2013年12月31日火曜日

子会社任せにしなかったマルハニチロホールディングス

大晦日の12月31日。特番ばかりになって数少ない朝の報道番組を見ていたら、未明にマルハニチロホールディングスの記者会見があったと伝えていました。大晦日に上場企業の社長が出席する緊急記者会見は異例とも言えます。

発端は、12月29日。アクリフーズの冷凍食品から有機リン系農薬「マラチオン」が検出されたと、親会社のマルハニチロホールディングスの久代敏男社長とアクリフーズの田辺裕社長らが都内で記者会見を行いました。

農薬が検出されたのは、アクリフーズ群馬工場で製造された冷凍ピザなどで、同工場で製造された90品目全てを回収するという内容です。すでに群馬工場での生産をストップし、原因が判明するまで工場の再開は無いとしています。30日の段階で、店頭からはアクリフーズの冷凍食品は撤去されて棚が空いている店舗もあるようです。

お詫びと自主回収のお知らせは、アクリフーズの名前で出されています。群馬工場で製造された商品は、賞味期限にかかわらず全て回収、返品に応じるとあります。発表までの経緯の詳細は株式会社マルハニチロホールディングスと株式会社アクリフーズの名前で出された

「株式会社アクリフーズ群馬工場生産品における農薬検出について」

で知ることができますが、30日に群馬県の立ち入り調査の結果、群馬工場の製造工程では該当する農薬が混入する可能性は低いと結論づけています。しかも、回収した商品から検出された農薬の濃度にばらつきがあるため、意図的・人為的な混入の可能性も視野に入れて、群馬県警も捜査に乗り出しました。

そして、本日31日未明、再び緊急記者会見し、最高濃度(1万5000ppm)が検出されたコーンクリームコロッケを体重20キロの子供が約8分の1個食べると、吐き気や腹痛などの症状を起こす可能性があると発表しました。

「株式会社アクリフーズ群馬工場生産品における農薬検出について」第二報

29日の会見では、1度に60個のコロッケを食べなければ毒性 は発症しないとしていましたが、当初用いていた毒性の指標について厚生労働省から30日に指導を受け、別の指標に基づく評価では大きく異なる症状を引き起こす可能性があるとのことから、深夜の緊急会見としたようです。

佐藤信行品質保証部長は、
『本来は「食べても健康に大きな影響を及ぼさない限度量(ARfD)」を指標として採用すべきだったが、「投与した動物の半数が死亡する量(LD50)」を基に毒性を評価していた。(毒性を評価する指標は)食品安全に関わる部署で検討したが知識がなく勘違いしていた。厚労省や保健所に相談するのも失念していた』
と釈明しました(毎日新聞より)。

今回は県警も捜査に乗り出して、犯罪の可能性もある現在進行形の事件ですが、29日の最初の記者発表から、アクリフーズではなく親会社のマルハニチロホールディングスが全面に出ての対応です。親会社のホールディングスと当事者のアクリフーズの社長が揃って会見し、全体の取り仕切りはホールディングスの広報IR部長。一連のホテルレストランの不適切表示問題の際、電鉄系の親会社が突き放すような対応をしていたのとは対照的です。

経済活動がストップしている年末で他に事件もなく、メディアでは大きく取り上げられていますが、総じて経営への批判的な声は少ないようです。原因と混入経路が判明するまでは何とも言えませんが、一部で発表の遅れと当初発表の毒性程度の過小評価に対する指摘や批判もあるものの、現時点での報道の姿勢は被害拡大を防ぐために事実を伝えようというものが中心です。
ただし、この発表された経緯と内容が正しいとした限りにおいてであり、通常の報道番組が全て終了し、特番ばかりになる29日を意図的に選んだということでないことを願うばかりです。


マスコミの関心は「誰が何のために犯行に及んだのか?」という事件性に移っていることでしょう。これから登場する人物や犯行の背景次第ではまた新たな展開に発展し、引き続き会社として緊張を強いられる対応が続く可能性もあります。

2013年12月5日木曜日

今度は第一三共ヘルスケアのアンチエイジング化粧品の販売中止

12月5日、製薬会社第一三共株式会社の子会社、第一三共ヘルスケア株式会社が、肌の刺激、かゆみや赤み、はれなどの症状があったことから、通信販売専用スキンケアシリーズ「ダーマエナジー」の販売を終了すると発表しました。

第一三共ヘルスケアのホームページの新着情報には
ダーマエナジーをお使いのお客様へのお詫びとお知らせ
のリンクが掲載されています。

このお詫びとお知らせには、

「ダーマエナジーは、ビタミン A(レチノール)誘導体などの各種ビタミンを高濃度で配合するとともに、独自の技術で肌への浸透度を高めたエイジングケア化粧品であり、お肌への効果を実感できると多くの方にご好評をいただいておりました。一方で、中には刺激を感じる方もあり、お肌のかゆみや赤み、はれなどの症状があったことから、一部のお客様には大変ご迷惑とご心配をおかけしました。このことを重く受け止めた結果、このたび弊社として、スキンケアシリーズ全品の販売中止を決定させていただいたものです」 
(以上お詫びとお知らせより)

とあります。
また、通販専用商品のため、商品の返品・返金方法などは個別に手紙で連絡をするそうです。

カネボウ化粧品の美白化粧品は、百貨店や化粧品店で販売する一般流通商品だったために、その回収や返金にも困難を極め、混乱を招いています。 7月4日の発表から5か月経った今でも、カネボウ化粧品のホームページは、「お詫びと自主回収についてのお知らせ」と、「白斑様症状確認数と症状の変化 最新データ」の更新情報で埋め尽くされています。

しかし、今回のダーマエナジーは通販専用商品であるため、個別に連絡・対応するということで詳細なデータはホームページ上では公表されていません。朝日新聞によると、これまでに計約13万7千個が販売され、症状を訴え、医療機関を受診した人は計約270人にのぼるということです。

