに振れるか。多くは組織の中での安定を選んで悶々としながらも、その役割を全うしようとします。
組織や会議には、目には見えないけれど明らかに存在する「空気」があります。組織の魔物は空気という形でプレッシャーをかけてきます。ある意味集団心理、全体でテンションが上がる、あるいは逆に重くなる空気が支配します。その空気の中でふるまおうとするのです。
セクハラ発言を擁護するつもりも毛頭無いですが、その「空気に支配された勢い」が冷静に考えれば発してはいけない言葉を吐かせたのではないかと考えるのです。
会議の場ではなく議場に入る前から、その空気は支配しています。組織の構成員との雑談やあるいは飲みの席でも、日常でそのような(セクハラを始めとした不適切)発言があり、それを誰も指摘したりたしなめたりしないし、できないのでしょう。日常そのままの空気が議会での野次に繋がったのではないでしょうか。
セクハラ野次は一人の議員が謝罪したことで幕引きを謀ろうとしていますが、実際には政党や会派の全員が同じ発言をする可能性があると考える方が普通です。

セクハラ野次に関しては、朝日新聞の記事「マタハラ議会じゃ産めない(考 民主主義はいま)」でもあるように、議会そのものが徹底的に男性社会を前提に成り立っているために、女性に対しての扱いや認識が対等ではないということです。
Action plan Equality 2014

9月にノルウェーに子育て事情を取材に行く予定です。そこで、ノルウェー大使館から多くの資料が送られてきました。 その中の一つが 「Action plan Equality 2014」。
あらゆる面で平等を徹底するためのアクションプランです。日本でも、憲法第14条で法の下での平等を謳っていますが、これほど徹底していません。ノルウェーでは、恐らく差別的な発言や扱いは徹底して排除される空気があるのでしょう(まだ行っていないので想像ですが)。しかし、日本では逆に男女格差が普通だという空気が、いろいろなところを支配しているのです。

兵庫県議会の野々村議員の政務調査/活動費不正使用疑惑では、ほかの議員にも同様の疑惑が広まりつつあります。これも、不正に使用するのが当たり前だという空気が、一部に広がっていて、お互いに見て見ぬふりをしていたのではないかと思えてきます。兵庫県だけでなく、各自治体のオンブズマンが一斉に調査に動き出すのではないでしょうか。

議会だけでなく、みなさんが所属する企業(特に歴史のある大きな会社)、組織についても、同じような空気が支配していませんか?
きっと、政治家も会社員も、一人一人はもともとはまじめで良い人なんです。でも、そのまじめな人さえも変えてしまう空気を排除しない限り、次々と魔物に取り込まれてしまうのです。その空気を変えるのは人なのでしょうか、仕組みやルールなのでしょうか?

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年7月12日土曜日

ベネッセコーポレーションで働く皆さんへ。

ベネッセコーポレーション(以下ベネッセ)は7月9日、760万件の顧客情報が外部に漏洩したことを確認したと発表しました。さらに漏洩は、最大で約2070万件に増える可能性があるとしています。
お客様情報の漏えいについてお詫びとご説明

この発表を受けて、TwitterやSNSではジャストシステムのスマイルゼミからベネッセにしか登録していない情報でDMが届いたなどの書き込みも広がりました。報道では、ベネッセの関連会社「シンフォーム」から持ち出された顧客情報が、複数の業者を経て「文献社」にわたり、その名簿を購入したジャストシステムがDMを発送したことで発覚したという流れのようです。
それに対してジャストシステム、はホームページで反論のコメントを出しています。
本日の一部報道につきまして
しかし、その後の報道や社内調査の後、改めて以下の発表をしています。
ベネッセコーポレーションの個人情報漏洩の件に対する当社の対応につきまして

今後、他でも名簿を購入した企業の名前が出たり、そもそもデータを持ち出した犯人に関する報道も続くことは容易に想像がつきます。
そして、その都度ベネッセの顧客会員は不安になり、問い合わせをするのでしょう。その点、会員と直接コミュニケーションが取れる、ある意味通販会社のような立ち位置なので、窓口の一本化はしやすいといえます。しかし、2000万人以上の顧客からの問い合わせに対応できる窓口、体制は準備できているでしょうか?単に数の問題ではなく、誰が電話に出ても同じ受け答えができるかが重要となります。下手をすれば,この対応で更なる混乱や不審感に繋がりかねません。


リクルート事件で感じた思い

育児情報誌mikuは、3年半前にベネッセコーポレーションより事業譲渡を受けて今に至っていますし、mikuにかかわっていた方やリクルートのOBも多くいる会社です。この事件の報道に接すると、ベネッセで働く皆さんに気持ちがいってしまいます。
しばらくはテレビや新聞、週刊誌、あるいはNet上では「ベネッセ」の名前が飛び交い、お客様や知人からも様々に声を掛けられるでしょう。自分は直接の当事者ではなくても、第三者から見れば同じです。そうやって問い詰められたり、質問攻めにあったり、陰口を耳にしたり。外部の犯罪者のせいでどうして自分達が責められなければならないのか?とも考えます。

リクルート事件でも、当初は同じような思いをしました。株の売買がどうして責められることなのか?と理解できない者も多かったくらいです。そして、会社ではなく「社内報かもめ」を中心として全従業員が客観的な視点で事件に向き合いました。

事実は何なのか?
何がいけないのか?
何が間違っていたのか?
自分達が今携わっている仕事は間違っていたのか?

自分達は何をするべきなのか?

そして、2つの結論にたどりつきました。それは、

1,関与したのは極限られた一部の人間であっても、世間の一般常識ではやってはならないことを、リクルートという看板が関与して行われたという事実。これは会社として全体で、そして従業員一人一人が重く受け止めなければならない。
2,しかしリクルートが提供している商品・サービスは、事件とは分けて考えなければならない。お客様にも読者・利用者にも喜ばれるサービスを提供している。その点については自信と誇りを持つべきだ。

仕事に関しては卑屈になる必要は無い。リクルートというブランドは傷ついたけれど、商品に傷はついていないんだと自らに言い聞かせ、襟を正してお客様のために精一杯の仕事をする。それが信頼回復へ向けて自分達にできる唯一のことだという結論にです。そして苦難を乗り越えたリクルートは今に至っています。


今回のベネッセの個人情報漏洩も、事件に関与した人間が内部の者か外部の者かということよりも、個人情報が外部に漏洩したという事実が会員さんにとっては問題です。外部の人間が持ちだした事件だと考えると、自分達も被害者だという意識にもなりがちです。解決すべき事は明確である一方、会員情報管理に携わる部署以外の人は、他人事になりかねません。
今、これから何をするべきなのか?をそれぞれが考え、実行に移すことが重要です。決して指示を待つのではなく、自ら考えて行動することが。
ひょっとすると、現場の若い人は「自分には関係ない話」と、何も感じてなかったりするのでしょうか?そうでないことを願うばかりです。


※発表までの経緯と問い合わせ窓口は、こちらのニュースリリース(PDF)にまとめてあります。
ベネッセコーポレーションにおける個人情報漏えいに関するお知らせとお詫び(お問い合わせ窓口のご案内)
そして、すでにソーシャル上ではこのような整理されたページもできています。
ベネッセの情報漏えいをまとめてみた。Add Star

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年6月11日水曜日

ルーズヴェルトゲームのような機密情報漏洩は抑止できるか?

日曜夜9時のTBSドラマ、「ルーズヴェルトゲーム」は「半沢直樹」と同じ池井戸潤氏の原作による連続ドラマ。福岡ドームでお世話になっていた工藤公康氏の息子さんが、準主役で出演していることもあり毎週楽しみに見ています。
このルーズヴェルトゲームでは、青島製作所の独自のイメージセンサー技術を、イツワ電器が不正に手に入れ窮地に追い込まれるという場面がありました。近年、国内だけでなく海外のメーカーとの間でこのようなことが頻繁に起こっているようです。
そこで、政府は7日、企業の技術情報など「営業秘密」が海外に不正に持ち出されるのを防ぐため、秘密漏えいに対する罰則を強化する方針を固めた(毎日新聞6月7日記事より)とのことです。
毎日新聞 2014年06月07日記事より
毎日新聞によると
「営業秘密が不正に海外に持ち出される事件が相次いでいることを受けた措置で、秘密を流出させた社員への罰金を引き上げるほか、罪の規定を企業からの告訴がなくても捜査機関が検挙できる「非親告罪」に改める。
営業秘密を流出させた社員などへの罰金の最高額を現在の1000万円から数倍に引き上げるほか、情報を手に入れて不正な利益を得た法人への罰金も現在の最高3億円から引き上げる。また、現在は、被害企業の告訴が必要な「親告罪」となっている不正競争防止法違反の規定を、被害企業の告訴を必要としない「非親告罪」とする方向で検討」
ということです。

これまでの1000万円以下の罰金であれば、迎え入れる企業が「罰金支払いを想定した高額報酬」や「もしもの場合は罰金を肩代わりする」という条件を提示することもあり、この程度の罰金では抑止に繋がらないとの指定を受けて罰則強化に至ったようです。

