2013年8月27日火曜日

ネットの炎上投稿、企業はどう対処すべきか

アルバイト従業員やお客様による不適切な行為をネットに投稿され、思わぬ所で被害を被る企業が続出しています。お客様からの投稿は、丸亀製麺のカビ問題のように普通は企業側に非が有りそれを指摘するものがほとんどです。しかしそこで働く従業員によるネットへの投稿は悪ふざけであり、炎上を受けてフランチャイズ契約を打ち切られたり、閉店したりと、莫大な被害額となることもあります。今後、投稿・炎上への対応を誤ったばかりに倒産へと自らを追い込む企業が出ないとも限りません。

ある日突然、ネットへ不適切行為が投稿され炎上すると、ネットの利用者はその現場を特定する行動に出ます。多くは自己アピールが目的なので、顔や名前を隠すことなく投稿されています。Facebookであれば、投稿がシェアされたら、名前もプロフィールも直ぐにわかる状態で広まっていきます。このような投稿をする者の場合、投稿へのアクセス制限もほとんどしていないでしょうから、プロフィールに書かれていなくても過去の投稿を見れば何処に住んでいるか、どこで働いているかも直ぐにわかってしまでしょう。そのため、「現場」も程なく特定されることとなります。寝耳に水の状態で、突然問い合わせや批判が集中し、暫くは何が起こったのかもわからないかもしれません。このとき、最初の対応を誤ると炎上の火に油を注ぐこととなってしまうのです。

写真などの事実として投稿されたものであれば、それを否定することなく早急に事実確認とともに投稿者と関係者の処分、その後の対応策を公表することが重要です。

内部告発に匹敵するインパクト

これまでに発覚しているのは「悪ふざけ」で起こした行為でしたが、これが店や上司、会社への不満を背景とする意図した炎上であったら……
一連の炎上報道を見て、困らせてやろうと故意に炎上させる者が出て来ないとも限りません。
その内容や投稿の仕方によっては、内部告発と同様あるいはそれ以上のインパクトを企業にも社会にも与える可能性だってあります。あるいは、内部告発そのものをネットにあげることも考えられます。意図した内部告発でも、ネットでの公開が「公益通報者保護法」の対象となるかは微妙ですが。

TwitterもFacebookも、架空の第3者を名乗ってアカウントを取得することは可能です。しかし、アカウントを取得してもそれを見てくれる人がいなければ意味がありませんから、もしも困らせることが目的なら、多くのフォロワーを獲得してからの投稿でなければなりません。そのためには有名人や誰かに「なりすまし」たり、フォロワーを多く獲得できる発信をし続けなければならず、そうでなければ会社を困らせるほどのインパクトは与えられません。実際にこの方法でやろうとすると、時間をかけて用意周到に事に及ぶわけですから、相当に根が深い恨みや社会的に許されざる事象を世に晒そうという意図があるはずです。
それだけに、実際に実行に移された際のインパクトは計り知れないものがあります。

どうやって防ぐか

悪ふざけであろうと、このような投稿をされてはたまったものではありません。まずはこのような行動を起こさせないことです。第一には不正のない職場、会社へのロイヤリティを高める企業風土作りでしょう。しかし、これには長い時間がかかります。今すぐにできることは、新規採用時にはもちろん、在職者へも個人的な行為で会社やお店に迷惑をかけたり損害を与えた場合には、損害賠償請求することもあると文書などではっきり伝え、自覚させることです。ソーシャルメディアの利用についても、制限や注意喚起、あるいは教育も必要でしょう。
もう一つは、スマートフォンなどを職場に持ち込ませないこと、使用できる場所と時間に制限を設けること。最先端の技術や個人情報を扱う工場やオフィスでは当たり前になりつつありますが、入室前に預かる、ロッカーに入れるよう徹底することも選択肢の一つです。入退室時に金属探知機を通るという工場もあるくらいです。