ところで、第一三共ヘルスケアのホームページを開いてもう一つのお詫びとお知らせが有ることに気がつきました。日付は12月4日、ダーマエナジー販売終了発表の前日です。
個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」とするお知らせは、なんと「ダーマエナジー お試しキャンペーンのご案内」のダイレクトメール発送に際して、住所と名前が入れ違っていたというものです。11月22日に発送されたお試しキャンペーンの案内ですが、恐らくは利用者からの問い合わせに対応を検討していた最中に送られた物でしょう。個人情報漏洩のニュースだけでも、本来なら大きな問題となるのでしょうが、ダーマエナジー販売終了の影に隠れた形となってしまいました。
しかし、この二つは別々の事ではなく、カネボウ化粧品で非難された時と同様、被害の拡大を最小限に抑えるための経営判断の遅れと適切な社内の連携がなされなかったことが問題になることは避けられそうにありません。2週間早く販売を休止していれば、誤ったDMも発送していなかったし、その間に新たな被害者を増やすこともなかったのですから。
クライシス(の芽)に直面したとき、いかに早く適切な判断が必要かがここでも示されています。

今回は美白化粧品ではなくアンチエイジング(エイジングケア)化粧品。ここのところ成長著しいマーケットであるだけに、その影響も心配されます。

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2013年12月2日月曜日

猪瀬知事の会見を他山の石として

猪瀬都知事の、徳洲会からの借金に関する記者会見。
誰がどう見ても、おかしい。

この会見、猪瀬さん個人の問題なので、東京都の広報は何もフォローできなかったからでしょうか、支離滅裂でした。少なくとも、最初の会見以来二転三転する話(言い訳)に、誰も真実を語っているとは思っていないでしょう。この会見に関しては、各報道機関も評論家も様々な角度から言及しているので内容の真偽については触れませんが、他山の石として学ぶべき事は大いにありました。

一連のホテルレストラン食材不適切表示では、阪急阪神ホテルズの記者会見が、大きな企業グループであるにも関わらず統制の取れていない、その場しのぎの会見でした。最終的には社長の辞任となってしまいましたが、その会見でも辞任理由は阪急阪神グループに多大な迷惑と混乱をもたらしたからと言う内向きなものでした。利用者や顧客に対してではなく、阪急阪神グループに対して公開謝罪をしているような会見。恐らく、阪急阪神グループとしては、ホテルグループの問題だからと突き放したのではないでしょうか。グループとして市場や生活者に向くこと無く、グループ組織内の責任の取り方だけが見せつけられた辞任会見でした。


経営者でも朝令暮改はよく見られますが、政治家もその発言を2転3転させるものです。先日も小泉元総理が、即座に全ての原発を廃炉にするべきと発言し、首相当時に原発を推進していたのに何故?と自民党内からも困惑の声が上がっているようです。しかし、猪瀬都知事の会見での発言は方針変更などではなく言い訳であり、説明の中身が論理矛盾を起こしているところもあります。
議会などで舌鋒鋭い質問をする政治家のみなさんも、不適切発言や事務所経費の不明朗会計などでマスコミの前に立つと、突然しどろもどろになってしまうことはよく目にする光景。猪瀬知事も、政治家になる前は、行政の無駄遣いや矛盾を鋭く追求する立場でしたが、逆の立場になると他の政治家と同じでした。

都知事として議会やマスコミの前に立つときには、都庁の優秀なスタッフが想定質問に対してのQ&Aや反論資料を用意してくれてその場に臨んでいるはずです。しかし、個人として追求される立場になり一人で対応しなければならないとなると、猪瀬さんでも自分を客観的に見られなくなるようです。強いプレッシャーのもと、なんとかこの場を切り抜けたいという後ろ向きな心理状態で会見に臨み、質問に対して回答することだけに一生懸命になってしまい、理性を欠いた答弁になってしまったのかもしれません。普通に考えれば、事前に質問されることは想定可能のはずです(自分が誰よりも一番情報を持っているのですから)。入試で過去問を繰り返すように、事前に想定される質問に回答を準備していれば、論理矛盾もなく説明することができたはずです。しかし、猪瀬さんにはそれができませんでした。

今頃はきっと猪瀬さんも客観的に自分の記者会見を見て、どうしてあんなことになったんだろうと後悔をしていることでしょう。冷静になれば、すべきこと、すべきで無かったこと、反省点は山ほど見えているはずです。クライシスに対して一人で対応することは、それほどに難しく大変なのです。

事件・事故・不祥事などの予期せぬクライシスに際しては、一人だけ、社内だけで対応しようとすると、かえって難しい局面を招いてしまうことも珍しくありません。冷静な対応が求められるときこそ、第三者のアドバイスを求めることが解決への近道であることがほとんどです。
弁護士や(まっとうな)コンサルタント(もちろん、当社も)は、業務上の守秘義務を負っていますので、不都合なことでも外に漏らすことはありません。
問題が起きたときには、まずは信頼できる第三者に相談することが重要です。

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2013年11月15日金曜日

Child Care Resource Centre に代わるのは日本では?

BC州の保育・育児支援に重要な役割を担っているのが、Child Care Resource Centreです。


West Coast Child Care Resource Centreは25年前にBC州で最初に設立された非営利の組織(NPO)で、BC州政府、バンクーバー市からの助成と、いろいろな組織からの援助・寄付、加えて出版物やマニュアルの製作、イベントなどの事業収入からなりたっています。


West Coast Child Care Resource Centreは、大きく3つの機能を持っています。

1,育児・保育に関する情報を提供・発信
2,育児支援を受けたい人のサポート(経済支援のための申請サポート)
3,育児の質を高めるための保育・育児従事者へのサポート




LINDA WHEELER
Information Advisor



1,子育て家族に向けた情報提供
保育情報を探している人に、 最適な施設を紹介したり、地図や情報を提供しています。リスト
(住所や施設概要、空き状況、料金など網羅)は毎月最新のものにアップデートされています。様々な統計情報もまとめています。

電話やメール、WEBサイトを通して日々問い合わせが入ってきます。日本と違って多くの国の言
葉の人がいるので、保育園やデイケアを探すときの条件には、対応する言語がまず指定されます。その上で、場所や料金などの様々な情報で絞り込んでいきます。もちろん、WEBサイトでも情報はアップデートしています。病院やクリニックなどにも情報提供していて、そこで情報収集する人もいます。バンクーバーでは、デイケアの順番待ちになるので、妊娠したら情報収集を開始するそうです。