ルーズヴェルトゲームのイツワ電器は、どのくらいの報酬を用意して技術者を引き抜いたのでしょう?ドラマの中では明らかにされていませんが、この改正が現実になれば少なくとも流出させた社員にとっては大変な負担になるために抑止力にはなるでしょう。当然、公になれば社会からも冷たい視線を覚悟しなければなりません。一方、海外の企業だと、法人に対しての罰金はのらりくらりと逃げ回ったり支払わずにそのまま海外へということも有るかもしれませんから、彼の国の企業にとってどのくらいの抑止力になるかは不明ですが。

また、転職者を受け入れる際にも、意図せず(あるいはそれが条件ではなくとも期待して)前職場の秘密情報を手に入れそれを利用した場合、それが後に「漏洩」と認定されることも考えられます。非親告罪ですので、ある日突然罪に問われる事もあり得るのです。

いずれにしても、優秀な技術や人材をつなぎ止めておけるだけの企業の魅力と待遇・報酬と結束が求められるということですね。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年6月10日火曜日

ネットでの個人的感想に企業はどこまで責任を負うか

リクルートの同期入社で、カーセンサー編集部でも一緒だった永江一石氏(付き合いが永く、今更「永江氏」でもないのですが、あえて「氏」と書かせていただきます)が、Yahoo!ニュース個人のオーサーを降りたことでネット上で騒ぎになっています。

ソーシャルは難しい。わたしはこれでYahoo!個人に投稿するのをやめることにしました

事の顛末は「Yahoo!Japan佐野岳人氏によるYahoo!ニュース・オーサーの永江一石氏へのコメントについて」(同じくYahoo!ニュース個人 片岡英彦氏の記事)に詳しく説明してあるのでこの場では割愛させていただくとして、この一件は企業/組織人のソーシャルメディアの利用・発信について、まさに「一石」を投じることになりました。

組織人の「個人」としてのソーシャルメディアでの発信が問題になったと言えば、昨年9月、経済産業省の50代男性キャリア職員が自身の匿名ブログに「復興は不要だ」という書き込みや周囲への誹謗中傷など不適切な書き込みを繰り返し行っていたとして懲戒処分を受けたことを思い出します。
「ソーシャルメディアでの「不祥事」を未然に防ぐ、一つのヒント」

このときも、匿名だと自分の素性は突き止められないから安心という気持ちがあったのでしょうが、今やブログ、Facebook、Twitterその他のSNSでの発言と行動をプロファイリング・分析すれば、いずれ誰だかは突き止められてしまいます。そもそも、犯罪を犯すために匿名でSNSをやっている訳ではないのですから、どこかに隙や証拠が残されているものです。
今回の永江氏の一件も、Yahoo!JAPANの現役社員である佐野氏がFacebook上でコメントしたことから始まったようです。佐野氏は単に「個人的な」感想を書き込んだだけだったのかもしれません。しかし、Facebookは原則実名でアカウントを取得し、プロフィールなどを登録します。佐野氏はプロフィールの基本データを「公開」にしています。佐野氏の「しょーもない」というコメントに対して永江氏はフォロワーである佐野氏のプロフィールを確認したところ、原稿を依頼されているYahoo!JAPAN社の現役社員だったことから立腹したということのようです。

Net上では、それぞれの側に立って賛同や擁護、あるいは批判が飛び交っています。
整理すると、話題になっているポイントは

1,佐野氏のコメントはいくら「個人的」とはいえ、原稿を依頼している会社に属している。
  ステークホルダーの一人として他のステークホルダーへの配慮が欠けている。
2,永江氏は個人的なコメントに対して過敏に過ぎないか。他にも何か理由があるのではないか。
  (Yahoo!ニュース個人のオーサーをやめる、一つのきっかけに過ぎないのでは)
3,単なる感想を述べるのに所属する会社まで紐付けられて批判されるのはおかしい。
4,この顛末に対して、Yahoo!JAPANはどのような対応をするのか?

といったところでしょうか。

●今後の興味は所属組織(Yahoo!JAPAN社)の対応に


既に、Yahoo!ニュースへの投稿は終了宣言が出されたので、今後何かの進展があるとは思えません。ただし、佐野氏が所属するYahoo!JAPAN社の対応には注目が集まるでしょう。
今回の一件では記事やブログを通して、Yahoo!ニュース個人の原稿を書いているのはどのような人なのか、謝礼はどのくらいなのか、記事はどのくらい読まれているのかなど、 Yahoo!にとってはあまり触れられたくないようなことまで知られることとなってしまいました(永江氏がそれを意図した訳ではなく)。そういういう意味では、会社にとっても大きな問題と捉えている可能性は高いでしょう。 こうやって注目され話題になっている以上、社内でも何らかの対応は検討されているはずです。

「ネットの炎上投稿、企業はどう対処すべきか」でも一度言及しましたが、アルバイトの悪ふざけ同様、従業員の言動が企業経営やブランドに大きなインパクトを与えるリスク(場合によってはメリット)はこれから益々増大していきます。公開されたSNSだけでなく、LINEのような新たなコミュニケーションツールでの拡散もこれからは注意しなければなりません。
FacebookやTwitterを管理する担当者の不用意なコメントやTweetが物議を醸すことも増えて来ました。そのような際の対応の相談もあります。ビジネス文書なら長い時間をかけて整備されたマニュアルや例文があっても、近年急速に普及したソーシャルメディアについては多くの企業では対応も不十分で未整備です。中高生に教えるように、ネットとの付き合い方や投稿する際のチェックポイントなども、ビジネスマナー同様に従業員研修の中に取り入れるべき時期が来たようです。


2014年6月5日木曜日

子育て支援の受益者は「日本国と全国民」である

昨日は、Net上でもこの記事が話題でした。
5歳から義務教育 文科省方針 「小1プロブレム」の解決へ
http://www.huffingtonpost.jp/2014/06/03/early-childhood-education_n_5441544.html
産経ニュースより
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140604/edc14060407310002-n1.htm


小学校入学に関しては、「小1プロブレム」と「小1の壁」という2つの問題点がしばしば指摘されますが、一方は教育者からの視点で、一方は親にとっての問題。
しかし、どちらも同じ小1の子どもを取り扱う問題です。親の都合で問題と見るのか、教師や学校の視点で問題と見るかなど子どもにとってはいい迷惑です。

小1プロブレムについては、2012年に取材したニュージーランドの就学前教育指針「テファリキ(Te Whariki)」に基づくカリキュラムと幼児教育が参考になります。

一方、「小1の壁」についても昨年から進められている子育て支援策の充実により、待機児童の解消や学童保育の受け入れ施設の拡充は進みそうです。改正育休法の浸透で、育休明け職場復帰後の時短勤務などがだんだんと定着していくでしょう。しかし、会社でのキャリアアップを考えるといつまでも時短勤務という訳にはいきません。学童保育のキャパシティが増えたところで、夜まで預かれる訳ではありません。

日本生産性本部「日本の生産性2013」より
http://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2013_3.pdf
そもそも、日本は時間あたりの生産性が低い国です。GDPが世界3位で有りながら、時間あたりの生産性はOECD加盟34カ国中では20位。1位のノルウェーの半分以下、4位のアメリカの2/3以下です(2012年)。米ドル換算ですから為替の影響もありますが、いずれにしても労働生産性の低さは前々から言われていることです。
際限の無い残業や24時間営業、無理な多店舗展開によって売り上げを伸ばしてきましたが、ここのところの深刻な人手不足でそれも限界が見えてきました。コンビニエンスストアの営業時間が24時間ではなくなる日も近いかもしれません。

そんなタイミングで安倍政権が「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入しようとしています。ワーキングマザー、イクメンが上手く活用できれば、16時や17時に仕事を終えて帰宅することもできるでしょうが、「個人」「チーム」よりも「組織」を重視する日本の企業風土では難しそうです。

50年後に日本の人口1億人を維持しようとすると、早い段階で合計特殊出生率を2.07以上に引き上げなければなりません。地域住民の反対で保育園の建設が中止になるという事も起きているなかで、実現は可能なのでしょうか?
話が大きくそれてしまいましたが、安心して子どもを産み育てられる環境整備(金銭的な負担低減、労働条件など制度面での整備、保育・託児施設の充実など)と、教育の充実(義務教育から高等教育までの体系、教育費の援助と負担)は、全国民と日本という国が受益者であるという視点に立って見直すべきです。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年5月31日土曜日

アルファベット3文字略語の憂鬱

ビジネスの世界では、しばしばカタカナの言葉や短縮した英文字の単語が使われます。マーケティング用語から業界用語、あるいは社内でだけ通用するような言葉もあります。
しかし、ここに来て多く目・耳にするのがIT関連の用語です。
ROE(Return On Equity-自己資本利益率)やKPI( Key Performance Indicators-重要業績評価指標)くらいなら一般的なマーケティング用語としても使われますが、WEBマーケティングの世界では新しい用語やアルファベット3文字の略語がどんどん出てきて、ITにうとい経営者にはチンプンカンプンではないでしょうか?アルファベット3文字と言えば、AKBやHKT、NMBも難解ですが、知らなくてもビジネスにはさして影響有りませんが、こちらはそうはいきません。

WEBサービスの利用だけでなく、現代のビジネスでは自社のホームページ運用を始めインターネットの世界でのコミュニケーションやマーケティング、決済など避けて通れなくなっています。社内での打ち合わせでもWEBの活用方法に始まり、成果の検証、外部スタッフとの打ち合わせの場でもIT用語が飛び交います。特にやっかいなのがアルファベット3文字の略語です。多くは英単語の頭文字の略語なので、元の単語がわからないとなんのことだかの想像すらつきません。