ネットやソーシャルメディアの普及で、これまでは想定していなかったトラブルがいつ降りかかるかわからない時代になってきたということです。

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2013年8月21日水曜日

秋田書店のプレゼント水増し、景品表示法違反

8月20日、消費者庁は、株式会社秋田書店に対し、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令を行いました。
秋田書店が供給する漫画雑誌の懸賞企画に係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第4条第1項第2号(有利誤認)に該当)が認められたというものです。新聞、テレビなどで報道され、WEB上でも話題になっています。

具体的には、「ミステリーボニータ」「プリンセス」「プリンセスGOLD」の漫画雑誌3誌の懸賞企画において、誌面に掲載された当選者数を実際の当選者数より水増ししていたものです。上記措置命令にその詳細が明示してあります。

この報道に接して、育児情報誌mikuの発行人として、あるいはかつて複数の情報誌の編集長を経験した当事者として振り返ってみます。

まず、同じ出版に関わる者として言えることは、読者アンケートは非常に重要なものであるということ。多くの読者の意見を収集するためには、魅力的なプレゼントを用意する必要があると考えるのは極普通の発想です。しかし、プレゼントを準備し、厳正な抽選で当選者を決定し、賞品を発送するというルーチン作業は結構な負荷がかかります。当選者の数が増えればますます大変になりますし、個人情報の取り扱いも慎重にしなければなりません。これが月間や隔週刊、週刊ともなれば大変な作業となり、多くの出版社では、アンケートの集計から賞品の発送作業までをパッケージで外注するところが多くなっています。

それを前提で、「どうしてそんな水増しをする必要があったのか?誰がそれを指示したのか?」という疑問が沸いてきます。これに対して、秋田書店側は「無償で提供してもらっていた景品が不況で減ったから」とコメントしています。要は、自前で豪華賞品を用意することになってコストがかさみ、編集原価が上がるので水増しした、ということでしょうか。しかし私の経験では、当選者数の多さよりも賞品の善し悪しの方が読者の関心事です。当たる確率よりも貰える賞品の良さに期待します。そんなことは読者アンケートで一度でも尋ねてみればわかる事です。同じプレゼントでも、豪華賞品のそれぞれの当選者数を増やさずとも、小さな賞品でも総数でバランスをとることだってできたはずです。
それよりも、愛読者・ファンであれば誌面作りに協力したいという意識も強く働きます。読者アンケートはオープン懸賞ではないので、プレゼントは当たればラッキーくらいの気持ちで応募してくれている人も多いでしょう。そんな読者の気持ちを裏切ったということを、重く感じ取らなければなりません。

また、雑誌ごとの収支は編集長の責任であり評価につながります。販売部数(収入)、広告収入に対して原価、人件費などをコントロールしなければなりません。部数が順調に伸び、販売収入・広告収入が増えていれば、その分編集原価も余計にかけることができます。読者プレゼントや販促経費も増やせます。今回、このようなことが常態化していたということは、部数も広告収入も低迷していたことをうかがわせるものです。編集長の指示だったと考えるのが順当でしょう。読者や執筆者にとっては、今回の不祥事発覚を機に3誌が休刊に追い込まれる(きっかけを与える)事に繋がらなければと願うばかりです。

ところで、当事者でないと知り得ないような不正を、どうして消費者庁が知ったのでしょうか?これは、懸賞を担当していた女性社員がこの水増しの不正を改善するように訴えたことで不当解雇されたとして「首都圏青年ユニオン」に駆け込んだことが発端の様です。これにより、内部告発であったことがわかります。この経緯を見ると、先日放送されていたNHKのドラマ「7つの会議」そのものです。
不正をしない、許さない企業風土・組織作りは、会社の歴史と大きさに比例して難しくなるもののようです。


さて、これからの興味関心事としては、これが会社ぐるみでやっていたのか?
秋田書店ほどの大手がやっているのなら、他の出版社もやっているんじゃないか?
ましてや中小出版社やフリーペーパーの懸賞はどうなのか?
もっと言えば、世の中に溢れる懸賞の類い、特にNET上のキャンペーンへの不信感は一気に高まったのではないでしょうか。
これまでも、今回のような事件発覚をきっかけに、同様の不正が立て続けに発覚するということがありました。秋田書店だけで収束することを願うばかりです。