子どもの預け先の種類はいくつかありますが(BC州政府訪問記事参照)、有資格の預け先はグループデイケアとファミリーデイケアの2つに別れます。

グループデイケアは、0歳から36か月までの子どもを預かります。コミュニティセンターやYMCAなどが運営している大きな施設です。ファミリーデイケアは個人宅での預かりです。0歳から12歳まで、7人までの子どもを預かることができます。
保育・託児料金はグループデイケアの方がファミリーデイケアよりも高くなります。施設充実し、スタッフも豊富で、ファミリーデイケアより高いサービスを提供するからです。ファミリーデイケアだと、一人で赤ちゃんも幼児も(年齢の違う子を)一緒に面倒見ますが、グループデイケアでは、年齢毎に担当者を分けたりクラスを分けたりして、より細やかなサポートが受けられます。

2,経済支援サービスのサポート
デイケアは毎年料金が上がっており、この1年で平均6%も上がっています。そのため、デイケアに子どもを預けたくても高くて預けられないだけでなく、仕事が無いとか病気で働けないなどで十分な収入が確保できない家庭もあります。
そのような家庭には、政府の支援を受けるためのサポートもしています。支援を受けるためには、様々な書類を作成して、州政府に提出しなければなりません。その手助けをしています。政府の窓口に直接行くのはハードルが高い、窓口が開いている時間(9時~17時)に相談に行けない人などに、もっとフレンドリーな相談窓口として夜まで対応しています。

3,育児の質を高めるための保育・育児従事者へのサポート
育児・保育に関する大きなライブラリーを備え、保育・育児従事者向けのワークショップ、教育マニュアルの製作と提供、ECE(Early Childhood Educator)資格取得と更新のためのプログラムもここで実施しています。
デイケアに従事するにはライセンスを取得する必要があり、Child Care Resource Centreがそのライセンスプログラムを作成しています。3人以上の子どもを預かるためにはライセンスが必要です。2人以下の子どもを預かるのにはライセンスは必要有りません。
ブリティッシュコロンビア州の子育て支援参照

ライセンスのカテゴリーは、グループデイケアとファミリーデイケアとに別れています。
5年ごとの更新では、48時間のトレイニングが必要で、なおかつ500時間の実務経験が前提となります。大学の資格取得の授業で使われる教材なども、ここで作っているプログラムを使ってます。特徴的なのは、ダーバーシティへの対応。BC州は、様々な国籍や肌の色、言葉や文化が違う人が暮らしているので、ダイバーシティに関する教育プログラムは重要です。

図書館には、さまざまな図書だけでなく、子ども達と一緒に工作したり遊んだりするプログラムの教材や指導パッケージ、肌の色や言葉・文化の多様性を子ども達に学ばせるツール、子ども部屋のシミュレーションスペース、貸し出し用のイベントグッズなど多彩な物がストックされていました。また、要望に応じて出張プログラムや出張イベントにも対応しているそうです。

9月に、日本の大学教授がやはりヒアリングに訪れていたそうです。

日本で、この Child Care Resource Centre に代わる役割を集約してもつ組織や施設は見当たらないようです。
※人口が少ない地方都市では、ワンストップで情報提供する組織や施設があります。

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2013年11月11日月曜日

「じぇじぇじぇ」「倍返し」が商標出願されて登録は叶うのか?

先週、あるブランドの日本正規代理店で、国内での販売と商標使用権を独占的に認められているクライアント様から相談を受けました。
その会社は、これまで長年かけて日本で地道に普及活動をし、マーケットを作ってきました。だんだんとブランドの認知も高まりこれからというところで、あることからそのブランドが注目されることになりました。ところが注目されたことで、めざといネット通販会社が続々並行輸入品を取り扱うようになったのです。本来ならもっと売り上げが伸びているはずなのに、ジリジリと売り上げに影響が出てきたということでした。
この相談についての具体的なアドバイスはここでは書けませんが、このことで並行輸入品と商標権について調べ物をしていました(並行輸入品が商標権の侵害を理由に販売停止できるかについては、現在では並行輸入品というだけでは販売差し止めは難しいようです)。そこに「じぇじぇじぇ」が商標出願されていたというニュースです。ドラマのロケ地となった久慈市で「じぇじぇじぇ」という名前の菓子を製造販売している菓子店が、5月に出願していたということでした。

 当社でもいくつかの商標を登録しています。その中の1つが「こそだて」ですが、「こそだて」は一般名称で登録はできません。意外なところでは、「松ノ湯」や「二八そば」などの同じ名称で多く存在する屋号も、商標登録することができないといいます。そこで、【こそだて】はロゴを意匠として登録しました。
 それでは、「じぇじぇじぇ」はどうなのでしょうか?
確かに、ある地方だけで使われる面白い単語は多く存在します。語源ハンターのわぐりたかしさんの本にたくさん紹介されていますが、他にもその地方以外ではまず通じないような知らない言葉はたくさんあります。身近な動植物の名前も、地方毎にさまざまな名前で呼ばれています。その地方では「一般的な言葉」であっても、東京では誰も知らないので「オリジナルの造語」と言ってもわからないでしょう。特許庁に商標の出願をしても、何の違和感も無く受理されるに違いありません。「じぇじぇじぇ」が出願されたのは5月といいますから、「あまちゃん」は既に話題にはなっていたはずですが、霞ヶ関の皆さんが見ていたかどうかはわかりません。「じぇじぇじぇ」も、「あまちゃん」の中で使われるまで、他の地方の人はまず知らない、使わない言葉でした。

 同様に、テレビドラマ「半沢直樹」で有名になった「倍返し」もサンヨー食品が9月に商標出願をしていたということで話題になっています。「じぇじぇじぇ」は、先に商品の販売があり、それを守るための「防御」としての商標出願のようですが、「倍返し」は先に出願ありきの雰囲気が濃厚です。

いずれも実際に登録されるまでには、特許庁の審査や異議申し立て期間をクリアしなければならないので、すんなり登録されるとはかぎりません。しかし、もしも「じぇじぇじぇ」や「倍返し」の商標登録が認められたら、次の「じぇじぇじぇ」「倍返し」を求めて、ヒットしそうなドラマや朝ドラ、大河ドラマをチェックして、決めぜりふを片っ端から商標出願する者が現れそうです。