クライアント様とWEB制作会社やWEBマーケティングの会社との打ち合わせに、同席を求められることがあります。そのような時には半分は「通訳」を兼ねたアドバイザーの役割が求められます。ITにうといからと、不適切な契約や法外に高い見積もりを提示され、専門用語やわからない言葉で煙に巻かれてそのまま契約してしまうケースもあるようです。

●知っていて損は無い基本の3文字略語

特に、e-commerceや広告に関する打ち合わせの場で登場する主なアルファベット3文字略語は以下のようなものがあります。

SEO-Search Engine Optimization-検索エンジン最適化
SEM-Search Engine Marketing-検索連動型広告マーケティング
PPC(広告)-Pay Per Click(advertisement)-クリックされた分だけ支払う広告
CPC- Cost Per Click-クリック単価
CPACost Per AcquisitionCost Per Action-目標成果あたりコスト
CTR-Click Through Ratio-クリック率
CVR-Conversion Rate-コンバージョン率 
CPO-Cost Per Order-注文1件あたりコスト 
SSL-Secure Sockets Layer-通信暗号化方式の1つ
O2OOnline to Offline-ネットでの活動から実店舗販売へ(影響・橋渡し)


SNS-Social Networking Service-ソーシャル・ネットワーキング・サービス
                    mixi、Facebook、Twitterのほか、広義ではブログなども
CMS-Contents Management System-サイト構築を簡便にするプログラム
                    WordPress、XOOPS、EC-CUBEなど
CRM-Customer Relationship Management-顧客管理システム 
                    Salesforce.com など


スマートフォンやタブレットがWEB利用の主戦場となれば、これまでとは違う新しい用語や3文字略語が次々と現れることでしょう。
また、3文字略語だけでなく、新しい用語も同様に次から次と登場します。
ロングテールやブルーオーシャン、キャズム、フリーミアムなどの新しいマーケティング用語が登場し、今ではすっかり定着しました。最近ではグロースハックなどが話題です。
本当にフォローするのが大変です。


ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年5月17日土曜日

賞味期限切れや傷物商品の扱いについて

クライアント様の従業員の方と個別面談したり親しくさせていただくようになると、意外と多いのが彼らからの内部告発です。特に若い方から問題行為ではないかと「疑問」として投げかけられます。

・会社の商品を勝手に持ち帰る人がいる
・持ち込んではならない物を持ち込む人がいる
・特定のお客様に対して過剰にサービスしたり、料金を請求しない事がある
・テーマパークやイベント、アトラクションに裏口から入れる、便宜を図る
・(飲食店などで)つまみ食い、食材を持ち帰る人がいる
・返品商品を不適切に取り扱い・処分(分配)する
 など

社内や業界の古い慣習が残ったままの企業で働く先輩従業員の行為は、そこで働くようになった若い従業員にとっては不適切な行為にしか映らないのです。しかもその視点の方がだいたい正しい。そのまま見て見ぬふりをしていると、ある日突然共犯者になってしまうケースもあります。かつてはあたりまえに行われていたことが、現在ではやってはならないことになっているのです。当然、本人には罪の意識はありません(中には仲間を募って確信犯のケースもあるでしょうが)。社内で明確な(明文化された)ルールが無い事も原因です。
また、自社の事業に関連する法律についての認識不足もよくあります。法律の改正も頻繁です。
赤福で発覚した巻き直しや船場吉兆の使い回しなどは、物の無い時代の「もったいない精神」の延長ではありましたが、現在ではJAS法違反や食品衛生法違反行為です。

指摘されても問題が理解できない

このような行為が社内にあることを報された経営者が発する言葉は、大きく3通りに別れます。

1,それの何が悪いの?-問題・隠れたリスクが理解できない
2,誰かそんなことをやってるんだ!?-犯人捜し
3,そんなことあるはずがない-従業員を信じたい、問題に向き合いたくない

いきなり犯人捜しなど始めたら社内が騒然としますし、先送りはさらに問題を大きくする可能性もあります。しかし一番問題なのは、もちろん1です。
指摘された問題の重大性がわからないので、それを理解していただくことから始めなければなりません。だいたいにおいて、今でも30年40年前の高度成長期の記憶が脳内を支配しています。身内や仲間内で持ちつ持たれつでここまで大きくなってきた、続いてこれた様な会社です。知り合いに甘く、いい顔をしたい、法律よりも業界や仲間内の常識が優先します。なかなか無くならなかった、土木・建設業界の談合が良い例です。
食品を扱う業界では、余った食材や賞味期限が近づいた食品、傷が有り販売できないような商品を持ち帰ったりすることが今でもあるようです。どうせ捨てるくらいなら、もったいないから有効活用しようというのもわかります。コンビニでは厳格にコントロールしていますが、一般の企業や飲食店でこの行為をルール化して明文化しているところはほとんどありません。大手のホテルチェーンでもなかなか無いのではないでしょうか。

「もったいない」だけで世間は納得しない

法律に違反する行為は説明すれば理解していただけますが、消費期限切れや売れ残りの生鮮品の持ち出しについてはなかなか理解していただけません。社内で処分するんだから何の問題があるの?と開き直られることもあります。どんなリスクがあるかというと、主なリスクだけでも

1,処分(誰かが持ち帰る、社内で安く販売など)方法は誰が判断するのか?
  →客観的なルールがないと不公平感に繋がる→社内の不協和音
2,持ち帰った後の商品の扱いは管理できない
  →自宅で消費するのか、第三者の手に渡るのか?
   転売するかもしれないし、型崩れや半端物の流出。
   最悪、食品の保存方法が悪くて食中毒など第3者を傷つける可能性
  →社外に出た商品に起因するトラブルリスク
3,ルールを決めずに商品を社外に出すことによる批判
  →商品管理に対する不審感、噂や風評リスク

などがあります。
売れ残りや傷物だからと言って、ルールも決めずに安易にその場その場の対応を取っていると、いずれ思いもよらない問題に発展する可能性があるのです。最も危険なのは、廃棄すべき物を持ち帰ることです。
商品の処分方法、払い下げや社内販売のルールは、きちんと明文化しておきましょう。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年5月10日土曜日

子育て先進国は幸福度も高い国-OECD Better Life Index より

OECDが発表する暮らしの豊かさ・幸福度の高い国-OECD Better Life Indexのデータが更新されたようです(2014年5月時点)。日本は36カ国中昨年の21位から一つ順位を上げていますが、まだ20位と低位に甘んじています。
各国のレーティング さて、日本は何処に?

もっと視覚的にわかりやすいHappiness Map(これの元データがOECD Better Life Indexなのかは不明)を見ると、北欧やオセアニア、北米・南米などの諸国は総じて幸福度が高く、一方、日本・ロシアを含めたアジアとアフリカは幸福度が低い傾向が見て取れます。

OECD Better Life Indexの具体的なスコアは以下のようになっています。
(サイトでは全体のスコア表はないので、国毎のスコアを転記して並べ替えました。転記ミスがあったらご容赦ください)

各国のスコアは以下の項目毎に点数化されています。
  1. Housing(住居)・・・住居費、1人あたりの部屋など
  2. Income(家計所得)・・・所得、資産など
  3. Jobs(仕事)・・・就職率、失業率、個人所得、セーフティネットの充実など
  4. Community(コミュニティ)・・・支援ネットワークの充実度
  5. Education(教育)・・・教育の期間、環境、学生の能力など
  6. Environment(環境)・・・大気汚染、水質、安全な水の供給
  7. Civic engagement(市民参加)・・・有権者投票率、法制定への関心など
  8. Health(健康)・・・平均寿命、喫煙率、健康診断受診など
  9. Life Satisfaction(生活満足度)・・・生活の満足度
  10. Safe(安全)・・・暴行、殺人、銃・麻薬の取り締まりなど
  11. Work-Life Balance(ワークライフバランス)・・・労働時間と自分の時間のバランス
幸せ度の高い国々は、子育てしやすい国でもあるようです。
これまで、子育て先進国としてmikuが取材に足を運んだ国は、スウェーデン、フランス、ニュージーランド、カナダ(BC州)。そして今年ノルウェーを取材予定です。いずれも、Better Life Indexで上位にある国々です。そこで上記11項目の内、国民自ら行動することで子育ての環境に影響を与えそうな項目を5つ(Community、Education、Civic Engagement、Life Satisfaction、Work-Life balance)に絞って集計し直すと、以下のようになります。

 日本は更に順位を下げて、24位です。日本は、所得の高さや失業率の低さ、安全などの項目が相対的に高いスコアなので、この3つの要素を外してしまうと、どの項目を残してもだいたい25位前後になってしまいます。

一番の問題は、Civic engagement(市民参加)の低さです。
投票にも行かずに、仲間内だけで不平不満や文句ばかり言っていても 何も変わりません。このままではいつまでたっても日本は子育てしやすい国にはなれません。
投票率が上がらない限り、実際に子育てしている世代が政治に参加しない限り、子育てしやすい国には変われないのです。

※しかし、少子高齢化が進むほどに有権者総数に占める子育て世代の割合はどんどん小さくなっていきます。ジレンマですね。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年5月9日金曜日

