2013年12月31日火曜日

子会社任せにしなかったマルハニチロホールディングス

大晦日の12月31日。特番ばかりになって数少ない朝の報道番組を見ていたら、未明にマルハニチロホールディングスの記者会見があったと伝えていました。大晦日に上場企業の社長が出席する緊急記者会見は異例とも言えます。

発端は、12月29日。アクリフーズの冷凍食品から有機リン系農薬「マラチオン」が検出されたと、親会社のマルハニチロホールディングスの久代敏男社長とアクリフーズの田辺裕社長らが都内で記者会見を行いました。

農薬が検出されたのは、アクリフーズ群馬工場で製造された冷凍ピザなどで、同工場で製造された90品目全てを回収するという内容です。すでに群馬工場での生産をストップし、原因が判明するまで工場の再開は無いとしています。30日の段階で、店頭からはアクリフーズの冷凍食品は撤去されて棚が空いている店舗もあるようです。

お詫びと自主回収のお知らせは、アクリフーズの名前で出されています。群馬工場で製造された商品は、賞味期限にかかわらず全て回収、返品に応じるとあります。発表までの経緯の詳細は株式会社マルハニチロホールディングスと株式会社アクリフーズの名前で出された

「株式会社アクリフーズ群馬工場生産品における農薬検出について」

で知ることができますが、30日に群馬県の立ち入り調査の結果、群馬工場の製造工程では該当する農薬が混入する可能性は低いと結論づけています。しかも、回収した商品から検出された農薬の濃度にばらつきがあるため、意図的・人為的な混入の可能性も視野に入れて、群馬県警も捜査に乗り出しました。

そして、本日31日未明、再び緊急記者会見し、最高濃度(1万5000ppm)が検出されたコーンクリームコロッケを体重20キロの子供が約8分の1個食べると、吐き気や腹痛などの症状を起こす可能性があると発表しました。

「株式会社アクリフーズ群馬工場生産品における農薬検出について」第二報

29日の会見では、1度に60個のコロッケを食べなければ毒性 は発症しないとしていましたが、当初用いていた毒性の指標について厚生労働省から30日に指導を受け、別の指標に基づく評価では大きく異なる症状を引き起こす可能性があるとのことから、深夜の緊急会見としたようです。

佐藤信行品質保証部長は、
『本来は「食べても健康に大きな影響を及ぼさない限度量(ARfD)」を指標として採用すべきだったが、「投与した動物の半数が死亡する量(LD50)」を基に毒性を評価していた。(毒性を評価する指標は)食品安全に関わる部署で検討したが知識がなく勘違いしていた。厚労省や保健所に相談するのも失念していた』
と釈明しました(毎日新聞より)。

今回は県警も捜査に乗り出して、犯罪の可能性もある現在進行形の事件ですが、29日の最初の記者発表から、アクリフーズではなく親会社のマルハニチロホールディングスが全面に出ての対応です。親会社のホールディングスと当事者のアクリフーズの社長が揃って会見し、全体の取り仕切りはホールディングスの広報IR部長。一連のホテルレストランの不適切表示問題の際、電鉄系の親会社が突き放すような対応をしていたのとは対照的です。

経済活動がストップしている年末で他に事件もなく、メディアでは大きく取り上げられていますが、総じて経営への批判的な声は少ないようです。原因と混入経路が判明するまでは何とも言えませんが、一部で発表の遅れと当初発表の毒性程度の過小評価に対する指摘や批判もあるものの、現時点での報道の姿勢は被害拡大を防ぐために事実を伝えようというものが中心です。
ただし、この発表された経緯と内容が正しいとした限りにおいてであり、通常の報道番組が全て終了し、特番ばかりになる29日を意図的に選んだということでないことを願うばかりです。


マスコミの関心は「誰が何のために犯行に及んだのか?」という事件性に移っていることでしょう。これから登場する人物や犯行の背景次第ではまた新たな展開に発展し、引き続き会社として緊張を強いられる対応が続く可能性もあります。

2013年12月5日木曜日

今度は第一三共ヘルスケアのアンチエイジング化粧品の販売中止

12月5日、製薬会社第一三共株式会社の子会社、第一三共ヘルスケア株式会社が、肌の刺激、かゆみや赤み、はれなどの症状があったことから、通信販売専用スキンケアシリーズ「ダーマエナジー」の販売を終了すると発表しました。

第一三共ヘルスケアのホームページの新着情報には
ダーマエナジーをお使いのお客様へのお詫びとお知らせ
のリンクが掲載されています。

このお詫びとお知らせには、

「ダーマエナジーは、ビタミン A(レチノール)誘導体などの各種ビタミンを高濃度で配合するとともに、独自の技術で肌への浸透度を高めたエイジングケア化粧品であり、お肌への効果を実感できると多くの方にご好評をいただいておりました。一方で、中には刺激を感じる方もあり、お肌のかゆみや赤み、はれなどの症状があったことから、一部のお客様には大変ご迷惑とご心配をおかけしました。このことを重く受け止めた結果、このたび弊社として、スキンケアシリーズ全品の販売中止を決定させていただいたものです」 
(以上お詫びとお知らせより)

とあります。
また、通販専用商品のため、商品の返品・返金方法などは個別に手紙で連絡をするそうです。

カネボウ化粧品の美白化粧品は、百貨店や化粧品店で販売する一般流通商品だったために、その回収や返金にも困難を極め、混乱を招いています。 7月4日の発表から5か月経った今でも、カネボウ化粧品のホームページは、「お詫びと自主回収についてのお知らせ」と、「白斑様症状確認数と症状の変化 最新データ」の更新情報で埋め尽くされています。