逆に将来、自社の商品名が話題の決めぜりふや言葉と同じになることだってあり得ます。そんな時に他社から商標を先願される場合も考えられます。また、自社の商品・サービス名称が、知らない間に他社が所有する商標の権利侵害をしていることがあるかもしれません。
今一度、自社の商品やサービス名称について、商標登録の必要がないか、権利を侵害していないか、手遅れにならないよう検討・検証しておきましょう。

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2013年11月10日日曜日

Nobody's Perfect (ノーバディズ パーフェクト)発祥の国で、現状を聞いて来ました

日本でも注目されている、カナダ生まれの子育て中の親支援プログラム“Nobody’s Perfect”。「完璧な親は居ない」という前提で、可能な限りのことをすれば良い、できなければみんなで助け合いましょうというそのプログラム。日本でもNobody's Perfect JAPANがスタートし、普及活動をしています。日本語に翻訳したテキストも出版しています。

発祥の国カナダ、BC州のNobody’s Perfectの活動について、BC Council for Families のプログラムコーディネーター Ruby Banga さんにお話しを伺ってきました。
Ruby Banga氏

プログラムは0歳から5歳くらいの子の親を対象に、1回2時間で6週間のプログラムを実施します。プログラムのテーマは5つです。

  BODY/からだ
  SAFETY/安全
  MIND/こころ
  BEHAVIOUR/行動
  PARENTS/親

参加費は無料(政府が負担)で、参加するのにバス代などの交通費も払えないような家庭には、バスの切符を支給することもあります。

プログラムには決まったカリキュラムはありません。

初回集まった時に、参加者がトピックを出し合い、ワークショップ形式でみんなで話し合いながら進めます。心を許して話ができるように、初回はトレーナーがうまくファシリテートします。プログラムを通して、ファシリテーター(トレーナー)は先生ではなくガイドに徹します。育児の専門家としてではなく、参加者全員でいっしょに問題を解決するためにサポートする役割を担っています。
プログラムへの参加呼びかけは、カウンシルから個別には特にしません。
プログラムに参加を希望する人はクチコミやインターネットなどで知ったり、探して来ます。多くはカウンシルのWEBサイトなどに告知しているプログラムを見て、参加申し込みをします。また、ファシリテーター(トレーナー)や会場ごとでもWEBサイトにイベント告知などしていますので、それを見て参加する人もいます。会場から選ぶ人もいれば、プログラムから探す人もいます。
看護師さんやお医者さん、ソーシャルワーカーなどが紹介したり参加を勧めるケースもあります。昨年ですと年間約1400人が参加を希望し、6週間のプログラムを終了したのは980人くらい(BC州で)。プログラムの参加者は、母親だけでなく祖父母や父親もいます。父親向けのプログラムもあります。バンクーバーは多国籍・多言語の人が暮らしているので、言葉も英語だけでなくフランス語、スペイン語、中国語、パンジャビ語(インド地方の言葉)、日本語……多くの言葉に対応しています。

6週間のプログラムを終了すると、完了証が渡されます。

ファシリテーター(トレーナー)を育てるコースは有料(カナダ$385)で、4日間のハードな内容です。BC州で年間75人程度がトレーナーとして登録されます。


また、実際のプログラムを覗くこともできました。写真中央オレンジ色の服の女性がファシリテーターで、参加者は、Facebookやスーパーの掲示板などで今回のプログラムを知り、申し込んだと言うことでした。
日本では、秋田県など積極的に導入する自治体も現れているようですが、まだまだ認知は今ひとつ。正解の無い子育てに、みんなで話し合いながら取り組むためには、ファシリテーターの養成から始めなければなりません。話しあうことは一人ではできませんから、参加者を募る告知や紹介の機能も必要です。
カナダでは、歴史に培われた認知と州政府が全体のプログラムをコントロールしている安心感もあります。参加者の費用負担もありません。日本での普及にはまだまだハードルが高そうです。

※取材日は2013年10月10日(現地時間)です。

 Child Care Resource Centre に代わるのは日本では?


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2013年11月5日火曜日

何故今頃?高島屋や大丸松坂屋などの百貨店も……

いつまでメニューに関してブログを書き続けなければならないのでしょうか。

10月22日の阪急阪神ホテルズの記者会見から一気に広がった、ホテル・レストランのメニュー誤表記問題。それも、思い当たるところは社内調査を終えて、3連休前の先週11月1日にはあらかた公表すると思っていました。連休中の「三笠」のバンビ御前のアレルギー食品に関わる記者会見は、これまでの不適切表記とは次元が違っています。批判を甘んじて受ける覚悟で公表したその姿勢には褒められることではないものの、一応の責任感は感じられました。

しかし、今日になって会見や公表をした東急ホテルズや百貨店。
東急ホテルズは、既にニュースバリューが低下して、ほとんど扱いも小さくなっているのでひょっとしたらそれを狙ったのかもしれませんが。一方、百貨店の高島屋は、エビやステーキで誤表記があったと常務が記者会見をし、テレビの報道番組などで大きく取り上げられました。
どうして今日だったのでしょう?

普通に考えれば、この3連休は百貨店にとっては稼ぎ時です。寒くなり始めて遅れていた秋冬物の衣料品を買い求める人も多いでしょうし、お節やクリスマスケーキの予約も見込めます。それなのにわざわざ3連休前に公表すれば、客足は遠のくし売り上げも大きく落ち込むことになるでしょう。
そんな社内的な力関係で発表を連休明けにしたのではないでしょうか。

百貨店の地下食品売り場-デパ地下は、高くても本物が手に入るところだから足を運ぶのであり、その信頼感の傘の下に名だたるテナントの顔ぶれが有ったわけです。しかし、その信頼が崩れると、さて、どうなるのでしょう?
お歳暮の「薔薇の包み紙」の神通力にも陰りが出る-お歳暮は他の百貨店から?あるいは百貨店ではなくショッピングモールなどのそれぞれの専門店からと考える人も出てくるかもしれません。

3連休前、ホテルが一斉に公表したタイミングに紛れて公表するのが良かったのでしょうか?それとも3連休の売り上げにこだわって、連休明けに単独で注目されることになる記者発表が良かったのでしょうか?
後ろに大きなイベントを控えているのであれば、できるだけ早く、できるだけダメージが小さくなるような発表方法を考えるべきでした。この3連休で購入したお客様さえも裏切り、落胆させることになり、お歳暮商戦にもさらなる影響が出ることになるかもしれません。

今年のお節料理の原価率は高くなる?