カネボウ美白化粧品の白斑被害のその後

昨年明らかになった、カネボウ化粧品の美白化粧品による白斑被害。当初は親会社の花王が解決に乗り出し、早期に収束するかと思われました。当該化粧品を使用することにより発症した白斑症状は、発表当時は使用を中止すれば改善に向かうと報告されていたからです。
しかし、実際には被害者数は拡大するばかりで、使用を止めても改善しない症状に対してはその治療方法も確立されていません。
カネボウ化粧品のホームページに掲載された最新データ(2014年3月31日時点)では、白斑様症状確認数は症状が確認された人数は18,692人。うち、4,195人が完治あるいはほぼ快復とありますが、快復していない人が14,497人もいらっしゃいます。

 被害者グループが弁護団を結成し、集団訴訟も視野に

そんななか、全国で複数の被害者グループが、損害賠償を求め弁護団を結成しています。既に広島、山梨・静岡で提訴され、ほか、東京や神奈川、京都など各地で弁護団を結成(2014年4月時点で15弁護団)して提訴に向けて準備中だということです。

提訴されれば、それぞれの地域での裁判所で争われることとなります。花王・カネボウ化粧品の法務担当者や美白化粧品の開発責任者・プロダクトマネジャーなどは、それぞれの訴訟に対応しなければなりません。費用だけでなく、何時終わるとも知れない法廷闘争は、精神的なストレスも相当なものです。加えて、花王・カネボウ化粧品の経営サイドが、この提訴に対してどのような態度で臨もうとするかによっても、その流れも担当者のストレスも違って来ます。花王・カネボウ化粧品は、全面的に非を認めて早期の損害賠償調停に持ち込もうとするのか、あるいは賠償責任から逃れるために徹底的に法廷で争うのでしょうか。

堺雅人主演の人気ドラマ「リーガルハイ」では、事の善悪や常識のとらえ方ではなく、手段を選ばず法廷で勝利することが正しいというわかりやすいストーリーが視聴者に浮け、高視聴率をマークしました。しかし、企業同士が特許や商標を巡って争う訴訟とは違います。企業が自らの負担と損害を軽くするために、手段を選ばず勝ちに行こうとするのであれば美白化粧品だけでなく、花王・カネボウのブランドもいずれ生活者の選択対象からは外されることでしょう。現状では他を選ぶことができない電気やガスとは違って、多くのブランドの一つにしか過ぎないのです。

京都弁護団の様子を伝える毎日新聞京都版によると、「大メーカーだから適切に対応してくれるのではないかと思うが、そうではなくなっている」とカネボウ化粧品側の姿勢を批判し、裁判も視野に交渉にあたる姿勢を示したということです。

カネボウ化粧品の品質保証関連部門は昨年親会社である花王の品質保証部門に統合されました。新安全基準の策定なども、花王の品質保証部門主導で進められているはずですが、ここのところの新聞報道などでは、花王の関与はほとんど報じられていません。当初は花王グループ一丸となって対応すると明言していましたが、思いの外深刻な状況となってきたので親会社としては少し距離を置き、花王ブランドに傷が付かないよう立ち位置を変えてきたとも映ります。
いずれにしても、法廷闘争に多額の費用と労力をつぎ込む前に、白斑症状の治療法確立に全力を尽くして欲しいと、誰もが思っていることでしょう。次回、5月12日最新データが発表されるようですが、被害者の症状の改善は進んでいるでしょうか。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年4月21日月曜日

ソーシャルが一層進める物語消費

戦後の高度成長期、日本人にとって欧米のブランドは憧れでしたし、品質の保証でもありました。国産品であれば、テレビなどの大手メディアを通じて広告宣伝される物が多くの人に認知されることでブランドとなりました。見方を変えると、宣伝そのものが品質の保証(これだけ大々的に宣伝する企業だから信頼できるだろうと)にもなっていました。
近年、新しいブランドや商品・サービスが次々と開発され市場に現れ、流通ルートも多様になってくると、かつてのように盲目的にブランドで商品を選ぶことができなくなります。商品やサービスのライフサイクルも大変短くなっています。ブランドだけでなく、商品カテゴリーさえもがコモディティ化し陳腐化します。液晶テレビがその代表例でしょうか。生産技術・効率の高度化と開発期間の短縮に伴い、商品の機能や価格での差別化はほとんど難しくなってきました。
そこで、差別化するために商品やブランドにわかりやすい付加価値を付けようとします。日本一や日本初、○○初出店などの他、●●さんが愛用しているとか△△で紹介された、メ ディアで取り上げられた等です。商品ライフサイクルが短くなると、差別化と言うよりもわかりやすさが重要です。加えて価値観の多様化で、一人一人が求める価値も様々とな り、同じ基準では評価できなくなっています。

この数年、ソーシャルメディアの活用が進んだことで、情報収集や商品選択の仕方も変わって来ました。ソーシャルメディアでは、自分が欲しい情報を能動的に問いかけることで、友人やフォロワーが情報を提供してくれます。「接待に使える良いお店」や、「子どもの誕生日に家族で食事するのにオススメのお店」、あるいは「▽▽のお土産は何が良い?」「□□□は何処に行ったら手に入る?」など簡単に情報が集まります。5W1Hを細かく条件設定した情報提供を求めることも珍しくありません。そんな細かな個別条件を想定することはできても、商品開発や宣伝をする際には最大公約数にまとめるか、逆にピンポイントに絞るかとなります。ITを活用したWEB上の広告では、ネット利用者の過去の検索や利用履歴に応じた広告表示などが可能になってきていますが、それでもまだまだあ限界があります。

ソーシャルメディアの浸透で、コミュニケーションにはコンテキストと物語が重要になってきました。Facebookに代表されるSNSやTwitterでの情報伝達は、基本的には発信者がいてその情報をフォロワーが広げて拡散(Facebookではシェア、TwitterではRetweet)していきます。
ソーシャルメディアで拡散される情報は、オモシロイものや珍しい・役に立つ情報などの他に、いわゆる「いい話」や「感動する(裏)話」などが多いのです。感動や喜び、悲しみや怒りといった感情を伴い(あるいは背景とした)、共感して欲しい・共有して欲しいという欲求があるのです。



ここに貼り付けた動画は、約20万人が「いいね!」をし、約4000万回近く再生されています。最近はやりのflashmobの1つではありますが、多くの人がその感動を共有しようとシェアしています。シェアをする時、それぞれがコメントを付けて拡散していきます。一言添えたコメントが、また新たなコンテキストを生み出す場合もあります。コインに意味を持たせる人、少女の視点で語る人、リクエストという行為に意味を見いだす人……

ソーシャルメディアに親しんだ生活者は、商品やサービスの選択に際しても、それを選ぶことで誰かと物語を共有したり、新たなコンテキストを創り出すような期待を持って手にするようになります。そしてまた新たにソーシャルメディアで共有され広がっていく。求めているのは物の消費だけではなく物語の消費であり、新たな物語を生み出す「きっかけ」でもあるのです。

商品開発や広告宣伝、コミュニケーション計画をたてる際には、ロジカルな数字や機能面だけでなく、情緒面にも訴えかける物語という視点でも振り返る事をおすすめします。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年4月1日火曜日

料理メニューの表示指針が消費者庁から示されました

昨年、ホテル/レストランの料理メニューで相次いで指摘された不適切表示。一部で誇大表示や偽装表示と指摘される物がある一方、業界の慣習的に使用されていた呼称が優良誤認を生む結果になった部分もありました。
そこで消費者庁では昨年12月19日、「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について(案)」を作成・公表し、パブリックコメント手続を行いました(意見提出の締切日は今年1月27日 )。その結果まとめられた「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」を、3月28日に公表しました。
毎日新聞電子版 3月29日より
メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」では具体的な例を示しながら解説してありますが、ほとんどの例は問題有りのケース。そもそもが偽装表示や誇大表示の誤りを正すための例ですから当たり前なのですが、その中には問題がないとされたケースがいくつか示されています。パブリックコメントのまとめを見ると、様々な立場で多くの意見が寄せられていますが、個人と事業者・団体では逆の主張も見られます。
例えば、ステーキをどう定義するかなどは、できるだけ高く売りたい事業者・団体は成型していない生の一枚肉こそステーキであると主張し、個人の意見ではもっと広く捉え、サイコロステーキやハンバーグステーキなどでも使用に問題ないとする意見があります。一方、トラウトサーモンをサケと表示することについても事業者と個人とでは意見が分かれていますが、問題ないという事になっています。
ガイドラインに示された例では、オーストラリア産のオーストラリアミナミイセエビを伊勢志摩地方の風景写真とともに、イセエビを使用している旨をメニュー等に表示することは問題としています。しかし、伊勢志摩地方の風景写真無しで「イセエビ」と表示することについては言及していません。解凍魚を鮮魚と表示する事についても、消費者の受け止め方はどうでしょうか?