しかし、今回のダーマエナジーは通販専用商品であるため、個別に連絡・対応するということで詳細なデータはホームページ上では公表されていません。朝日新聞によると、これまでに計約13万7千個が販売され、症状を訴え、医療機関を受診した人は計約270人にのぼるということです。

ところで、第一三共ヘルスケアのホームページを開いてもう一つのお詫びとお知らせが有ることに気がつきました。日付は12月4日、ダーマエナジー販売終了発表の前日です。
個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」とするお知らせは、なんと「ダーマエナジー お試しキャンペーンのご案内」のダイレクトメール発送に際して、住所と名前が入れ違っていたというものです。11月22日に発送されたお試しキャンペーンの案内ですが、恐らくは利用者からの問い合わせに対応を検討していた最中に送られた物でしょう。個人情報漏洩のニュースだけでも、本来なら大きな問題となるのでしょうが、ダーマエナジー販売終了の影に隠れた形となってしまいました。
しかし、この二つは別々の事ではなく、カネボウ化粧品で非難された時と同様、被害の拡大を最小限に抑えるための経営判断の遅れと適切な社内の連携がなされなかったことが問題になることは避けられそうにありません。2週間早く販売を休止していれば、誤ったDMも発送していなかったし、その間に新たな被害者を増やすこともなかったのですから。
クライシス(の芽)に直面したとき、いかに早く適切な判断が必要かがここでも示されています。

今回は美白化粧品ではなくアンチエイジング(エイジングケア)化粧品。ここのところ成長著しいマーケットであるだけに、その影響も心配されます。

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2013年12月2日月曜日

猪瀬知事の会見を他山の石として

猪瀬都知事の、徳洲会からの借金に関する記者会見。
誰がどう見ても、おかしい。

この会見、猪瀬さん個人の問題なので、東京都の広報は何もフォローできなかったからでしょうか、支離滅裂でした。少なくとも、最初の会見以来二転三転する話(言い訳)に、誰も真実を語っているとは思っていないでしょう。この会見に関しては、各報道機関も評論家も様々な角度から言及しているので内容の真偽については触れませんが、他山の石として学ぶべき事は大いにありました。

一連のホテルレストラン食材不適切表示では、阪急阪神ホテルズの記者会見が、大きな企業グループであるにも関わらず統制の取れていない、その場しのぎの会見でした。最終的には社長の辞任となってしまいましたが、その会見でも辞任理由は阪急阪神グループに多大な迷惑と混乱をもたらしたからと言う内向きなものでした。利用者や顧客に対してではなく、阪急阪神グループに対して公開謝罪をしているような会見。恐らく、阪急阪神グループとしては、ホテルグループの問題だからと突き放したのではないでしょうか。グループとして市場や生活者に向くこと無く、グループ組織内の責任の取り方だけが見せつけられた辞任会見でした。


経営者でも朝令暮改はよく見られますが、政治家もその発言を2転3転させるものです。先日も小泉元総理が、即座に全ての原発を廃炉にするべきと発言し、首相当時に原発を推進していたのに何故?と自民党内からも困惑の声が上がっているようです。しかし、猪瀬都知事の会見での発言は方針変更などではなく言い訳であり、説明の中身が論理矛盾を起こしているところもあります。
議会などで舌鋒鋭い質問をする政治家のみなさんも、不適切発言や事務所経費の不明朗会計などでマスコミの前に立つと、突然しどろもどろになってしまうことはよく目にする光景。猪瀬知事も、政治家になる前は、行政の無駄遣いや矛盾を鋭く追求する立場でしたが、逆の立場になると他の政治家と同じでした。

都知事として議会やマスコミの前に立つときには、都庁の優秀なスタッフが想定質問に対してのQ&Aや反論資料を用意してくれてその場に臨んでいるはずです。しかし、個人として追求される立場になり一人で対応しなければならないとなると、猪瀬さんでも自分を客観的に見られなくなるようです。強いプレッシャーのもと、なんとかこの場を切り抜けたいという後ろ向きな心理状態で会見に臨み、質問に対して回答することだけに一生懸命になってしまい、理性を欠いた答弁になってしまったのかもしれません。普通に考えれば、事前に質問されることは想定可能のはずです(自分が誰よりも一番情報を持っているのですから)。入試で過去問を繰り返すように、事前に想定される質問に回答を準備していれば、論理矛盾もなく説明することができたはずです。しかし、猪瀬さんにはそれができませんでした。

今頃はきっと猪瀬さんも客観的に自分の記者会見を見て、どうしてあんなことになったんだろうと後悔をしていることでしょう。冷静になれば、すべきこと、すべきで無かったこと、反省点は山ほど見えているはずです。クライシスに対して一人で対応することは、それほどに難しく大変なのです。

事件・事故・不祥事などの予期せぬクライシスに際しては、一人だけ、社内だけで対応しようとすると、かえって難しい局面を招いてしまうことも珍しくありません。冷静な対応が求められるときこそ、第三者のアドバイスを求めることが解決への近道であることがほとんどです。
弁護士や(まっとうな)コンサルタント(もちろん、当社も)は、業務上の守秘義務を負っていますので、不都合なことでも外に漏らすことはありません。
問題が起きたときには、まずは信頼できる第三者に相談することが重要です。

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