この夏、バナエイエビを始めとする海老の生産が落ち込み、お正月を前に海老の調達が難しくなっているようです。ただでさえ食材に対する目が厳しくなっているのに海老が手に入りづらい状況に、お節の予約を受け付ける印刷物は既に配布済みです。今更告知した海老や食材と違う物を使うことはあり得ません。当初予定していた偽装食材から、印刷物などで事前に告知した表記の食材を使うことで、これまでにない原価率のお節料理が流通することになるかも知れません。購入する私たちにとっては、今年はお買い得の年になるのかもしれません。

新たな百貨店や有名レストランの不適切表記・偽装が明るみに出ることがないことを祈るばかりです。


11月6日11時追記

大丸松坂屋は、昨年販売した「フォション 洋風二段」に入っていた「車海老のテリーヌ」の材料がブラックタイガーだったことで返金に応じるとしました。お詫びとお知らせには「ご予約販売のため、お買上げのお客様は特定可能ですので、個別にご連絡のうえご返金させていただきたいと考えております」とあります。博多大丸天神店でも7件の販売があったそうです。また、今年の販売は中止し、すでに10件ほどの予約をいただいたお客様には返金か他の商品への切り替えで対応するということです。
※大丸のホームページには上記「お詫びとお知らせ」はリンクしてありましたが、博多大丸天神店のホームページには何も表記されていません(11月6日午前11時時点)。


2013年11月4日月曜日

世界ブランドのホテルの名に傷を付けた代償は?

一連のホテルメニュー不適切表示(客観的には偽装表示)の舞台に、ザ・リッツ・カールトンを皮切りにハイアットリージェンシーやシェラトン、ウェスティンといったグローバルブランドのホテルの名前も並びました。

新聞報道などから拾うと

ザ・リッツ・カールトン大阪  (阪急阪神ホテルズ)
ハイアットリージェンシー東京 (小田急ホテル)
シェラトン都ホテル東京 (近鉄ホテルシステムズ)
ウェスティン都ホテル京都 (近鉄ホテルシステムズ)
シェラトン都ホテル大阪 (近鉄ホテルシステムズ)
ルネッサンスサッポロホテル (マリオットインターナショナルとフランチャイズ契約)

などでメニューの不適切表示があったほか、ミシュランの星を獲得したホテル・旅館やレストランでも不適切表示を公表しています。

これまでの経験では、海外の企業と契約しビジネスをする際には、微に入り細に入り細かな条件が付くことが普通です。ロゴの使用方法からWEBサイトのデザインにまで本国・本部のチェックが必要なのは当たり前です。 それぞれのホテルグループが持つ会員プログラムにも対応しなければなりません。ブランドを毀損するような行為やそのような可能性に対しては厳しく規制をかけ、それを破ったりブランドに傷を付けるような行為にはそれ相応のペナルティを課すと、事前に契約書の中に盛り込まれています。

ミシュランに対しては契約が存在するわけでは無いので、ミシュランガイドの信用や権威を毀損する可能性はあっても、損害賠償請求することはできないでしょう。しかしフランチャイズや提携で世界的なホテルブランドと契約を結んでいると、契約時の条件次第では莫大な損害賠償や契約解除の通達を言い渡される可能性もあります。
どのホテルグループも、会員プログラムを持っており、世界中に会員を抱えています。その会員に対しての責任があります。今回の不適切表示(偽装)に対して、各ホテルグループは会員に対して何らかの告知と案内が必要になる(と主張される可能性)でしょう。何もしないと、不作為を理由に、あるいは不義・不実行為として会員から訴訟などを起こされる可能性もあります。そのような会員に対しての告知や案内にかかるコスト負担、ブランドの損失はどうするのかと主張されると、拒否する事も難しいでしょう。
夏に続いたアルバイトの炎上投稿で、フランチャイズ契約を打ち切られたり閉店したりしましたが、行為の悪質度から言えばそれ以上ですから。

無形・知的資産-インタンジブル(intangibles)に対する価値評価と管理体制は日本の比ではありません。今後、グローバルブランドとの交渉内容などが表に出ることはないとは思いますが、なんらかの対応が求められることは、容易に想像が付きます。
別な視点では、「日本のホテルの多くでは、不適切表示がまかりとおっている」と全世界の会員に知らされてしまうと、オリンピック招致プレゼンで強調した「お・も・て・な・し」に対しても、不審感を抱かれかねません。オリンピックの評議員や関係者は、きっとどこかのホテルグループの会員でしょうから。

いずれにしても、海外企業との契約・提携をしている企業様は、今一度その契約文の内容を確認することをお勧めします。

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2013年11月2日土曜日

雪崩をうつホテルの不適切表示(誤表示・偽装)発表



1028日、阪急阪神ホテルズの出崎社長が辞任を発表した翌日から、全国のホテルが同様の不適切表示に関して雪崩を打って公表を始めました。
どのホテルも、阪急阪神ホテルズの公表を受けて社内調査をしたとしていますが、先の56月の同様の公表と報道で、心当たりがあるところは既に調査はしていたはずです。社内的には発表するかしないか、するとしたら何時にするかと検討していたのではないでしょうか。
10月22日に始まった阪急阪神ホテルズの不適切表示に関する一連のお粗末な謝罪記者会見と、それを報じるマスコミ報道や世間の反応を見て、全国のホテルは発表のタイミングを見計らっていたはずです。