いずれにしても、消費者庁が示した指針はひとつの目安として捉えながら、より消費者が求める表示を心がけることが大切です。「問題がないとされているから 」ではなく、正しい表示をすることが求められているということを忘れてはいけません。今回「問題なし」とされた表示についても、時代が変われば「問題有り」となる日が来るかもしれないのですから。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年3月29日土曜日

空間除菌グッズの誇大広告に消費者庁が出した措置命令には、もう一つ大事な指摘が

2014年3月27日、消費者庁から「二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうするグッズ販売業者17社に対する景品表示法に基づく措置命令について」とするニュースリリースが出されました。

17社は、一般消費者に販売する空間除菌グッズ(携帯型15商品、据え置き型10商品、計25商品)について、対象商品から放出される二酸化塩素が、生活空間において、ウイルス除去、除菌、消臭等するかのように示す表示をしていました。消費者庁がそれぞれについて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、提出された資料からは裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったため、優良誤認表示として措置命令に至ったというものです。

しかし、このニュースリリースに記載されていたのはそれだけではありません。
措置命令には、「優良誤認表示」だけでなく、「有利誤認表示」に対するものも記載されてます。
これは、株式会社東京企画販売が、楽天市場に開設した自社WEBサイト「彩飾健美」が、「実態の無い当店通常価格を表示し、大幅値引きしているからお得だ」と誤認させるような表記を行っていたので改善せよというものです。よくいう2重価格です。
どうして優良誤認表示に対する措置命令に、1社だけの有利誤認表示に対する措置を一緒に出したのでしょうか?確かに、ネット通販の世界ではまがい物だけでなく、2重価格や実態の無い「有利誤認表示」は数えられないほど存在しているようです。
そんな背景を考えて深読みをすると、色々と考えられます。

例えば
・話題として大きく扱われるであろう 「優良誤認表示」と一緒に公表することで、同様の事を行っている他社・他業界へ「次は有利誤認表示」を徹底的に追求するよ、とサインを送った
・「有利誤認表示」に関する調査は数が膨大な上、分野や商品カテゴリーが多岐にわたり優先順位をつけるのが難しいので、やってるよというポーズだけ示した。
・実は、「彩飾健美」の2重価格の告発を受けて消費者庁が調べ始めたら、もっと大きな問題(空間除菌グッズの優良誤認表示疑惑)に行き着いた
・告発されたら動かざるを得ないので、その前に自主的に改善して自分達の負担にならないようにしてね。改善しなかったらお仕置きよ!
など。

いずれにしても、行政機関が動き出す前に消費者がソーシャルメディア上に何かしらのサインやクレームを書き込む時代です。一旦炎上し、告発されたりして担当部署が知ることになれば、後追いであっても行政も動かざるを得なくなる訳です。
かつての(ネット)通販業界では普通の事であっても、だんだんとそれは通用しなくなっています。昨年問題になった食品の表示偽装なども、かつては業界の慣例だったのかもしれませんが、今では許せないことになっています。

業界どっぷりの人こそ気がつくと取り残されて、いつしか犯罪者・加害者・当事者になってしまう危険性がある時代なのです。うちの業界は特別だ、と思っている時点で既にアウトです。皆さんは大丈夫でしょうか?

それにしても、消費者庁のホームページは分かりづらくて誰に向いているか疑問に思ってしまいます。消費者庁こそホームページを利用する消費者に向いて、もっと使いやすいホームページを研究して欲しいものです。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年2月27日木曜日

LINEモールオープンを控えウィメンズモール閉鎖、次は?

ウィメンズモールのサイトより
ベネッセコーポレーションが運営するウィメンズモールが、2月25日をもって閉鎖となりました。報道などによると、ウィメンズモールの会員数は約30万人。モールへの出店数は約200ということでした。楽天市場やamazon、昨年出店料を無料としたYahoo!ショッピングなどの総合ECサイトとは規模では比べものになりませんが、ベビー&マタニティ用品の専門モールとしては大手の一角ではありました。
女性向けサイトなので、私自身が覗いたことは無いのですが、少し考察してみようと思います。
ウィメンズモールに出店していたのは、ベビー用品などの大手メーカーが中心。たまごクラブやひよこクラブの広告主と重なる ところが多く、しかもそれぞれ自社でもショッピングサイトを持っているところも多かったようです。メーカーが直接出店すると、安易に値下げもできず、会員にとってウィメンズモールで購入するメリットは、モール上のみで使えるポイントや会員限定サービスくらいしか無かったのかもしれません。

ウィメンズモールの対象は20代~40代前半の妊娠中から小さなお子さんがいる女性にほぼ限られます。
成長が早い子どもの物は、購入しても使用期間が短いので、ものによってはレンタルで済ませる人も多く居ます。一方、小さな子を抱えて思うように出かけることもできないために、大きな物や重たい物の購入にはECサイトやネットスーパーなどの利用も増えています。ECサイトを利用するにあたっても、高額品や特定のブランド商品なら、価格comで最低価格を事前に調べたり、ヤフオクを利用したりと、財布の紐はなかなか緩みません。
たまごクラブやひよこクラブといった雑誌から誘導しても、あるいはウィメンズパークから誘導しても、商品購入にまで結びつけることは容易ではなかったはずです。しかも、モールの利用期間が子どもが小さな間だけと限られているため、常に新規の会員を獲得し続けなければならず大変です。

そんな状況の中で、LINEがこの春にモールを本格的にスタートすると昨年暮れに発表しました。
LINE社のニュースページより

インターネットの利用端末は、PCからモバイルへと急激に移行が進んでいます。 ECの主戦場も、PCからスマホへ移行することは確実です。
スマホの中でも無料通話アプリの利用者の囲い込みが熱を帯びてきました。今年になって、LINEと同様の無料通話アプリサービスの会社のM&Aが立て続けに発表されました。楽天がバイパーを、FacebookがワッツアップをM&Aで傘下に収めたのに続き、ソフトバンクがLINEに出資するという噂まで飛び出しました。スマホでは、ネットへの接続はブラウザではなくアプリからが主となります。そのため、画面上に置かれるアプリのアイコンが重要となります。小さな画面に設置できるアイコンの数は限られます。スマホ画面上での陣取り合戦が繰り広げられることになりますが、単独のECサイトが画面にアイコンを置いて貰うことは、非常に困難でしょう。
ECの市場はこれからも更に拡大すると言われていますが、ECの戦場がスマホに移行する過程でふるいにかけられ、閉鎖するモールやサイトは増えてくるに違いありません。LINEモールスタートも一つのきっかけになり、ウィメンズモールは閉鎖の決断ができたのかもしれません。

2014年2月15日土曜日

少子化対策と子育て支援策は似て非なるもの

ここ数年続けている子育て先進国の取材は、一昨年のニュージーランド、昨年のカナダBC州に続き、今年はノルウェーを取材しようということになりました。子育て支援制度の充実に加え合計特殊出生率や各種経済指標の客観的なデータも高水準。きっと日本の現状と比較して色々と参考になることも多いはずです。そこで、ノルウェー大使館にアポイントを取り、取材協力の御願いに行ってきました。対応いただいたのは、ノルウェーの女性参事官と日本人の広報官です。

これまでのスウェーデン、ニュージーランド、カナダBC州の取材状況などを伝え、今回の取材目的や趣旨、希望する取材先・対象と時期などを伝え、本国との調整を依頼しました。同時に、ノルウェーの子育て支援の状況などについて軽いヒアリングを行いました。


まだ本取材ではないのですが、様々な話をした中で2つの事が印象に残りました。

パパクォータ制度への抵抗は強かった

今回ノルウェーでの子育て状況取材の主題の1つが「パパクォータ制度」。1993年にノルウェーで初めて導入され、ヨーロッパ各国などに広がっています。日本でも2010年の育休法改正により導入された「パパ・ママ育休プラス」は、このパパクォータ制度を手本にしたと言われています。
パパクォータ制度の話を取りかかりに、ノルウェーの子育て支援の話に入っていったのですが、いきなり「その前提は違う」というところから始まりました。子育て支援が主体ではなく、家族のあり方が大事なのですと。カナダBC州の子供家庭省での取材時にも同じことを言われました。言い方を変えると、「木を見て森を見ず」とならないようにということでしょう。日本では法律や各種制度が、子育ては母親の役割というところからスタートしています。 子育てに父親が関わる前提では考えられていないとも言えます。
ノルウェーの子育て・家族に関する政策を担当する大臣は「子ども・平等・社会大臣(Minister of Children,Equality and Social Inclusion)」です。政策の決定や実行状況についても、オンブット制度(国が任命する監視員)で国民の厳しい目が光っています。

北欧の国々は冬も長く貧しかったため、夫婦で働くのが当たり前でした。そのため、ノルウェーでも政治にも経済活動にも女性の進出が早くから進んでいました。それでも、本格的になったのは1970年代に男女平等、地位獲得の運動をした結果だと言います。今では上場企業の取締役には、一定比率以上女性を登用しなければならないとか、政権交代すると閣僚に何人女性が入閣するかなど、国民が厳しい目で見ていると言います。思えば日本でもウーマンリブ運動が盛んでしたが、高度成長期の男世界の壁を打ち崩すことはできず今に至ります。ノルウェーでも一時合計特殊出生率が下がり、 それを何とかしなければと導入されたのがパパクォータ制でしたが、決定に際しては相当な抵抗もあったそうです。それでも導入にこぎ着けられたのは、男女平等が前提という国民意識の高さが背景にあり、押し切ることができたということでした。