※当社で発行している育児情報誌miku、WEBサイト【こそだて】の読者アンケート・プレゼントは、外注こそしていないものの、担当スタッフが毎回確実丁寧に発送させていただいています。


2013年8月5日月曜日

待ち受けるカネボウ・花王の苦悩

7月30日、カネボウ化粧品の親会社である花王の沢田道隆社長は「グループ一丸となって原因究明と再発防止に取り組む」と記者会見で明言しました。この瞬間から、美白化粧品による「白斑様症状」を引き起こした問題は、カネボウ化粧品の問題から花王グループの問題へとステージを替えました。
今期の花王グループの売り上げへの影響は100億円に達するとみられており、美白化粧品だけでなく他の化粧品についても買い控えが出ているようです。
この30日夜のマスコミ各社の報道では、2011年から消費者の問い合わせがあったとあります。2年前の問い合わせの段階で「異常」と判断していれば事態は全く変わっていたでしょう。

ところで、当社ブライト・ウェイへのアクセスの経路では当然検索エンジンからが一番多いのですが、その検索ワードで多いのが「不祥事」なのです。もちろん、不祥事のニュースを検索してる訳ではなく、不祥事に対する対応策を探してたどり着いているようです。事実、担当者レベルで不安に感じて相談のご連絡を受けることもあります。しかし、現場の不安が経営を動かすことはなかなかありません。当社に相談をしたことで、担当者が突然移動になったり配置転換、あるいはいわれのない降格というケースさえもありました。今回のカネボウ化粧品でも、ひょっとしたら現場では「異常」のサインだと感じていたのに、上司や組織がそれを「別な原因にすり替え」ていたり、「見て見ぬふり」をしたりと「握りつぶしていた」のかもしれません。

カネボウ化粧品の話題に話を戻すと、7月4日最初の公表時には、美白化粧品の使用を止めれば回復するとされていました。しかし、1ヶ月を経過した現在では「回復」どころか被害者の数は拡大するばかりです。
7月23日の お詫びと自主回収発表後の状況、並びに弊社の対応について(第2報) には「当該製品を使用し、白斑様症状を発症したお客様には、完治するまで責任をもって対応する」とあります。
考えたくはありませんが、2008年にサイゼリヤでレシートがなくてもピザの返金に応じるとしたときに、食べてもいないで食べたと偽って返金請求をした者が少なからず出ました。カネボウ化粧品のケースでもそのような人が現れないとは言えません。また、使用を中止して症状は改善し、本人は安心しているところに友人知人、親戚がけしかけて慰謝料を要求するようなことも今後考えられます。私自身が関わった事故でも、初期の謝罪対応で被害者本人とはスムーズに収束するかに思われたのに、途中から家族や周囲の入れ知恵で応対が豹変し、想定外に時間を要したケースもあります。
また、今回のカネボウ化粧品のケースでは、問題とされている美白化粧品の原料「医薬部外品有効成分“ロドデノール”4‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐ブタノール」については、厚生労働省の認可を受けて使用している原料でもあり、現時点で当該原料と発症との因果関係が明確に立証されているわけでもありません。2011年の段階で、「白斑症状の発症と商品使用との間に、因果関係がある可能性を否定できない」として使用中止・製品回収をしていれば企業としてお客様の安心を優先した「自主回収」と受け止められて収束していたはずです。しかし、そこから2年も「放置」したことによって被害者の数は増え、対応のステージは変わってしまいました。
ロドデノールを認可した厚生労働省の面子もあるでしょうから、発症の原因物質、あるいは発症に至る使用条件が特定されるまでは時間がかかるでしょう。あるいは原因を特定できないまま「迷宮入り」するかもしれません。そうなると、「完治するまで責任をもって対応する」とする範囲と時間の拡大解釈で、花王グループがいくらの負担を強いられるのか見当がつきません。

大きな事故や事件には、初期に小さなサインが発せられているものです。そのサインを見逃さないこと、見て見ぬふりをしないことがお客様の被害も企業のダメージも拡大させないポイントだということを、今回改めて気づかせてくれることとなってしまいました。

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