 公表日       ホテル・レストラン
 530         東京ディズズニーリゾートの3ホテル
 617         軽井沢プリンスホテルほか4ホテル
1022        阪急阪神ホテルズ直営ホテル・レストラン
1024        六甲山ホテル
1025        ザ・リッツ・カールトン大阪
1029        ルネッサンスサッポロホテル
                 札幌プリンスホテル
      札幌グランドホテル
          JR四国系ホテル・施設内3レストラン
          ホテルコンコルド浜松
          大津プリンスホテル
1030        ジャスマックプラザホテル
          ホテル札幌ガーデンパレス
          宇都宮東武ホテルグランデ
1031        帝国ホテル
          近畿日本鉄道系ホテル・旅館
          かんぽの宿塩原
          山形グランドホテル
          山形国際ホテル
          東京第一ホテル米沢
          新さっぽろアークシティホテル
111         ホテルメトロポリタン山形
          江陽グランドホテル
          東京第一ホテル鶴岡
          仙台国際ホテル
          名鉄グランドホテル
          ホテル日航熊本
          JR北海道ホテルズの2ホテル
          千里阪急ホテル(阪急阪神ホテルズ)
          金沢スカイホテル
          小田急リゾーツのホテル・レストラン
   岐阜グランドホテル
          ホテルグランヴェール岐山
112          ホテルニューオータニ熊本
          KKRホテル熊本
          海辺ホテル プライムリゾート賢島
          ノボテル甲子園
113日       城山観光ホテル 
          大和屋本店(道後温泉)
115日       JR西日本ホテルズ運営の3ホテル
          秋田ビューホテル
          ホテル京阪運営の3ホテル
          東急ホテルズの20ホテル
          富山第一ホテル
          第一イン新湊
116日      ホテルニューグランド  
          東部ホテルマネジメント運営の4ホテル
          グランビスタホテル&リゾート運営の6ホテル
          福山ニューキャッスルホテル
          広島エアポートホテル
117日       ホテルオークラグループ13ホテル&関連3レストラン
          ハイランドリゾートホテル
          JALホテルズの16ホテル
118日     東京ドームホテル
          かんぽの宿
1113日    藤田観光のグループホテル・結婚式場など19施設
1114日    ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ
          神戸ポートピアホテル
1115日    大和リゾート運営の12ホテル
          パレスホテル(東京、立川、大宮)
1119日    リーガロイヤルホテル




28日夜の出崎社長の辞任発表会見を見たからでしょう、タイミングを計っていたホテルが翌日から一斉に公表し始めました。まるで申し合わせていたかのように。そして、25日のこのブログ「ザ・リッツ・カールトン、おまえもか!-料理メニュー不適切表示」でも予想していたとおり、111日に向けてやはり名門帝国ホテルやハイアットリージェンシー東京(小田急リゾーツ)を始めとする多くのホテルが不適切表示の公表をしました。ただ、今回はホームページでの公表が中心で、社告は(私が見る限りでは)見つけることはできませんでした。7年で、告知媒体の比重が変わった(と良いように判断した)結果でしょう。
112日の昼の時点で、ネット上のNewsサイトで、ホテルの不適切表示に関する記事について、主なホテルを拾ってみました。他にも有名レストランに関する 同様の記事もありましたが、ここではホテルに限定しました。阪急阪神ホテルズやJRホテルズ、小田急リゾーツのように、グループや企業体とすると一つです が、実際には多くのホテルやレストランがそこに含まれています。タイミング的にはここがベストであり、これを逃すとまた集中して攻められてしまいます。ここまでに不正が社内で確認されていれば、これからあえて公表するホテルもレストランも無いでしょう。この3連休が明けると、ビジネスのスタートでの話題は日本シリーズの結果が一番になり、 マスコミの興味も薄れて、新たに他のターゲットを求めているので、わざわざ謝罪会見を設定しても、マスコミの取材も無いかもしれません。かといって、不適切表示の事実があったことがわかっていながら隠蔽したり揉み消そうとすると、それがまたソーシャルメディアやマスメディアに漏れて更に悪い事になりかねません。

来週からは、謝罪会見はあえて設定せず、ホームページでの公表が増えることでしょう。ホテルのレストランを予約する際にはホームページのお詫びとお知らせをチェックすると、こっそりとお詫びのPDFのページがリンクしてあるかもしれません(しかも目立たないように)。そのようなホテルは確信犯だと思って良いかもしれません。

マスメディアの矜持を見るような記事を最近見ていないなあ、と感じるのは、私だけでしょうか?


11月4日追記

10月31日に不適切表記を公表した近畿日本鉄道系ホテルの対応(利用者への返金はしない)に批判の声が上がっていましたが、奈良市の旅館「奈良万葉若草の宿三笠」で、お子様向けメニューにアレルギー食品を含む成型肉を和牛として提供していたことがわかりました。アレルギー食品については命に関わること。今後の対応が注目されます。
また、近鉄ホテルシステムズが運営するホテルで,今回不適切表示を行ったホテルには,ウェスティン都ホテル京都(京都市)、シェラトン都ホテル大阪(大阪市)ウェスティンやシェラトンといった世界的なホテルチェーンのホテルもありました。

現場のオペレーションは、ザ・リッツカールトン大阪同様にホテルブランドよりも、 運営会社の考え方や価値観に左右されることが明らかとなったと言わざるをえないということでしょうか。
世界的なホテルチェーンの反応も気になったので、少し考察して次のブログに書いてみました。


11月6日22時追記

「奈良万葉若草の宿三笠」を運営する近鉄旅館システムズの北田社長が,辞任を発表しました。同時に三笠以外の4施設でも不適切表示があったと発表し、「偽装」と認めざるを得ないと初めて「偽装」を自ら認める発言をしました。詳細に見ると、高級食材キャビアの偽装なども発表しています。


2013年10月28日月曜日

みずほ頭取は残留、阪急阪神ホテルズ社長は辞任   -この違いは?

今日は注目されていた2つの不祥事のTopの責任の取り方が、図らずも同じ日に発表されました。

みずほ銀行は、暴力団員らへの融資に関して第三者委員会が調査報告書を公表したのを受け、金融庁への業務改善計画を提出すると共に社内処分を発表しました。それによると、塚本隆史会長が来月1日付けで銀行の会長を辞任し、持ち株会社、「みずほフィナンシャルグループ」の会長職にはとどまるものの役員報酬を6か月間ゼロに。法令遵守を担当してきた常務と執行役員の2人も来月1日付けで辞任、さらに関係する役員を減俸の処分とするなど、銀行と持ち株会社、合わせて42人の役員を減俸などの処分としました。佐藤頭取は役員報酬を6か月間ゼロとしますが、辞任はせずそのまま頭取の職に留まります。

一方、料理メニューの不適切表示で世間を賑わせている阪急阪神ホテルグループ。午後8時から緊急会見を開き、出崎社長の辞任を発表しました。

この2つの不祥事で、どちらのトップの責任が重いのかを言及するのは難しいところです。どちらも世間を騒がし、生活者の期待と信頼を裏切ったことに関しては変わりありません。しかし、一方は辞任し、一方は留任。さて、この違いはどうしてでしょう?