国家戦略としての出生率維持

日本では、子育て支援だけでなく北欧の手厚い社会保障制度について注目します。しかし、そのために高い所得税や消費税を受け入れていることにはあまり目を向けません。当然、物価も高くなります。わずか500万人という人口では、いくら高率の課税をしても税収には限りがあります。北欧の国の中でもノルウェーは、1970年代に石油が出たことによって裕福な国となりました。国民一人あたりのGDPも高水準です。一方で、限りある資源に頼っていても先が無いのは明かです。
それだけに、余裕があるうちに出生率を快復させ、労働者人口の減少に歯止めをかけ、優秀な人材を育てて次の産業を育成しなければなりません。
国家戦略として、「米百俵の精神」で子育てに力をいれていると感じました。

まだ、大使館での情報交換だけですが、大変興味深い内容で、現地取材が楽しみです。


戻って取材準備のためにノルウェーの事を調べ始めて驚きました。ヨーロッパで最も物価が高い国の一つだということです。デフレが続いた日本から欧米に行くとどこも物価が高く感じるのに、その中でも最も高いとなると、取材経費はどのくらいにのでしょう?ちょっと不安になりました。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年2月13日木曜日

佐村河内守氏の事件に見る企業の潜在リスク

「現代のベートーベン」「全聾の作曲家」とメディアで賞賛されていた佐村河内守氏に、実はその作品が自らの作品ではなく、しかも耳も聞こえていたという告発がなされました。佐村河内氏のゴーストライターである新垣隆氏(桐朋学園非常勤講師)が会見を開いて明らかにしたのです。

この事件の詳細は、これからもワイドショーや週刊誌を始めとした様々なメディアで取り上げられ、真相が解明されるのでしょう。
今回の「事件」を企業活動に置き換えてみると、大きく2つの点で反面教師とすることができます。

 

秘密を共有するときには契約書を交わす

佐村河内氏は、新垣氏とはこれまで契約書などは交わさず、お互いの信頼関係だけをよりどころとしてこの関係を続けてきたのでしょうか?
佐村河内氏を業務委託の発注者、新垣氏をその受諾者と置き換えてみたらその危うさは容易に想像が付きます。「2人だけの秘密」というのは、いずれどちらかの裏切りによって終止符を打たれることが普通です。 だからこそ、企業間の約束事では「契約書」を交わします。契約に反した場合のペナルティを明確にした文書を取り交わすことによって、お互いを牽制しあい情報を厳密にコントロールしようとします。

私の仕事でも、クライアント様からの相談時点から(契約前であっても)守秘義務を負っているとの認識で臨みますが、上場企業やナーバスな業種のクライアント様ですと、相談のテーブルに付く前にNDA(Non-disclosure agreement 秘密保持契約書)にサインを求められることもあります。
今回の秘密が明らかになった事で、佐村河内氏は社会的に責めを負うだけでなく、レコード会社や出版社、その他いろいろなところからの損害賠償を含め、刑事や民事でも訴えられる可能性が高いでしょう。経済的なダメージは相当なものになるはずです。
これを避けるには、2人が死ぬまで秘密を守り通す以外に方法は無かったわけですから、何かしらの守る手立てを考えてしかるべきです。
それとも契約書を交わしていて、週刊文春に記事が出る事を知って新垣氏が自分の身を守るためにあえて記者会見をひらいたのでしょうか?

仕事はガラス張りにする、死角を作らない

2つめは、周りから見えないことによるリスクです。佐村河内氏を企業の発注担当者、新垣氏を受注業者と置き換えると見えてきます。担当者しか把握していないとか、周りからチェックできないなどを良い事に時として発覚する、バックマージンの要求や架空発注などです。誰にも実態がわからないものや、相場が曖昧なものなどでは請求額が妥当な額であるかを判断できる人が、社内にいないケースも多くあります。昨年の食材偽装では、ひょっとしたら偽装だけではなく購入価格にも問題があった可能性は否定できません。話題になったドラマ「半沢直樹」でも、迂回融資の追求と攻防がストーリーのクライマックスでした。


日本の企業経営者は、従業員を家族同様に扱い、お互いに信頼し支え合ってきました。しかし、それは古き良き時代の会社の姿となってしまったのかも知れません。

今、考えなければならないのは、不正が起きない組織や制度、仕組みを備えることです。欧米の企業や日本でも官公庁では定期的な担当替えをするのは、癒着や不正を未然に防ぐためでもあり、欧米でバケーションなど交代で長期休暇を取らせることも同様の効果があると言います。

契約や発注に関して、見落としていることはありませんか?
うかうかしていると、明日、足下をすくわれるかも知れませんよ。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年2月3日月曜日

精米器に残った玄米を集めて販売した福岡九州クボタ

少し古い話で申し訳ないのですが、やはりスルーするわけにいかず今頃取り上げさせていただきます。それは福岡九州クボタが、コイン精米器に残った玄米を回収して販売していたというものです。
アクリフーズの冷凍食品農薬混入事件が進行中、福岡のローカルなニュースでしたので、あまり大きく報道されませんでした。概要を知っていただくためにまず、朝日新聞DIGITALの記事をそのまま転載させていただきます。
…………………………………………………………………………
2014年1月18日03時09分

精米機に残ったコメ販売 福岡九州クボタ「ブレンド米」

農機具販売会社で米の販売もしている「福岡九州クボタ」(福岡市南区)が、営業所に設置したコイン精米機で不純物を取り除く際に残る玄米を精米し直して、「ブレンド米」として売っていたことがわかった。虫がわいていた玄米も あったというが、多くはすでに飲食店などで消費された。同社は朝日新聞の取材に「偽装と言われても仕方がない」と認め「深く反省している」とした。
 同社によると、コイン精米機は、福岡県内などの営業所に併設。農家などが主に自家用のために玄米を入れ、不純物やぬかなどを取り除き、白米に精米する。精米機には、不純物などとともに、玄米が一部残ってしまうという。
 同社は、残った玄米を、従業員が集めて食べたり、転売したりしないように、2012年11月から、11カ所あった精米機から、少なくとも月に2回、回収し始めた。だが翌月から、こうした玄米を、自社の精米所に持ち込んで改めて精米し、「ブレンド米」と称して売り出した。その後、精米機から回収した玄米だけでは足りなくなり、ブランド米を混ぜて売るようになった。
 同社によると、昨年10月までに、福岡市内の飲食店14店と、主に訪問販売した37人に、1キロあたり350円前後で、計3908キロ(約120万円)を売った。全重量のうち約4割が精米機から集めた玄米だったが、売る際には説明していなかった。
 外部から指摘を受け、社内調査したところ「玄米に虫がわいていた」「ゴミと一緒に玄米を回収した」との証言が従業員から寄せられた。販売した飲食店などには謝罪したうえで返金した。購入した飲食店は取材に対し、「そうした米だとは知らずに客に提供した。今後は気をつけてほしい」と話した。
 同社は九州農政局に自主申告。農政局は昨年12月、産地が特定できないものを販売したなどとして、JAS法や米トレーサビリティー法(産地情報の伝達)に基づいて指導し、改善報告を求めた。同社は「(玄米が)もったいないという気持ちで始めた」と説明している。
 同社は農機具メーカー「クボタ」(大阪市)の関連会社。クボタは「調査の結果、同様の事案は他のグループ会社ではない」としたうえで、「コイン精米機に残った米を販売することは不適切。管理態勢を徹底し、再発防止に努める」とのコメントを出した。(中野浩至記者)
………………………………………………………………………

これだけ食の安全について行政からも注意喚起され、マスメディアでも連日取り上げているのに、まだこんなことをやっていたのかと驚くばかりです。

2007年に相次いだ食品偽装の中には、「もったいないから」と包装し直したり賞味期限の日付を新たに打ち直したり、あるいは一度下げた料理を再利用したりということが発覚して会社そのものの信用を無くしてしまった例が多くありました。それを目の当たりにした企業の多くは我が身を振り返り、身を正したはずです。

「もったいない」だけでなく、「安全」に対しての意識の欠如にも驚くばかりです。コイン精米器は、誰が何を器械に入れたかもわかりません。かつて、自動販売機に置かれた青酸コーラ事件以来、未開封であっても自販機に残された飲料などを口にする人はほとんどいなくなりました。消費者でさえもそれだけ慎重な時代に、企業として組織的に実行していたというのです。
アクリフーズの農薬混入の例を見るまでもなく、誰がどのような行動を起こすのかわかりません。精米器に毒性のあるものを投入することだってあり得ます。誰が持ってきたかもわからない玄米ですから、当然品種も品質もわからないしバラバラででしょう。そんなものを集めて商品として販売していたのです。

しかも、この朝日新聞の記事によると、虫がわいていたような米まで混ぜていたというのは、既にこの一連の流れ(残った玄米の回収→精製→精米→ブレンド→販売)が、ルーチンの業務の中に位置づけられていたことに他なりません。「足りなくなり、ブランド米を混ぜて売るようになった」ということは、販売目標も設定していたのでしょう。

客観的に見れば、悪い事だと直ぐに気がつくはずです。しかし、この記事からすると、もともとそれぞれの営業所で従業員が持って帰ったり転売したりしていた事が始まりのようです。福岡九州クボタは、農機具の販売会社であり、食品を取り扱う会社ではありません。食品を扱う会社であれば起こりえなかった不祥事ではないでしょうか。
ここに至る流れはきっとこんな感じだったと推測します(以下、あくまでも私の勝手な想像です)。

営業所で誰かが勝手に残った玄米を持ち帰るようになった

おかしい、不公平だと誰かが言い出して、それでは不公平がないように営業所で処分方法を考えよう。
(じゃんけん?くじ引き?順番?)