違いは、ステークホルダーのスイッチングコストの差ではないかと考えます。
ホテルやレストランは、他に選択肢が無いなど余程の環境条件や個別の繋がりがある顧客でない限り、都市圏ではいくらでも代わりは見つかります。しかし銀行は代わりの銀行はあるものの、給与振り込みや公共料金、カードの引き落としなど、口座にはさまざまな縛りができてしまっています。メインバンクになっていれば、口座を変えることはなかなかに大変なことです。借り入れをしている企業にとっても、今回の事があるから借入先を変えますともいきません。
ドラマ半沢直樹でも描かれていましたが、恐らくメガバンクの組織内のパワーゲームは熾烈なのでしょう。しかし、それは口座を持つ個人顧客には関係の無いこと。ほとんどの個人顧客は、銀行にとっては資金提供者にしか過ぎません。いかに囲い込むか、運用資金を確保できるかは預金口座の獲得にかかってきます。普通預金に定期預金、様々なポイントプログラムで囲い込まれた口座を変更するには膨大なパワー、スイッチングコストが必要です。みずほ銀行としては、このような囲い込みをした個人顧客の口座は離れないだろうとの読みがあるのでしょう。
社内処分が世間的に見て甘いと言われようとも、業績には影響は無いとの判断があるのかもしれません。 結局は自己保身のための仕組みを作り上げていたといったら言い過ぎでしょうか?

これはみずほ銀行に限ったことではないでしょう。銀行に限らず鉄道や電力、ガスなどの生活インフラを担う企業の経営陣には、高いスイッチングコストを背景に少なからずこのような意識があるのではないかと思える記者会見をこれまでにも多く目にしています。

中小・中堅企業においても、ワンマン経営の企業では経営者のおごりが同じような過ちを犯しかねません。その時は、インフラ企業とは違いスイッチングコストが小さな業種・企業は、あっという間に顧客離れを起こして窮地に陥ることになります。

阪急阪神ホールディングス、みずほ銀行。どちらの会見でも、顧客・消費者への視点・思いが感じられませんでした。どちらも組織に混乱を招き、親会社、行政に迷惑をかけたから反省して処分をしましたという内容。反面教師としてのお手本としてください。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

ザ・リッツ・カールトン、おまえもか!-料理メニュー不適切表示

「ザ・リッツ・カールトン、おまえもか」

思わずそう叫びたくなる名門ホテルでの料理メニュー不適切表示。
ザ・リッツ・カールトンといえば、パリのホテルリッツを起源とする、名門中の名門ホテル(現在のホテルリッツと、ザ・リッツ・カールトンとは経営上の関係はありません)。
従業員は常に「クレド」を携帯し、クレドの精神を忠実に守るよう教育されています。ザ・リッツ・カールトンのクレド経営は、コンプライアンス教育やホテル・レストランなどサービス業界の研修で、題材としてよく取り上げられます。「リッツ・カールトン20の秘密―一枚のカード(クレド)に込められた成功法則」など、リッツ・カールトンを題材にしたビジネス書も多く出版されています。 

そのザ・リッツ・カールトンは、日本には今回不適切表示を行った大阪を皮切りに、東京、沖縄に進出しています。ただそれぞれの経営母体は別で、「ザ・リッツ・カールトン大阪」は阪急阪神ホテルズと同じ阪急阪神ホールディングス傘下の阪神ホテルシステムズが経営しています。六本木ミッドタウンのザ・リッツ・カールトン東京、リゾートホテルのザ・リッツ・カールトン沖縄は、経営・運営共にザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニーL.L.Cが行っています。

ザ・リッツ・カールトン大阪は謝罪会見を10月25日に実施。7月には不適切標記が判明していたにも関わらず、公表していませんでした。それが、阪 急阪神ホテルズの発表(10月22日)からされに3日遅れて25日の発表。これは、前日の阪急阪神ホテルズ出崎社長の謝罪会見を報道するマスコミや社会の 激しい批判を見たからでしょうか。
同じ阪急阪神ホールディングス傘下とはいえ、別会社の別ブランドホテルということで、親会社もまさか同じ事をしているとは考えもしなかったのかもしれません。あるいは、出崎社長の謝罪会見報道を見て、ホールディングスから発表するよう指示が出たのかもしれません。
い ずれにしても、このタイミングでの謝罪会見に、マスコミも生活者も阪急阪神ホールディングス傘下と知って「またか」であり、「やっぱり」と思わざるをえな いでしょう。阪急阪神ホールディングスとしての広報体制、クライシスマネジメント体制にも疑問があることが露呈しました。これが、本業の鉄道事業だったと しても同じような対応や会見で済ませるのでしょうか?当然株価にも影響が出ています。最初の謝罪会見をした10月22日の翌日には大幅に下落(日経平均のピークになっている縦線が10月23日)し、その後も日経平均の下落幅以上に大きく下げ続けています。


日経平均の1ヶ月の株価変動
阪急阪神ホテルグループの1ヶ月の株価
10月22日をピークに下落が続いた
(Yahooファイナンスのスマホの画面キャプチャ)




これから想定できるのは、7年前の相次ぐ食品偽装が明るみに出たときと同じように、全国のホテルやレストランで「社内調査」が実施され、相次いで(どさくさに紛れて)公表していくという事になりはしないか、ということです。もしそうなら、一つの節目(公表のピーク)は3連休直前の11月1日。新聞の社会面の「社告」が増えるかも知れません。
 
ヤマト運輸のクール便仕分けが、社内規定を外れて常温で行われていたことが明るみに出ましたが、これも内部告発によるものでした。実際に偽装を行っているホテルやレストランでは、ネットやマスコミに内部告発が相次ぐ可能性もあります。内部告発で明るみに出る前に自ら公表し、謝罪会見をしようと準備にはいっているところもあるかも知れません。
場合によっては、ホテルやレストラン以外でも同様の内部告発が相次ぐ可能性があります。