営業所ごとで違う対応に、再び不公平感

それでは全体で集めて、不公平がないように会社として活用方法を考えよう

精米して販売し、その売り上げでみんなで忘年会でもしようか

こうして考え出されたのが不公平感のない「余った米の有効活用法」としての販売。それが思いもかけず好調に売れて、売り上げも利益も出たので販売目標を設定。しかし、会社として販売した時点で売り上げも立てることになります。これまでは「裏金」だったものが帳簿に記載されてしまうのです。ブランド米を仕入れれば原価も発生します。余った玄米の売り上げを忘年会の原資に、みんなで福利厚生的に使おうということもできなくなります。
結果、集められた玄米を販売するという「新たな事業」が生まれてしまったのです。

目先の改善策が知らぬ間に法を犯す

誰かだけが得するのは良くないからと考え出した「改善案」が、会社にとっては「やってはならないこと」に手を出させてしまったことになります。従業員の不公平感を無くすための取組として始まったが故に、食品の販売を始めるという「事業」視点が欠落しているのです。

最初から新規事業として食品の販売を考えていれば、収支だけでなく様々な事業リスクも検証するので、このような「事業」を始めることはなかったはずです。

業務の見直しで、相対的に改善しようと「前よりも良く」を繰り返しているうちに、本来の目的や目標から離れて行ってしまうことがよくあります。誰かが俯瞰的・客観的に見ていないとこのような失敗は起こりがちです。そして、当事者はこの過ちに気づかないことが多いのです。

社外取締役やコンサルタントの活用は、この過ちを犯さないためにも有効です。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年1月26日日曜日

農薬混入事件でマルハニチロ、アクリフーズの社長が引責辞任発表、しかし…

1月25日、アクリフーズの契約社員が、偽計業務妨害容疑で逮捕されました。昨年末の発表からほぼ1か月、異臭がするという最初の報せから2ヶ月半経過して、やっと一つの区切りを迎えたことになります。
容疑者逮捕を受けて、同日夜、マルハニチロホールディングス社長久代敏男氏、アクリフーズ社長田辺裕氏、群馬工場長木下好夫が揃って記者会見に臨みました。その席で久代社長は「グループ内に悪質な犯罪行為に及ぶ人物の存在を許したことは痛恨の極み」と述べると共に、自らを含め、田辺社長、マルハニチロHDの品質保証担当の役員の辞任、関係する役員の報酬削減などの処分も発表しました。
消費者への健康被害をもたらす事件の原因が、社内の給与制度や管理体制にも有るとの認識を示し、自らの経営責任を明確にしました。 両社長は3月31日をもって辞任、それまでの役員報酬も減額するということです。
しかし、もともと4月1日付けでマルハニチログループの5社は合併してマルハニチロとなることが決まっていますので、何も起こらなくても両社の社長は4月1日以降存在しません。社長席がある最終日に辞任することになります。潔く引責辞任を発表したところまでは、これまでの社長と違うなと思ったのですが、合併がなかったらどうだったんだろうかと穿った見方もしてしまいます。ただし、久代社長は4月からは新会社の取締役相談役に就任する予定でしたが、取り消すということです。

今後は、容疑者の動機や犯行手口などは警察からの発表となるでしょうから、会社としての会見はこれが最後となるのかもしれません。
これまでの記者会見を振り返ると、珍しくキチンと準備されたものでした。特に昨夜の会見では、久代社長自らが経営責任を明確にし、「引責辞任」を口にしました。テレビニュースや新聞記事では、「責任逃れをする経営者」を悪役に見立てて報道しがちです。しかし今回は、責任追及をして首を取ることが役目だと勘違いしている一部の記者にとっても先手を取られ、それ以上の追求のカードが無くなってしまいました。 これにより、責任問題追求で無駄な時間を使うことなく、事実確認と今後の対応や改善計画などの未来についての整理に集中することができます。
社長の椅子にしがみつく経営者の醜い姿が報道されると、ブランドイメージまで損なうことになりますから、事件発覚当初より、一区切りが付いた段階で引責辞任を発表することは決めていたと思われます。

今回の事件の影響で、2013年度のグループ連結営業利益の下方修正も発表しました。容疑者の動機がまだわかりませんが、給与や待遇に不満があったとの報道もあります。給与や人事制度の不公平感、管理体制の甘さを放置すると従業員の不満が爆発し、制度整備への投資を惜しんだ額の数倍もの損失として跳ね返ってくる可能性を示唆した事件と言えるでしょう。

※記者会見に出席したわけではなく、テレビのニュース報道などで見る限りの印象です。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2014年1月23日木曜日

「明日、ママがいない」の炎上騒動とスポンサーのあり方

日本テレビ系列で放映されている連続ドラマ「明日、ママがいない」の今後に注目が集まっています。初回放送後、赤ちゃんポストを設置している慈恵病院から放送中止の申し入れがなされ、全国児童養護施設協議会も抗議文を送付、全国里親会からも改善要求が出ています。放送倫理・番組向上機構(BPO)へ審議申し立ても行われたと言います。
そして、第2回放送ではスポンサー8社のうち3社のCMが放送されなかったのに加え、通常番組タイトルの後に入るスポンサーの読み上げと表示が無かったといいます。

明日、ママがいない」そのものを見ていないので、番組の内容について触れることはしませんが、一連の報道やネットでの騒ぎからいくつかの疑問と問題点を指摘したいと思います。

日本テレビの対応


抗議や放送中止申し入れを受けてもなお、 「放送は継続する」と回答しています。確かに、始まったばかりのドラマですから、最後まで見終わって初めてドラマに込めたテーマやメッセージが伝わるのかも知れません。しかし、局の対応からは最後まで見させるだけの展開の提示や局側の工夫が何も見えてきません。フィクションとは言え、非常にデリケートなテーマであり設定です。それだけに事前に様々な反応が想定できたはずです。各方面への事前の根回しもそうですし、映画で言えばR指定のように「○○○の表現がある」など告知して心の準備をさせておけば反応も違ったでしょう。抗議や反応に対する対応準備もできたはずです。
企画の段階で議論を尽くし、波風が立つことを前提とした覚悟の上での脚本/放送だったのでしょうか? 抗議や申し立てに対しての対応に、誠実さや戦略性も感じられないために、残念ながら現状では視聴者もドラマの先行きに期待が持てないのではないしょうか。

スポンサーの対応


事前にドラマのテーマやストーリー、あるいは企画書などを確認した上で番組のスポンサーになっているはずです。局にしてもプロデューサーにしても、スポンサーの意向を無視するわけにはいきません。番組スタート時にはスポンサーとしてOKを出していたはずです。それなのに抗議があったからスポンサーを降りるというのは筋が違うと思います。
2回目の放送では、初回にスポンサー表示されていた8社の内、エバラ食品工業とJX日鉱日石エネルギー(ENEOS)、キユーピーの3社のCMが流されず、AC(公共広告機構)のCMに差し替えられたと報じられました。日清食品、花王、NTT東日本/西日本、三菱地所グループ、富士重工業(SUBARU)、小林製薬のCMは流されたそうです。
ひょっとしたら、スポンサー各社の宣伝担当者は1クール3か月全体の筋書きも理解し、この展開をある程度予測していたかもしれません。ところが、世間の反応に驚いた各社の上層部が、トップダウンで圧力をかけた可能性も否定できません。 そうだとしたら、いかにも日本的横並びの、保身が先に立つ組織と顔の見えない組織人の仕事の進め方がそこに見えてしまいます。

スポンサー表示を落としたのは?


番組提供スポンサーの読み上げ・表示を落としたのは、局の配慮でしょうかそれともスポンサーからの要望だったのでしょうか?実際に3社はCMを流すのを拒否したのですから、スポンサーからの要望があったと考えるのが順当かもしれません。あるいは「スポンサーを降りる」と言われて日本テレビ側が代替案を提示したのかもしれません。
いずれにしても、この行為そのものが新たな話題を提供してしまうことになりました。

今回の騒ぎで見えてきたもの、いえ見えてこないのは、「覚悟」ではないでしょうか。罪深い大人の仕事に対する覚悟のなさが、視聴者や世間にモヤッとした歯切れの悪い印象だけを振りまき、ドラマで演ずる子役達のがんばりを台無しにしていると感じるのは、私だけでしょうか?