公表するしないは別として、自社のコンプライアンス体制や仕事への取組姿勢について、今一度検証・見直しすることをオススメいたします。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。

2013年10月25日金曜日

阪急阪神ホテルズ 出崎社長遅すぎる会見 偽装を否定し誤表示と強調


10月22日に公表して、謝罪会見をした阪急阪神ホテルズ。この日の会見は、営業企画部長と総務人事部長が謝罪と説明を行いました。それから2日後の24日、出崎社長が改めて謝罪会見を行いました。

6月の他社ホテルの不祥事の後だし、22日の会見は(形上は)自主的な発表だから社長が出るほどでもないと高をくくっていたのかも知れません。 しかし、マスコミやお客様の反応に驚いて、改めて社長が謝罪しなければならないという判断(あるいは親会社の阪急グループや株主からの要求)に至ったのでしょうか。なんともお粗末な、よくある2段構えの会見となってしまいました。

このような謝罪会見を2回実施する、しかも2度目に社長(あるいは会長)が出てくる会見は、取材するマスコミにとっても報道を受け取る生活者にとっても印象が良いはずがありません。2度目に社長が出てきたことで 、事態が大きく変わるような発表があればまだしも、です。

2度目に社長が登場しての謝罪会見を見て、
「どうして最初から社長が出てこなかったんだ?」
と誰もが思うでしょう。

取材する側も、最初の会見から2日経ち、各社様々な周辺取材をし独自の報道をした後です。既に多くの取材を重ねて事実確認も状況確認も、消費者の反応も掴んでいます。そこに社長の会見ですから、「新たな何か」を期待して会見に臨んでいます。しかし、発表された内容は、22日から24日午前9時までのお客様からの返金要請に 513件、1022万円分応じたことと、社内での処分内容に留まりました。

10月7日消費者庁への届け出をし、そこから十分すぎるほどの時間を取っての謝罪会見でありながら社長は姿を見せず、2日後に再会見。これでは社長は逃げている、現場に責任を押しつけているとみられてしまいます。どんなに言い訳をしても「会社ぐるみでやってたことでしょう?」とますます思われてしまいます。この会見が、阪急阪神ホテルズという名門ブランドを大きく毀損したと言わざるを得ません。

時間経過と発表・会見の様子を見ていると、先のカネボウ化粧品の美白化粧品自主回収とも重なってしまいます。
こんどは阪急阪神ホールディングスがなんらかの対応と発表に迫られるのでしょうか?

※原稿を書き始めたときには、FNNnewsCH のYouTube動画が貼り付けられたのですが、書き終わって公開したときには、公開用のタグが削除されていました。記者会見はFNNnewsCH で見ることができますが、しばらくすると削除されるでしょう。


2013年10月22日火曜日

阪急阪神ホテルズのメニュー不適切表示

今年に入り、大手ホテルで提供されていた料理メニューで、表示と使用されていた食材が違っていたという不祥事が相次いでいます。東京ディズニーランドホテル、軽井沢プリンスホテルが6月に発覚していましたが、本日(10月22日)阪急阪神ホテルズが直営8ホテルなどにある計23カ所のレストランと宴会場で提供する料理で、メニューの表示と異なる食材を使っていたと発表しました。
消費者庁は景品表示法(優良誤認)違反の疑いで調査、違法と判断した場合、措置命令などの行政処分を出すとしています。


ホームページに掲載されたお詫びとお知らせによると、2006年まで遡って不適切表示を公開しています。そして直近は今年9月30日です。
上記2ホテルの不適切表示を伝えるニュースのページは、すでに削除され各ホテルのお詫びページも削除されています。しかし、ブログやまとめサイトでその詳細は今でも確認することができます。
そこで、東京ディズニーランドホテルの不適切表示の内容をNAVERまとめで見てみると、今回阪急阪神ホテルズが公表した内容と良く似ていることがわかります。

朝日新聞などによると、冒頭の東京ディズニーランドホテルや軽井沢プリンスホテルの不適切表示発覚を受けて社内調査をした結果、判明したので公表したということです。しかし、誰もが違和感を感じているのではないでしょうか。

まず、食品偽装や不適切表示といえば、2007年にミートホープや船場吉兆、比内地鶏などの偽装が立て続けに発覚し、多くの企業が過敏に反応して連日新聞には社告が掲載される事態になりました。そのくらい世の中が過敏に反応していた時期から、変わること無く続いていることになります。
また、ミートホープ事件の時に、違反の罪に問われる可能性があるとされた法律は以下のような物が上げられていました。

①不正競争防止法
②不当景品類及び不当表示防止法景品表示法)
③食品衛生法
④農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
⑤詐欺罪

その時に社内調査はしなかったのでしょうか?ルームサービスのジュースまでシェフがチェックするかどうかはわかりませんが、少なくともレストランや宴会の料理メニューに関しては、シェフ(料理長)の確認の元に使用食材も決定されているはずです。それが途中で変えられていたら、シェフが気がつかないはずはないでしょう。鮮魚と解凍の魚の違いがわからないというのだったらそれもまた問題ですし、わざわざ解凍した魚を購入するはずもありません。冷凍~解凍も調理場で行われていたと考えるのが普通です。しかも、上記2ホテルの不適切報道がされた後も続いている、あるいはその時期から発生しているものもあります。確信犯と言わざるを得ません。

厨房で(あるいは会社全体で悪いこととわかっていながら)当たり前のこととして行われていたことを、突然公表しなければならない事態に陥ったのです。しかも、ごく最近。普通に考えれば内部告発か、事情を知る人間による圧力がかかったのではないかということです。退職者やお取引先かもしれません。ホテル業界では、業界内での転職も多いですし……

今回の立て続けに発表されたホテルの不適切表示から、想像しながら学ぶべき事は、

1,法律や表示に関する用語、調理法などの社内教育と周知
2,法令遵守の意識の徹底(特に経営幹部・管理職)
3,従業員、お取引先、その家族を含む全てのステークホルダーとの良好な関係作り


が日常から必要だと言うことです。
一度公になったことは、ホームページやニュースサイトから削除されても、どこかで引用・転載、そして記録され消えることはないということを改めて心に刻むことです。

それでも不祥事や不適切な事態が発生した際、最初の対応が重要になるのです。