2014年1月21日火曜日

ノロウィルスなどの食中毒が発生したら

ここ数日、ノロウィルスの集団感染による食中毒のニュースがメディアを騒がせています。
ホテル・レストランなどの飲食業にとどまらず、食品を扱う企業にとっては他人ごとではありません。 実際に私がサポートしたホテルでも食中毒を出し、厳しい対応をした経験もあります。
そこで、食中毒が発生した場合の対応を簡単にまとめてみます。

1,食中毒の報せは外から来ると心得る
食中毒発生の報せは、必ず外からもたらされます。そのほとんどは保健所からで、まれにマスコミの取材がそれよりも早いこともあります。食中毒の被害者が身内などでない限り、内部で発見できることはほとんどありません。報せを受けたときにはまさに晴天の霹靂です。
いつ、どのような方法で食中毒発生の報せが来るかはわかりません。経営者の元に直接報されるのか、たまたま電話を取った人が知るのか。このような非常事態に際し、 直ぐに経営者・現場責任者に情報が上がるように末端まで徹底していないと、知らないうちにマスコミが押し寄せて大変な騒ぎとなってしまいます。こうなると もう手遅れです。 

2,報せを受けて最初にすることは
大きな組織であれば「対策室」の設置となりますが、それほど大きくない組織でも直ぐに会議室に集まり対応協議です。しかし、会議室に集まるまでの間にも周辺では事は進んでいます。
まず、その時に対応指示・決定ができる、可能な限り大きな権限を持つ人を司令塔として決めます。可能であれば社長などの経営者でしょうが、現場から遠くにいることも多いので、スタートはその現場の組織図で一番上にいる人となるでしょう。
ホテルであれば総支配人、あるいは支配人。レストランであれば支配人や店長ということになります。社長、経営責任者が、この事案については誰の指示で動くのかを明確に表明してください。指揮官・司令塔のいない状態では正しい対応はまず不可能です。

3,指示することは4つ
司令塔からの的確な指示が求められますが、以下の4つを手分けして当たるよう、その責任者と担当を振り分けます。この時点で、保健所から営業停止処分が出ているはずですので、全員で事に当たります。
(1)被害者と症状・状況の把握
(2)保健所・マスコミ対応
(3)原因の調査
(4) お客様へのお知らせと今後の対応策の検討
以下、具体的に記します。

(1)被害者と症状・状況の把握
多くの場合、被害者は入院するか病院に運ばれて手当を受けています。保健所からは、入院先や搬送先、あるいは症状を訴えて治療を受けた病院などの情報も知らされます。その情報を元にしかるべき人が直ぐに謝罪とお見舞いに出向きます。入院先が複数の場合には、手分けして向かってください(順にまわっていると遅くなって既に帰られていたり、心象を害しかねません)。

最初の訪問では具合をお尋ねし、退院後の住所や連絡先を確認するにとどめ、改めて見舞いと謝罪に参りますと名刺を置いて一旦引き上げます。
食中毒発生の現場がホテルで対応が夜であれば、タオルや歯ブラシなどの洗面セットを用意して行くと良いでしょう。被害に遭われた方は、着替えも洗面道具も持たないままいきなりの入院で朝を迎えることになるからです。

(2)保健所・マスコミ対応
保健所からは具体的な指摘や改善指示が示されますので、粛々と対応します。
一方でマスコミ取材に対しての窓口は一本化し、対応する場所も決めます。普通は、社長や総支配人、店長のコメントを求められますのでそれに準じた人が良いでしょう。広報組織が有る会社であれば、広報部長などが対応することも可能です。社長や総支配人が被害者へのお見舞いを優先するかメディア対応を優先するかは、その時々で判断です。
特に、先日のアクリフーズの冷凍食品の事例のような、現在進行形で被害が拡大する恐れがあるようなケースでは、社長にはマスメディアを通じて発表することで被害拡大を防ぐ事が優先されます。
言うまでもありませんが、言い訳や自己弁護をするような発言は厳禁です。

(3)原因の調査
食中毒と断定された時点で、保健所からは原因菌や検出されたウィルスの情報が報されます。その情報を元に、発生場所、保菌者の特定、発生原因などを調査します。ほとんどは調理場・厨房が発生源ですが、そのような固定観念で調査を始めると発生場所・原因を見誤ることがあります。
特にノロウィルスでは、空気中に浮遊して拡散する場合が多くあります。2006年、池袋のホテルで起こったノロウィルスによる食中毒は、吐瀉物の処理が不適切であったためにウィルスが空気中を舞い、感染が広がりました。

(4) お客様へのお知らせと今後の対応策の検討
多くの場合先にメディアで報道されますので、こちらから連絡する以前にお客様の耳に入っています。 それでも、ご予約をいただいているお客様や常連のお客様へは個別にご連絡の必要があります。特に、営業停止期間中にご予約をいただいているお客様については早急な連絡と善後策の提示が必要です。ホテルや婚礼施設などであれば、結婚式・披露宴や宴会のケースもあります。開宴できないとなれば多くのお客様のスケジュールが狂うことになります。出席・列席予定者の中には、直ぐに連絡が取れない人もいるかもしれませんし、海外などの遠方からわざわざ来られる方もいます。ご予約をいただいているお客様からは、直ぐにお問い合わせがあることでしょう。同時にどのような対応をするか回答を求められます。もちろん、食中毒発生を受けて、キャンセルを申し出られるケースもあります。
そのような宴席をどのように振り替えるか、乗り切るか、一度シミュレーションをしておくことをオススメします。

食中毒の原因は、人に有ったり器機にあったり、あるいは仕組みにあったりと様々です。もちろん、複合的な要因で発生することがほとんどです。また、夏はO-157などの高病原性大腸菌を始めとする細菌による食中毒が中心になりますし、冬はウィルスによる感染性食中毒が中心となります。当然、原因菌によっても対応は変わって来ます。あまり詳細に書き出すときりがありませんので、今回はこのあたりにとどめておきます。
 
以下、ノロウィルスに関するご参考
厚生労働省 ノロウィルスに関するQ&A
ノロウイルス食中毒対策について(提言)-薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会食中毒部
厚生労働省 ノロウィルス対策リーフレット 
内閣府 食品安全委員会 ノロウィルスについて


ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。 

2014年1月13日月曜日

企業クライシスとクロスロード

「クロスロードゲーム」をご存じでしょうか?
阪神淡路大震災の際、実際に起こった目の前の事象に行政担当者が難しい判断を迫られたことをきっかけに研究が進み、主に行政の災害危機管理のシミュレーションゲームとして広まっています。
「クロスロード」には、「交差点、重大な分かれ道、人生の岐路、出会う場所」などの意味があります。企業でも、難しい判断を短時間で下さなければならない場面(クロスロード)は多くあります。それが不祥事や事件・事故となると、判断の先送りや誤りは企業生命を脅かすことにもなりかねません。特に近年多いのが、このような企業クライシスに際しての公表の是非とタイミングを巡るクロスロードです。
8年前(2007年)、立て続けに世間を賑わせた食品の偽装や賞味期限改ざんは、内部告発やマスコミの取材報道により発覚するものが中心でした。しかし昨年マスコミを賑わしたホテルやレストランの不適切表示・偽装は、記者会見やリリース、ホームページなどで自ら公表するところばかりでした。この背景には、ソーシャルメディアの存在が有るのかもしれません。バイトテロなどという言葉も流行りました。アルバイトによるtwitterなどへの不適切行為の投稿で炎上し、閉店や倒産にまでいたるケースが有ったり、丸亀製麺ではざるにカビが生えていた事をお客様が写真付きでNetに書き込み、それが拡散したりと言うことも起こっています。
かつては「人の口に戸は立てられない」と言ったものですが、今は「Netの書き込みの手は止められない」といったところでしょうか。何かの不祥事や問題が第三者によって公表される前に、自己防衛的に慌てて発表していますといわんばかりの、記者会見も支離滅裂なものばかりでした。重要なクロスロードにおける検討過程と判断・決断がきっと場当たり的なものだったからでしょう。

災害時、行政の現場でのクロスロードでは事象に対して客観的に思考することが比較的容易です。それは、判断の先にあるのは現場や被害者への影響と結果であり、自分自身に跳ね返ってくることではないからです。どうしたら被害を少なくできるか、現場の混乱を最小限に抑えられるかを冷静に考えられます。
ところが、企業の不祥事や事故・事件では、下した決定が自分や身近な人にも跳ね返ってきます。その結果、次の問題や混乱が社内に引き起こされます。最初から意図的・故意に起こした不祥事はもちろんのこと、そうではない事故であっても責任を追及されることを避けるために、あるいは想定される社内の混乱やパワハラが怖くて見て見ぬふりをしたり先送りをしたりします。
しかし、そのような先送りは発覚した時にダメージを大きくするだけです。問題の発生・存在を認知したら、正しく向き合わなければなりません。その時がクロスロードなのです。逃げずに正しい判断と決断が迫られます。判断を誤ると、お客様に被害が及び、会社にも大きなダメージとなって跳ね返ってきます。先延ばしをすればするほど対応の選択肢は少なくなるばかりか、公になったときの社会的な批判は大きくなるばかりです。最悪の場合は経営の責任を問われるどころか、会社が倒産したりということにもなります。

企業のクロスロードのケーススタディとしては、ジョンソン・エンド・ジョンソンのタイレノール事件やグリコ森永事件、参天製薬の目薬脅迫事件などが有名です。しかしこれらは第三者からの脅迫でした。(個人的な怨恨などがあるにせよ)問題の発生は中からではなく外部からもたらされています。このように事件の発生が明確に認知されることは極めて希です。しかも、原因は社内にはなく第三者による犯罪ですから、災害発生時と同様に(比較的)客観的に思考し判断できるケースです。問題が自社内で発生したケースだと、こうはいかないはずです。
一連のホテル・レストランメニューの不適切表示や、現在進行中のアクリフーズの農薬混入事件(当初は事件ではなく事故としてスタート)などのようなケースで、適切な判断・決定が下せますか?

クロスロードゲームで自社の様々なケースを想定し、日頃からシミュレーションしておかれることをおすすめします。

クライアント様の社内研修や学生の授業でも好評です。
ファシリテーターが必要なときにはお声かけください。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。